ドリーム小説
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*第3話*~小さな恋に魔の手が迫る! ②
事件現場から少し離れたところでユリエと話す。
「今回の事件も、冥王星が絡んでいるのか?」
「だったらどうします?」
僕はこのユリエの笑顔が嫌いだ。
この口だけが笑っていて目が笑っていない。
こんな笑顔を見せられて不快しか湧き上がってこない。
「探偵学園の生徒として、やるべきことをやるだけだ」
僕はそれだけ言って立ち去ろうとすると、ユリエが刺すように話しかける。
「なぜ、冥王星から逃れようとするのですか?」
―――なぜ。
「…生まれながらに犯罪者の宿命を背負わされた人間の苦しみが、あんたにわかってたまるか」
わかってもらおうなんて思わない。
誰にもわかってもらうつもりなんてない。
…嘘。
誰もわかってなんてくれるはずないじゃないか。
「では冥王星を敵に回す覚悟が本当におありなのですか?
Qクラスのメンバーがあなたの正体を知ったとき、手を広げて迎えてくれると思いますか?」
「…っ」
うるさい。
そんなこと、最初から分かってる。
――リュウが謝るコトじゃないよ――
梓紗の言葉がよぎる。
だって、君は、それを知ったら僕から離れていくだろ?
それが怖い。
君が怯えた顔をして、今までのことを捨て去ろうとするのが怖い。
僕は君がくれる優しい笑顔に甘えている、弱い人間なんだよ。
「あとで辛い思いをするのは…あなたですよ?」
頬に触るユリエの手が冷たい。
知ってるんだよ、そんなこと。
それを知ったときに離れていくみんなの姿が。
こんな現実、僕が1番信じたくないんだよ。
もう、やめてくれ。
頼む。
これ以上、
嫌だ、やめてく『…あの、』
突然聞こえた梓紗の声。
小さかったけど、しっかりと聞こえた。
瞬間、僕はユリエの手を振り払い、振り返る。
そこには走ってきたのか息が切れている梓紗。
ああ、こんなにも安心を与えてくれるのか。
一気に全身に血が通ったような救い…君しかいない。
『あの、すいません。あっ、声かけちゃって。話の途中だと思いますが…呼び出しが…』
梓紗はかなり困惑した様子で言葉を濁す。
ユリエは、あの笑みを残し、その場を去った。
やっぱり僕は梓紗に助けてもらってばかりだ。
梓紗が来ていなかったら…僕はどうなっていたんだろう。
「…話、聞いてたのか?」
『ううん、すごく探して、見つけた途端に話しかけちゃって…。
別に話すことも何にも考えてなかったのに…自分でもビックリしちゃった…それに、』
「それに?」
『リュウにすごく話しかけたかったの。実は…呼び出しなんかなくて…。
話しかけなきゃ、っていう、何か、感情が…』
「そっか」
話、聞いてなくて良かった。
すごい焦ってる様子だったら話を聞いてなのかと思った。
本当のことを知ったら君はそんな顔するんだろう。
軽蔑?呆れる?恐れる?…離れていくことは、確かだろうか。
『ごめんね、勝手なコトして。話の途中だったでしょ?』
「…ありがとう」
『?』
僕は梓紗に手を伸ばし、ゆっくりと自分の腕におさめる。
甘くて温かくて安心して、こんなにも僕に愛しいと思われる君がズルい。
『…リュウ!?』
「待って、ちょっとだけ」
『…?分かった…』
「顔、赤いね?」
『…なっ!』
君の慌てる様子がおかしくて、少しだけ笑った。
すると、それにつられて笑う君のその顔。
この笑顔が絶望に変わってしまうなら、僕はずっと嘘つきでいい。
弱い人間でいい、君が笑顔でいてくれるなら…そう、思った。
ー待って、ちょっとだけー
リュウがそんなコト言うからアタシは大人しくリュウの腕の中。
あの女の人は誰?
リュウと何を話してたの?
リュウは何にあんなに怯えていたの?
走って探して見つけたリュウの手のひらは強く拳になっていた。
アタシはあの時どうすれば正解だった?
どんな言葉をかければよかったのかな?
振り向いてくれたリュウの顔の一瞬は、すごく悲しい目。
誰かに助けを求めたくて、仕方がない目をしてた。
すぐに駆け寄りたかった。
だけど、足が動かなかった。
リュウがアタシに助けを求めてる。
そう思った瞬間、足が固まった。
どうすれば助けられるの?アタシは言葉を濁すばかりだった。
その後に聞いたリュウの「ありがとう」は情けなく感じた。
もっと気の利いた行動はできないのか、もっとリュウを楽にさせる言葉はないのか。
やっぱりアタシはリュウに助けてもらってばっかりだ。
ねぇリュウ、アタシはどうしたらいいの?わかんないよ…。
リュウが先に帰っててって言うから、アタシは仕方なく1人で帰る。
リュウ、またあんな風になんないかな?
言葉に出して聞けなくて、ちょっとだけリュウを見つめてたら
「大丈夫だよ」って言ってくれた。
アタシはまだ少し心配が抜け切れてないけど迷惑掛けたくなかったから帰ることにした。
「あれ?梓紗なんかあった?」
ミッションルームに入ると、いち早くキュウに気付かれる。
誰にも言わないつもりだったけど、キュウにはごまかせないなぁ。
『え?なんで?別になんもないよ?疲れただけだよっ』
「…そっか!」
キュウは察したように話を打ち切ってくれた。
キュウのそういうトコ尊敬するよ、本当に。
「それにしても、1日歩いても手がかりゼロかぁー!」
「被害者の年齢も職業もバラバラ、接点は何も見当たらないもんなー」
メグとキンタがソファーにもたれかかって言う。
相当疲れてるね、これ。
『え?あったじゃん、共通点』
「え?」
「2人とも、人に恨まれてた。
こいつに復讐してやりたいとか、こらしめてやりたいとか、そういう人たちの心の叫びを
聞いた犯人が、今回の事件を引き起こしたんじゃないかなって考えられない?」
「殺された連中は社会のゴミだった。
だから犯人は、正義の味方を気取ってそういう連中をゴミ箱に捨てたっていうのか?」
『すごい正義感だけど、方向が間違ってる』
「でも、僕は絶対に犯人を認めない。どんなに悪人だろうと、人殺しは許されることじゃない。
絶対に犯人を捕まえてみせる!」
キュウの言葉にアタシは深く頷いた。
「そうすると、問題は、犯人が彼らの存在をどこで知ったかってことか」
メグが呟く。
「地道に調べて回るなんて、相変わらずアナログだね」
『数馬?』
数馬が突然しゃべりだす。
「そういう数馬はネットで何か情報掴んだの?」
「別に」
「真剣に捜査もしないで、そういうコト言わないでよ!」
「こっちはゲームのプログラムとか色々やることがあったんだよ!!」
「何逆ギレしてんだよ」
数馬の様子がおかしい。
瑶子さん関係かな?って思ったけど、数馬だってその辺のメリハリはつけれるだろう。
もっと、もっと深い悩みだな、これは。
解決するまで放っておいてやるしかないね。
「数馬!」
立ち去ろうとする数馬にキュウが声をかける。
「…どうしたの?」
「…キュウはいいよなぁ、迷いがなくて」
「え?」
数馬は何を言ったかと思うとそそくさと部屋を出て行った。
キンタが「なんだアイツ」と呟くのが聞こえた。
「迷いがなくていいなぁ」…か。
アタシもキュウのコトそう思うな。
悪い意味じゃなくて、1つのコトに真っ直ぐ向き合えてるってのが…。
数馬もきっと…そういうことなんじゃないの??
次の日、また被害者が出たと聞いて、アタシ達はすぐに現場に向かった。
現場には警察、野次馬、パトカーやらうじゃうじゃしてた。
そこには当然、諸星さんと猫田さんの姿も。
「諸星さん!」
「…何しに来た」
「今度の被害者は?」
「おう、この辺の悪ガキだ。…って、何で答えてんだよ!」
そう言って諸星さんは自分で自分の顔をひっぱたく。
隣にいた猫田さんは「自分で突っ込んでどうすんですか?!」と驚いていた。
「すみません、下がって下さい」
「おう、落合!!」
野次馬を抑えようとしている1人の警察官に諸星さんが声をかける。
落合さん…というらしい。
諸星さんに対して機敏に敬礼をする。
「お前、スクラップマーダーについて何か面白いネタもってないか?
中身次第じゃ、刑事課に推薦してやるぞ」
「いや、その話は…もう」
「あれ?お前刑事課に行きたがってたじゃねぇか」
「地域の人を身近で守れるこの仕事の素晴らしさに気付いたんです」
「おお、そうか」
「失礼します」
「ああ」
落合さんはまた諸星さんに敬礼をすると、その場を後にした。
少し…なんだか気になる会話だ。
特に…変なコトを話しているわけでもないんだけど…。
「なぁ、殺されたやついつもうちに顔出してた奴だぜ」
後ろにいた男の人たちの会話が耳に入る。
「これでやっと静かになるな」
「殺されたあの人、よく店に来てたのか?」
キンタが話に参加する。
「ほとんど毎晩だよ。駐車場でガンガン音楽かけてさ、迷惑なやつだったよな」
「ああ」
同意を求められた方は答えながらマッチでタバコに火をつける。
ブックマッチだ。
「あ、そのマッチ」
メグが突然しゃべり出す。
しかも、何かに気づいたように。
「マッチがどうしたの??」
「昨日ホームレスに差し入れいてた蕎麦屋のお兄ちゃんも持ってた。
あのラーメン屋さんにも同じマッチがあった」
『あのぉ…変な事聞きますけど、そのマッチもらったお店って?』
「これは行きつけのクラブのマッチだけど」
男の人の持っているブックマッチを見ると、【SAHARA】と書かれている。
聞いたコトのない店だなぁ…。
「もしかして、そのお店で殺された男の話とかしました?」
「ああー…そういえば話したコトもあったかも。酔った勢いで愚痴ったかもしれないなぁー」
『そうですか。ありがとうございます』
アタシ達は会話を終え、振り返るとみんなで目を合わす。
「見つかったわね、事件の共通点」
メグが自信ありげに言う。
アタシも大きくうなずく。
「犯人は、そのクラブで被害者の情報を手に入れてたんだ」
キュウも自信満々だ。
事件現場から少し離れたところでユリエと話す。
「今回の事件も、冥王星が絡んでいるのか?」
「だったらどうします?」
僕はこのユリエの笑顔が嫌いだ。
この口だけが笑っていて目が笑っていない。
こんな笑顔を見せられて不快しか湧き上がってこない。
「探偵学園の生徒として、やるべきことをやるだけだ」
僕はそれだけ言って立ち去ろうとすると、ユリエが刺すように話しかける。
「なぜ、冥王星から逃れようとするのですか?」
―――なぜ。
「…生まれながらに犯罪者の宿命を背負わされた人間の苦しみが、あんたにわかってたまるか」
わかってもらおうなんて思わない。
誰にもわかってもらうつもりなんてない。
…嘘。
誰もわかってなんてくれるはずないじゃないか。
「では冥王星を敵に回す覚悟が本当におありなのですか?
Qクラスのメンバーがあなたの正体を知ったとき、手を広げて迎えてくれると思いますか?」
「…っ」
うるさい。
そんなこと、最初から分かってる。
――リュウが謝るコトじゃないよ――
梓紗の言葉がよぎる。
だって、君は、それを知ったら僕から離れていくだろ?
それが怖い。
君が怯えた顔をして、今までのことを捨て去ろうとするのが怖い。
僕は君がくれる優しい笑顔に甘えている、弱い人間なんだよ。
「あとで辛い思いをするのは…あなたですよ?」
頬に触るユリエの手が冷たい。
知ってるんだよ、そんなこと。
それを知ったときに離れていくみんなの姿が。
こんな現実、僕が1番信じたくないんだよ。
もう、やめてくれ。
頼む。
これ以上、
嫌だ、やめてく『…あの、』
突然聞こえた梓紗の声。
小さかったけど、しっかりと聞こえた。
瞬間、僕はユリエの手を振り払い、振り返る。
そこには走ってきたのか息が切れている梓紗。
ああ、こんなにも安心を与えてくれるのか。
一気に全身に血が通ったような救い…君しかいない。
『あの、すいません。あっ、声かけちゃって。話の途中だと思いますが…呼び出しが…』
梓紗はかなり困惑した様子で言葉を濁す。
ユリエは、あの笑みを残し、その場を去った。
やっぱり僕は梓紗に助けてもらってばかりだ。
梓紗が来ていなかったら…僕はどうなっていたんだろう。
「…話、聞いてたのか?」
『ううん、すごく探して、見つけた途端に話しかけちゃって…。
別に話すことも何にも考えてなかったのに…自分でもビックリしちゃった…それに、』
「それに?」
『リュウにすごく話しかけたかったの。実は…呼び出しなんかなくて…。
話しかけなきゃ、っていう、何か、感情が…』
「そっか」
話、聞いてなくて良かった。
すごい焦ってる様子だったら話を聞いてなのかと思った。
本当のことを知ったら君はそんな顔するんだろう。
軽蔑?呆れる?恐れる?…離れていくことは、確かだろうか。
『ごめんね、勝手なコトして。話の途中だったでしょ?』
「…ありがとう」
『?』
僕は梓紗に手を伸ばし、ゆっくりと自分の腕におさめる。
甘くて温かくて安心して、こんなにも僕に愛しいと思われる君がズルい。
『…リュウ!?』
「待って、ちょっとだけ」
『…?分かった…』
「顔、赤いね?」
『…なっ!』
君の慌てる様子がおかしくて、少しだけ笑った。
すると、それにつられて笑う君のその顔。
この笑顔が絶望に変わってしまうなら、僕はずっと嘘つきでいい。
弱い人間でいい、君が笑顔でいてくれるなら…そう、思った。
ー待って、ちょっとだけー
リュウがそんなコト言うからアタシは大人しくリュウの腕の中。
あの女の人は誰?
リュウと何を話してたの?
リュウは何にあんなに怯えていたの?
走って探して見つけたリュウの手のひらは強く拳になっていた。
アタシはあの時どうすれば正解だった?
どんな言葉をかければよかったのかな?
振り向いてくれたリュウの顔の一瞬は、すごく悲しい目。
誰かに助けを求めたくて、仕方がない目をしてた。
すぐに駆け寄りたかった。
だけど、足が動かなかった。
リュウがアタシに助けを求めてる。
そう思った瞬間、足が固まった。
どうすれば助けられるの?アタシは言葉を濁すばかりだった。
その後に聞いたリュウの「ありがとう」は情けなく感じた。
もっと気の利いた行動はできないのか、もっとリュウを楽にさせる言葉はないのか。
やっぱりアタシはリュウに助けてもらってばっかりだ。
ねぇリュウ、アタシはどうしたらいいの?わかんないよ…。
リュウが先に帰っててって言うから、アタシは仕方なく1人で帰る。
リュウ、またあんな風になんないかな?
言葉に出して聞けなくて、ちょっとだけリュウを見つめてたら
「大丈夫だよ」って言ってくれた。
アタシはまだ少し心配が抜け切れてないけど迷惑掛けたくなかったから帰ることにした。
「あれ?梓紗なんかあった?」
ミッションルームに入ると、いち早くキュウに気付かれる。
誰にも言わないつもりだったけど、キュウにはごまかせないなぁ。
『え?なんで?別になんもないよ?疲れただけだよっ』
「…そっか!」
キュウは察したように話を打ち切ってくれた。
キュウのそういうトコ尊敬するよ、本当に。
「それにしても、1日歩いても手がかりゼロかぁー!」
「被害者の年齢も職業もバラバラ、接点は何も見当たらないもんなー」
メグとキンタがソファーにもたれかかって言う。
相当疲れてるね、これ。
『え?あったじゃん、共通点』
「え?」
「2人とも、人に恨まれてた。
こいつに復讐してやりたいとか、こらしめてやりたいとか、そういう人たちの心の叫びを
聞いた犯人が、今回の事件を引き起こしたんじゃないかなって考えられない?」
「殺された連中は社会のゴミだった。
だから犯人は、正義の味方を気取ってそういう連中をゴミ箱に捨てたっていうのか?」
『すごい正義感だけど、方向が間違ってる』
「でも、僕は絶対に犯人を認めない。どんなに悪人だろうと、人殺しは許されることじゃない。
絶対に犯人を捕まえてみせる!」
キュウの言葉にアタシは深く頷いた。
「そうすると、問題は、犯人が彼らの存在をどこで知ったかってことか」
メグが呟く。
「地道に調べて回るなんて、相変わらずアナログだね」
『数馬?』
数馬が突然しゃべりだす。
「そういう数馬はネットで何か情報掴んだの?」
「別に」
「真剣に捜査もしないで、そういうコト言わないでよ!」
「こっちはゲームのプログラムとか色々やることがあったんだよ!!」
「何逆ギレしてんだよ」
数馬の様子がおかしい。
瑶子さん関係かな?って思ったけど、数馬だってその辺のメリハリはつけれるだろう。
もっと、もっと深い悩みだな、これは。
解決するまで放っておいてやるしかないね。
「数馬!」
立ち去ろうとする数馬にキュウが声をかける。
「…どうしたの?」
「…キュウはいいよなぁ、迷いがなくて」
「え?」
数馬は何を言ったかと思うとそそくさと部屋を出て行った。
キンタが「なんだアイツ」と呟くのが聞こえた。
「迷いがなくていいなぁ」…か。
アタシもキュウのコトそう思うな。
悪い意味じゃなくて、1つのコトに真っ直ぐ向き合えてるってのが…。
数馬もきっと…そういうことなんじゃないの??
次の日、また被害者が出たと聞いて、アタシ達はすぐに現場に向かった。
現場には警察、野次馬、パトカーやらうじゃうじゃしてた。
そこには当然、諸星さんと猫田さんの姿も。
「諸星さん!」
「…何しに来た」
「今度の被害者は?」
「おう、この辺の悪ガキだ。…って、何で答えてんだよ!」
そう言って諸星さんは自分で自分の顔をひっぱたく。
隣にいた猫田さんは「自分で突っ込んでどうすんですか?!」と驚いていた。
「すみません、下がって下さい」
「おう、落合!!」
野次馬を抑えようとしている1人の警察官に諸星さんが声をかける。
落合さん…というらしい。
諸星さんに対して機敏に敬礼をする。
「お前、スクラップマーダーについて何か面白いネタもってないか?
中身次第じゃ、刑事課に推薦してやるぞ」
「いや、その話は…もう」
「あれ?お前刑事課に行きたがってたじゃねぇか」
「地域の人を身近で守れるこの仕事の素晴らしさに気付いたんです」
「おお、そうか」
「失礼します」
「ああ」
落合さんはまた諸星さんに敬礼をすると、その場を後にした。
少し…なんだか気になる会話だ。
特に…変なコトを話しているわけでもないんだけど…。
「なぁ、殺されたやついつもうちに顔出してた奴だぜ」
後ろにいた男の人たちの会話が耳に入る。
「これでやっと静かになるな」
「殺されたあの人、よく店に来てたのか?」
キンタが話に参加する。
「ほとんど毎晩だよ。駐車場でガンガン音楽かけてさ、迷惑なやつだったよな」
「ああ」
同意を求められた方は答えながらマッチでタバコに火をつける。
ブックマッチだ。
「あ、そのマッチ」
メグが突然しゃべり出す。
しかも、何かに気づいたように。
「マッチがどうしたの??」
「昨日ホームレスに差し入れいてた蕎麦屋のお兄ちゃんも持ってた。
あのラーメン屋さんにも同じマッチがあった」
『あのぉ…変な事聞きますけど、そのマッチもらったお店って?』
「これは行きつけのクラブのマッチだけど」
男の人の持っているブックマッチを見ると、【SAHARA】と書かれている。
聞いたコトのない店だなぁ…。
「もしかして、そのお店で殺された男の話とかしました?」
「ああー…そういえば話したコトもあったかも。酔った勢いで愚痴ったかもしれないなぁー」
『そうですか。ありがとうございます』
アタシ達は会話を終え、振り返るとみんなで目を合わす。
「見つかったわね、事件の共通点」
メグが自信ありげに言う。
アタシも大きくうなずく。
「犯人は、そのクラブで被害者の情報を手に入れてたんだ」
キュウも自信満々だ。
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*第3話*~小さな恋に魔の手が迫る! ①
『あれ?もしかして、数馬??』
ミッションルームまでの道のりのこと。
ちょっと時間もあるし、遠周りしてみようっていつも違う道を歩いてたら、
…数馬を見つけた。
【フローリスト・カンダ】っていう花屋の前にずっと立ってる。
だから最近、花が多かったのかな??
『数馬くん…ですよね??』
「…うわ?!え、なんだ梓紗か、ビックリさせるなよ」
『なんだ、とか。酷くない?!いっつもここで花買ってたのかー?』
「ま、まぁね」
『ホントに花が目的ー?』
「え、いや、まぁ、う、うん」
しどろもどろしてるトコを見ると違うね、こりゃ。
アタシは数馬の目線を辿ると店番をしているお姉さんにぶつかる。
『ほぉ。数馬はああいうお姉さんが好きなのね』
「ばっか、そういうこと言うなよ!」
『意外とタイプいいんじゃんっ』
「うるさいなあ」
『早く中入るよっ』
数馬の迷いを無視して腕を引っ張り店の中に入る。
「いらっしゃいませー…あ、数馬くん」
『こんにちわっ』
「こんにちわ、えーっと…」
アタシが数馬の腕を掴んでいるのが手を繋いでいるのに見えたのか、
ちょっと気まずそうにしているのが伺えた。
アタシはパッと手を離して、『友達です!』と答えた。
すると、数馬はキッとアタシを睨んで、前へ出た。
「あのー…また適当に見繕ってもらってもいいですか?」
「ご自宅用でいいですか?」
「はい!」
やけに積極的だなぁ。
こんなに接しられてるんだったら躊躇なく入ればいいのに。
やっぱり最近ミッションルームに花を持ち込んでくるのはコレだったんだな。
何気にさっき「また」って言ってたしね。
「それにしても、ホントに好きなのねお花!3日とあけずにお店に来てくれて」
アタシは数馬に耳打ちで
「好きなのはあなたです♡ホントは毎日でも来たいです♡」って言ったら
思いっきり頭叩かれた。痛すぎだよ、もう。
「なんか、見てるだけで幸せな気分になるんですよね」
「嬉しいな、そういう風に言ってもらえると」
「、いや!そんな…」
アタシは笑いをこらえるのに必死。
でも後でそう言っても怒られそうだから言わないでおこう。
花を持って店を出る。
『あのお姉さん、名前なんて言うの?』
「瑶子さん」
『へー、可愛い名前だね』
ミッションルームまで数馬と一緒に行ったんだけど、
その間、瑶子さんのコトで色々質問してた。
それにしても終始笑顔が絶えなかった!こんな数馬は見たことないってくらいに。
これはレアだと思い、携帯のカメラ準備したら「何したいの?」って腕掴まれちゃって断念。
ちぇ、笑顔の数馬は待ち受けにしてもいいくらい、可愛いと思うんだけどなーっ?
「グッモーニンエブリワンっ♪」
数馬が元気よく部屋に入る。
アタシは後ろからのそのそと数馬をよけて奥へと進む。
…真中にある大きなテーブルが無い。
キュウとキンタ、何かやってたな。
イスがなかったので、部屋の奥まで行きリュウの隣の空いてるイスに座る。
『リュウ、おはよっ』
「…数馬と一緒だったの?」
『うん、途中で会ったんだ』
「へぇ…」
眉をみけんに寄せながらリュウが言った。
…絶対何か怒ってる。
っていうか、牧野くんの事件解決の時から何か冷たい。
アタシ何か…リュウに対して酷いことした??
『…リュウ、何か怒ってる?ごめん、アタシ何かした?』
「別に、梓紗が悪いんじゃない」
『でもさぁー!アタシ鈍感だから知らないうちに…』
「まぁ…鈍感なのは、鈍感だよね」
『?』
リュウが意味深なコトを言うので、模索はそこでやめといた。
それに何で怒ってるかなんて絶対に教えてくれそうになかったし。
「数馬、あんたまた花買ってきたの?!」
メグがうんざりして言う。
「部屋も明るくなるし、優雅でいいじゃないか!」
「ていうか、はっきり言って邪魔なんですけどっ」
まぁ、言われてみれば…邪魔かもねぇ。
部屋の端っこには「数馬のお花コーナー」ができている。
どこかの結婚式ですか?みたいな位花がたくさんある。
部屋も明るくなるし、優雅だけど、さすがにこの量は多いよ…;
「まぁ、メグにはわからないかもね。花に囲まれて生活する、この豊かさ!ってものが…」
「甘いぞ、鳴沢!!」
七海先生の声。
姿は見えない。
また変装でもしてんのかな?
すると、天井からぶら下がってくる七海先生の姿が。
「ミッション・イン・ポッシブル!…だよ」
天井から吊下げたワイヤーで浮いている。
いや、でも、格好は気取ってるね。
すると、キュウから順に七海先生をつつき、回している。
「…見ればわかりますよ」
「っていうかなんで普通に現れないんですか」
「俺の趣味なんだよ!悪いか!おい止めろよこれ!おい!」
「開き直ってるし…」
「さすがです、七海先生」
『このために天井からワイヤーを…?』
「ちょ、おい!お前らそんなたるんだ気持ちでなあ。
1人前の探偵になれるとでも思ってんのか!ちょ、おい!誰か止めろ!」
七海先生は次々と体を押され、クルクル回っている。
…ずっとそこに入ればいいのに…とかって。
すると、数馬が止める。
「おお、ありがとう。…なんだ?」
数馬は七海先生に持っている花束の中から花を一輪取り出して、七海先生に渡す。
七海先生は不思議そうにしてるけど、「なんでもありません」と答えるだけだった。
「…そんなわけで、団先生からの指令だ!」
そう言って七海先生はディスクを取り出した。
「Qクラスの諸君、御機嫌よう。今回君達に調べてもらいたいのは、連続殺人事件だ」
…殺人。
その言葉にみんな固まるのが分かった。
「犯人はスクラップマーダー呼ばれる殺人鬼」
スクリーンには資料として殺害現場が映る。
男の人が腹部を刺されていて、ゴミ捨て場に捨てられている。
目をそらしてしまいそうになったけど、アタシは必死で堪える。
「最初の被害者はホームレスを襲っていた若者だ。次は地上げ屋。
被害者は皆、ゴミ捨て場に捨てられていた。
犯人は狡猾で一切の翔子を残していない。君達の力でこの殺人鬼の正体を暴いてもらいたい。
諸君らの健闘を祈る」
DVDの再生が終わり、キュウが口を開く。
「今回は連続殺人犯か」
「相手にとって不足はねぇな」
「お前らあまり調子に乗るなよ。相手は連続殺人鬼だ。正体を掴んだらすぐに警察に知らせろ!
絶対に深追いはするな!」
七海先生の言葉にアタシ達は6人で大きく返事をした。
「まずは被害者と因縁のある人から探ってみよう!」
『じゃぁさ、若者に襲われてたホームレスの人から探る??』
「…梓紗は誘ったし、キュウはいつものことだけどさ、…なんでキンタまで一緒についてくんのよ」
メグは足を止めて振り返り、呆れて言う。
行く時に買ったアイスを食べながらアタシはキンタを見る。
合流したときにキュウもキンタもアイスを食べてて笑っちゃったけど。
でも、今日はまたなんでキンタまで。
「キュウは後先考えずに突っ走っちゃうからさ、見てらんねぇだろ?」
「キンタはいざってときに心強いから!ねえ?」
『いざって時のみ??』
「ばっか、余計なこと言うな!」
なんだか2人は気持ち悪ーくニヤニヤしてる。
「そうなる前に私は逃げます!行こ、梓紗!」
『…メグ、アイス食べる?』
「あ、食べるー♡」
メグはおいしそうにアタシのアイスを一口食べる。
「毎晩だったよ。あいつらほんとに、容赦なかった…。
あのガキが殺されなかったら、俺が殺されてた。悪いが、犯人には感謝してるよ」
ホームレスのおじさんは弱々しく話してくれた。
やっぱり、そういうことする人っているんだぁ。
でも人殺しはよくないよ。殺さずにやめてくれるコトが1番いいと思うんだけどなぁ、やっぱり。
「おっさん!これ」
すると自転車に乗った男の人がおじさんにそばを渡す。
自転車と服装を見る限りでは、この人お蕎麦屋さんっぽいね。
「ああ、いつも悪いね」
「いいんだ、いいんだ」
「お知り合いですか?」
「ときどき店の残り物差し入れしてんだよね、捨てんのもったいないし」
食べ始めたおじさんを眺めながらキンタが口を開く。
「この人が襲われたことも??」
「ああ、知ってたよ」
男の人はたばこにマッチで火を点け、煙草を吸い始める。
「まぁでも、これで安心して眠れんな!!」
男の人の言葉におじさんは小さく頷いた。
「殺された地上げ屋、暴力団を使って毎日のようにきやがらせさせて、
この辺の土地、強引にかきあさってたんだよ」
「おじさんは何か酷い目に遭ったんですか?」
「ああ。見せに来て大声出したり、まずいって騒いだり。これで安心して商売ができるよ」
アタシ達は地上げ屋の被害に遭った人たちに話を聞いて回る。
このラーメン屋のおじさんも酷い目に遭ったようだ。
アタシはふと思いだす。
ホームレスのおじさんも「殺されて良かった」と言っていた。
殺された被害者は、人から本当に恨まれていたんだ。
おじさんにお礼を言い、店を出る。
「これから、どうする??」
「とりあえず、1回ミッションルームに戻ってみない??」
『あ…じゃ、アタシ1回現場に行ってみる!』
「1人で大丈夫か??」
『何キンタ!大丈夫だよ、ちょっと調べたらすぐ戻ってくるから』
「そう?じゃぁ、梓紗先に行ってるね」
メグとキュウが手を振ってくれたので振り返す。
アタシは方向転換すると一気に走りだす。
現場には絶対にリュウがいるはず!
何か怒ってるし、怒ってるから話しかけにくくて気まずいし。
とりあえずリュウとは普通に話せるように戻らなきゃ!!
少し走ると現場に着く。
やっぱり…――リュウの姿が。
『リューウッ!』
「!…梓紗」
リュウはアタシが急に声をかけたのでビックリしたみたい。
でも振り返って微笑んでくれた。
…今は、怒ってないみたい、良かった…。
「今からまたボイスレコーダーに録音するから、しゃべっちゃダメだよ」
『あ、了解ですっ!』
「…翔子を一切残していないことから考えて、犯人は用心深く犯罪に精通した人間な。
しかも死体をゴミ捨て場に捨てていることから、注目願望症候群だと思われる。
つまり、ストレスが溜まっているもの、歪んだ正義感の持ち主でもある」
リュウの話を聞いて、頭の中で整理していると背中に視線を感じた。
パッと振り返ると、そこには日傘を差した綺麗な女の人。
しかも、何とも言えない優しくない微笑をしていた。
待って、アタシどこかで、この人、会ったことあるような――――
「私の顔、どこか可笑しいところがございますか?」
「あ、いえ!すいません、違います」
アタシは女の人をかなり凝視してたのだろう。
その視線に気づいた女の人は首を傾げて聞いてきた。
アタシはかなり戸惑っちゃって、手を左右に振るしかなかった。
…でも、この雰囲気、顔、しゃべり方…どこかで……。
「梓紗」
『何っ、リュウ?』
「ちょっとさ、ここで待っててくれないか?あんまり遅かったら帰ってていいから」
『え、うん、分かった』
「あの人の用事があるんだ、悪い」
リュウはアタシの両手をギュっと一瞬だけ握り、女の人のもとへ。
ねぇ、リュウ、その人、誰なの?
アタシ、多分、その人と、会ったこと、あるよ?
溢れる感情は、リュウがアタシに向けた最後の淋しそうな顔で消された。
アタシは時々思う。
リュウって…今まで何を抱えて生きて来たんだろう。
アタシ以外のメンバーには笑顔を見せないのはどうして?
色々考えちゃうけど、やっぱりリュウが心配だった、なによりも。
『あれ?もしかして、数馬??』
ミッションルームまでの道のりのこと。
ちょっと時間もあるし、遠周りしてみようっていつも違う道を歩いてたら、
…数馬を見つけた。
【フローリスト・カンダ】っていう花屋の前にずっと立ってる。
だから最近、花が多かったのかな??
『数馬くん…ですよね??』
「…うわ?!え、なんだ梓紗か、ビックリさせるなよ」
『なんだ、とか。酷くない?!いっつもここで花買ってたのかー?』
「ま、まぁね」
『ホントに花が目的ー?』
「え、いや、まぁ、う、うん」
しどろもどろしてるトコを見ると違うね、こりゃ。
アタシは数馬の目線を辿ると店番をしているお姉さんにぶつかる。
『ほぉ。数馬はああいうお姉さんが好きなのね』
「ばっか、そういうこと言うなよ!」
『意外とタイプいいんじゃんっ』
「うるさいなあ」
『早く中入るよっ』
数馬の迷いを無視して腕を引っ張り店の中に入る。
「いらっしゃいませー…あ、数馬くん」
『こんにちわっ』
「こんにちわ、えーっと…」
アタシが数馬の腕を掴んでいるのが手を繋いでいるのに見えたのか、
ちょっと気まずそうにしているのが伺えた。
アタシはパッと手を離して、『友達です!』と答えた。
すると、数馬はキッとアタシを睨んで、前へ出た。
「あのー…また適当に見繕ってもらってもいいですか?」
「ご自宅用でいいですか?」
「はい!」
やけに積極的だなぁ。
こんなに接しられてるんだったら躊躇なく入ればいいのに。
やっぱり最近ミッションルームに花を持ち込んでくるのはコレだったんだな。
何気にさっき「また」って言ってたしね。
「それにしても、ホントに好きなのねお花!3日とあけずにお店に来てくれて」
アタシは数馬に耳打ちで
「好きなのはあなたです♡ホントは毎日でも来たいです♡」って言ったら
思いっきり頭叩かれた。痛すぎだよ、もう。
「なんか、見てるだけで幸せな気分になるんですよね」
「嬉しいな、そういう風に言ってもらえると」
「、いや!そんな…」
アタシは笑いをこらえるのに必死。
でも後でそう言っても怒られそうだから言わないでおこう。
花を持って店を出る。
『あのお姉さん、名前なんて言うの?』
「瑶子さん」
『へー、可愛い名前だね』
ミッションルームまで数馬と一緒に行ったんだけど、
その間、瑶子さんのコトで色々質問してた。
それにしても終始笑顔が絶えなかった!こんな数馬は見たことないってくらいに。
これはレアだと思い、携帯のカメラ準備したら「何したいの?」って腕掴まれちゃって断念。
ちぇ、笑顔の数馬は待ち受けにしてもいいくらい、可愛いと思うんだけどなーっ?
「グッモーニンエブリワンっ♪」
数馬が元気よく部屋に入る。
アタシは後ろからのそのそと数馬をよけて奥へと進む。
…真中にある大きなテーブルが無い。
キュウとキンタ、何かやってたな。
イスがなかったので、部屋の奥まで行きリュウの隣の空いてるイスに座る。
『リュウ、おはよっ』
「…数馬と一緒だったの?」
『うん、途中で会ったんだ』
「へぇ…」
眉をみけんに寄せながらリュウが言った。
…絶対何か怒ってる。
っていうか、牧野くんの事件解決の時から何か冷たい。
アタシ何か…リュウに対して酷いことした??
『…リュウ、何か怒ってる?ごめん、アタシ何かした?』
「別に、梓紗が悪いんじゃない」
『でもさぁー!アタシ鈍感だから知らないうちに…』
「まぁ…鈍感なのは、鈍感だよね」
『?』
リュウが意味深なコトを言うので、模索はそこでやめといた。
それに何で怒ってるかなんて絶対に教えてくれそうになかったし。
「数馬、あんたまた花買ってきたの?!」
メグがうんざりして言う。
「部屋も明るくなるし、優雅でいいじゃないか!」
「ていうか、はっきり言って邪魔なんですけどっ」
まぁ、言われてみれば…邪魔かもねぇ。
部屋の端っこには「数馬のお花コーナー」ができている。
どこかの結婚式ですか?みたいな位花がたくさんある。
部屋も明るくなるし、優雅だけど、さすがにこの量は多いよ…;
「まぁ、メグにはわからないかもね。花に囲まれて生活する、この豊かさ!ってものが…」
「甘いぞ、鳴沢!!」
七海先生の声。
姿は見えない。
また変装でもしてんのかな?
すると、天井からぶら下がってくる七海先生の姿が。
「ミッション・イン・ポッシブル!…だよ」
天井から吊下げたワイヤーで浮いている。
いや、でも、格好は気取ってるね。
すると、キュウから順に七海先生をつつき、回している。
「…見ればわかりますよ」
「っていうかなんで普通に現れないんですか」
「俺の趣味なんだよ!悪いか!おい止めろよこれ!おい!」
「開き直ってるし…」
「さすがです、七海先生」
『このために天井からワイヤーを…?』
「ちょ、おい!お前らそんなたるんだ気持ちでなあ。
1人前の探偵になれるとでも思ってんのか!ちょ、おい!誰か止めろ!」
七海先生は次々と体を押され、クルクル回っている。
…ずっとそこに入ればいいのに…とかって。
すると、数馬が止める。
「おお、ありがとう。…なんだ?」
数馬は七海先生に持っている花束の中から花を一輪取り出して、七海先生に渡す。
七海先生は不思議そうにしてるけど、「なんでもありません」と答えるだけだった。
「…そんなわけで、団先生からの指令だ!」
そう言って七海先生はディスクを取り出した。
「Qクラスの諸君、御機嫌よう。今回君達に調べてもらいたいのは、連続殺人事件だ」
…殺人。
その言葉にみんな固まるのが分かった。
「犯人はスクラップマーダー呼ばれる殺人鬼」
スクリーンには資料として殺害現場が映る。
男の人が腹部を刺されていて、ゴミ捨て場に捨てられている。
目をそらしてしまいそうになったけど、アタシは必死で堪える。
「最初の被害者はホームレスを襲っていた若者だ。次は地上げ屋。
被害者は皆、ゴミ捨て場に捨てられていた。
犯人は狡猾で一切の翔子を残していない。君達の力でこの殺人鬼の正体を暴いてもらいたい。
諸君らの健闘を祈る」
DVDの再生が終わり、キュウが口を開く。
「今回は連続殺人犯か」
「相手にとって不足はねぇな」
「お前らあまり調子に乗るなよ。相手は連続殺人鬼だ。正体を掴んだらすぐに警察に知らせろ!
絶対に深追いはするな!」
七海先生の言葉にアタシ達は6人で大きく返事をした。
「まずは被害者と因縁のある人から探ってみよう!」
『じゃぁさ、若者に襲われてたホームレスの人から探る??』
「…梓紗は誘ったし、キュウはいつものことだけどさ、…なんでキンタまで一緒についてくんのよ」
メグは足を止めて振り返り、呆れて言う。
行く時に買ったアイスを食べながらアタシはキンタを見る。
合流したときにキュウもキンタもアイスを食べてて笑っちゃったけど。
でも、今日はまたなんでキンタまで。
「キュウは後先考えずに突っ走っちゃうからさ、見てらんねぇだろ?」
「キンタはいざってときに心強いから!ねえ?」
『いざって時のみ??』
「ばっか、余計なこと言うな!」
なんだか2人は気持ち悪ーくニヤニヤしてる。
「そうなる前に私は逃げます!行こ、梓紗!」
『…メグ、アイス食べる?』
「あ、食べるー♡」
メグはおいしそうにアタシのアイスを一口食べる。
「毎晩だったよ。あいつらほんとに、容赦なかった…。
あのガキが殺されなかったら、俺が殺されてた。悪いが、犯人には感謝してるよ」
ホームレスのおじさんは弱々しく話してくれた。
やっぱり、そういうことする人っているんだぁ。
でも人殺しはよくないよ。殺さずにやめてくれるコトが1番いいと思うんだけどなぁ、やっぱり。
「おっさん!これ」
すると自転車に乗った男の人がおじさんにそばを渡す。
自転車と服装を見る限りでは、この人お蕎麦屋さんっぽいね。
「ああ、いつも悪いね」
「いいんだ、いいんだ」
「お知り合いですか?」
「ときどき店の残り物差し入れしてんだよね、捨てんのもったいないし」
食べ始めたおじさんを眺めながらキンタが口を開く。
「この人が襲われたことも??」
「ああ、知ってたよ」
男の人はたばこにマッチで火を点け、煙草を吸い始める。
「まぁでも、これで安心して眠れんな!!」
男の人の言葉におじさんは小さく頷いた。
「殺された地上げ屋、暴力団を使って毎日のようにきやがらせさせて、
この辺の土地、強引にかきあさってたんだよ」
「おじさんは何か酷い目に遭ったんですか?」
「ああ。見せに来て大声出したり、まずいって騒いだり。これで安心して商売ができるよ」
アタシ達は地上げ屋の被害に遭った人たちに話を聞いて回る。
このラーメン屋のおじさんも酷い目に遭ったようだ。
アタシはふと思いだす。
ホームレスのおじさんも「殺されて良かった」と言っていた。
殺された被害者は、人から本当に恨まれていたんだ。
おじさんにお礼を言い、店を出る。
「これから、どうする??」
「とりあえず、1回ミッションルームに戻ってみない??」
『あ…じゃ、アタシ1回現場に行ってみる!』
「1人で大丈夫か??」
『何キンタ!大丈夫だよ、ちょっと調べたらすぐ戻ってくるから』
「そう?じゃぁ、梓紗先に行ってるね」
メグとキュウが手を振ってくれたので振り返す。
アタシは方向転換すると一気に走りだす。
現場には絶対にリュウがいるはず!
何か怒ってるし、怒ってるから話しかけにくくて気まずいし。
とりあえずリュウとは普通に話せるように戻らなきゃ!!
少し走ると現場に着く。
やっぱり…――リュウの姿が。
『リューウッ!』
「!…梓紗」
リュウはアタシが急に声をかけたのでビックリしたみたい。
でも振り返って微笑んでくれた。
…今は、怒ってないみたい、良かった…。
「今からまたボイスレコーダーに録音するから、しゃべっちゃダメだよ」
『あ、了解ですっ!』
「…翔子を一切残していないことから考えて、犯人は用心深く犯罪に精通した人間な。
しかも死体をゴミ捨て場に捨てていることから、注目願望症候群だと思われる。
つまり、ストレスが溜まっているもの、歪んだ正義感の持ち主でもある」
リュウの話を聞いて、頭の中で整理していると背中に視線を感じた。
パッと振り返ると、そこには日傘を差した綺麗な女の人。
しかも、何とも言えない優しくない微笑をしていた。
待って、アタシどこかで、この人、会ったことあるような――――
「私の顔、どこか可笑しいところがございますか?」
「あ、いえ!すいません、違います」
アタシは女の人をかなり凝視してたのだろう。
その視線に気づいた女の人は首を傾げて聞いてきた。
アタシはかなり戸惑っちゃって、手を左右に振るしかなかった。
…でも、この雰囲気、顔、しゃべり方…どこかで……。
「梓紗」
『何っ、リュウ?』
「ちょっとさ、ここで待っててくれないか?あんまり遅かったら帰ってていいから」
『え、うん、分かった』
「あの人の用事があるんだ、悪い」
リュウはアタシの両手をギュっと一瞬だけ握り、女の人のもとへ。
ねぇ、リュウ、その人、誰なの?
アタシ、多分、その人と、会ったこと、あるよ?
溢れる感情は、リュウがアタシに向けた最後の淋しそうな顔で消された。
アタシは時々思う。
リュウって…今まで何を抱えて生きて来たんだろう。
アタシ以外のメンバーには笑顔を見せないのはどうして?
色々考えちゃうけど、やっぱりリュウが心配だった、なによりも。
*第2話*~神のメール? 記憶消失の謎!! ④
「いつまで隠れてるんだよ」
僕が言うと、そこにいたなんて気配を感じさせないほど巧みに隠れていた
ケルベロスとユリエが出てくる。
「やはり今回も、冥王星の仕業だったか」
「我々はただ、殺人計画書を作成しただけです。実行したのは依頼人。
もう彼と我々を繫ぐ証拠は、ないんですよ」
繫ぐ証拠はない…か。
実行したのは依頼人…か。
何が何でも実行させようとしてるだろ?お前らは。
僕は軽蔑する目で2人を眺めていた。
するとユリエが僕の髪に触り始める。
すぐに払いのけたかった。
「リュウ様。いくら私達から逃れようとしたところで、自分の宿命からは逃げられませんよ」
黙れ、うるさい。
そんなこと、僕が1番分かってる。
お前らだってそうだろ。
僕が逃げてるだけだっていうのを知っている。
僕がただ宿命から逃げているっていうのを知っている。
「…僕の人生は僕のものだ。お前達の指図は受けない」
僕はもうその場にいるのが息苦しく、1秒でも早く立ち去ろうと方向転換したとき、
「宿命とは、影のようなものですよ」
そんなの…わかってる。
その時、リュウが静かにゆっくり体育館に入ってきた。
何してたんだろう?…さっき言ってくれなかったから、聞かないでおこう。
「やっぱり、神の正体は君だったんだね。五十嵐先生を殺したのも」
「殺害現場の絨毯の上に、ガラスの置物が粉々になって落ちてた。
離れた場所に置かれた置物が、何故あんな場所に落ちてたんだろうって考えた。
答えは、君のメガネだ!!」
――キュウの推理が始まった。
「君はひそかに塾長室に紛れ込み、五十嵐先生を襲った。
その時メガネを落として割ってしまったんだ。
そしてその破片を拾いきれず、ガラスの置物を割ってカモフラージュした」
「あなたのメガネが、失踪前と失踪後に変わっているのがその証拠よ。
警察の鑑識にも頼んで裏をとった。
ガラスの置物の中にメガネの破片が紛れていたそうよ」
メグがそう言い終わると、牧野くんは悲しく…微笑んだ。
アタシはやっぱり牧野くんが犯人だと信じきれず、動揺してしまう。
「…なんでだよ」
『どうして…?どうしてよ牧野くん…』
「キュウくん、梓紗ちゃん。君達は友達を蹴落としたことある?」
『…え?』
牧野くんが静かな声で話し始める。
「小学校の頃一緒に野球やってた友達が塾に入ったとたん敵になった。
お前が蹴落とさなきゃ蹴落とされるんだぞ、って。毎日毎日五十嵐に吹き込まれて。
そのうち、仲間の失敗を喜んだり、苦しんでる姿を腹の中でせせら笑ったり…
僕、そういう人間になってた。
このままじゃ、五十嵐達みたいな大人になる…そう思ったら怖くなったんだ」
「だから…五十嵐先生を殺したの?」
「………ああ」
キュウの言葉に少し躊躇った後、牧野くんは強く頷く。
ああ、やっぱり五十嵐先生を殺したのは…牧野くんなんだ。
「こいつを殺して生まれ変わろうと思った。
五十嵐から逃れるには目の前からこいつを削除するしかない…って」
「ホントに君は、そんなやり方で生まれ変われるとでも思ったの?」
キュウの声がさっきよりも大きくなる。
「人の命を犠牲にしてやり直せると思ったの?
どんな理由があろうと、人殺しは許されることじゃない。
君に五十嵐先生の命を奪う権利はないんだよ!!
それに、神を名乗ってメールで失踪を呼び掛けたのもみんなが君と同じ気持ちだと思ったから、
助けてやろうと思ったの?
友達が欲しかったんなら、どうしてちゃんとぶつかんなかったの?」
キュウが牧野くんに歩み寄る。
牧野くん…牧野くんは…助けようと思ったんだ。
神っていう名をつかって、自分と同じ気持ちのみんなを助けようと…。
「野球やってた頃を思い出してよ。
練習で一緒に苦しんで、ケンカして、励まし合ったり…
そうやっていつの間にか仲良くなっていくのが友達なんじゃないかな。
仲間なんじゃないの??」
「…そこにいるの……君の仲間?」
牧野くんの目がキュウの後ろに立っているアタシ達に向けられる。
キュウは首を動かして、アタシ達のことを確認する。
そして、大きく頷いて
「うん。同じ夢を追っている、仲間だよ」
アタシはそんなキュウの言葉に思わず涙が出た。
たった一粒だったけど、キュウと牧野くんの想いを知るのには十分だった。
「…うらやましいなぁ、そんな風に胸張って言えるなんて」
牧野くんのその言葉にはたくさんの思いが込められていた。
それがアタシなんかに分かるわけないけど、伝わってきた。
涙が溢れてきた。
もう一粒の涙が零れた時には、朝日が昇ってきていた。
完全に朝日が昇った頃には、警察が到着していた。
牧野くんはパトカーの元へと連れられる。
すると、牧野くんは振り向いて言う。
「キュウくん」
「何?」
「ちゃんと罪を償ったらさ、キャッチボールの相手してくれるかな?」
「もちろん!」
キュウは笑顔で言う。
すると牧野くんはアタシの隣へと歩いてきた。
『どうしたの?』
「梓紗ちゃん…」
『ん?』
「僕さ、梓紗ちゃんのコト好きだったんだ」
『、え?!』
そう言うと、牧野くんはアタシの両肩を優しくつかみ、
少しだけ牧野くんの身体に引き寄せられる。
牧野くんの腕の中で1回だけ頭を撫でられ、すぐに腕から解放する。
『!?え、』
「これで我慢するよ、いきなりでごめんね。じゃぁ、また!」
牧野くんは偽りのない、そんな笑顔で去って行った。
パトカーが走り出す時、また同じことが繰り返されないか、ホントにヒヤヒヤしたけど、
牧野くんなら、大丈夫…だよね。
「ほらね、そうじゃんっ!」
メグが笑いながらアタシを茶化す。
『ちょっと、メグ!そういうコト言わないでよっ!!』
「私の予感は的中するんだからっ」
『ちょっと!』
もう、恥ずかしくて寂しくてメグに当たるしかなかった(ごめん)。
すると、リュウが突然アタシの目の前にやってきて両肩に手を置く。
『…何?』
「別に」
「あらら?リュウくん消毒ですかぁ?」
メグがからかう口調でリュウに言う。
「うるさいな」
そう言うと手を離してムスッとしてしまった。
え、リュウ、なんで怒ってるか分かんないけど…とりあえずごめん。
するとメグが小さく呟く。
「私達はどうなるんだろう。ずっとライバル同士なのかな?それとも…」
少しだけ、風だけが通り過ぎた。
「っていうか、キュウ」
数馬が空気を破ってくれた。
「僕達、いつから仲間になったんだ?」
「ええ?!いつからって…仲間でしょ?ねぇ、梓紗!」
『えっとぉー…なんの話??』
「今までずっとそう言ってきたじゃんっ!!」
「よく言うよ、梓紗。キュウの仲間宣言聞いて泣いてたくせに」
『うっわ、数馬それ言うか?』
「え、そうなの梓紗!?」
『えーもう!仲間だよ、アタシ達仲間だから!それで許して!!』
「2人とも、ほんっとおめでたいわね」
『えー、アタシも巻き込まれてんの?!』
「あー腹減ったし、ちゃんぽん麺でも食いに行きますか!」
「僕はパス」
「は、何でだよ!」
『キンタの奢りだったら行ってもいーかなぁっ?』
「ちょ、何言ってんだよ、違ぇよ!」
「キュウーっ、何やってんの?早く行くよっ」
「うんっ!」
『リュウ行くっ?!』
「どうしようかな」
仲間だ、仲間じゃないって言ってるけど、本当に「仲間じゃない」って思ってたら、
こんなコトだって言い合えないと思うし…。
お互い信頼し合ってなかったらこの事件だって解決できなかったと思うよ??
なんだかんだで仲がいいっていうのは事実じゃないかなぁ…。
アタシはこの6人でいるのが、1番楽しいしっ!!
アタシ達は蹴落としたり蹴落とされたりしない。
そんなコトしたらQクラスじゃないからね。
常に6人歩幅を合わせて頑張ろう!(なんて言ったらメグに「キュウみたい」て言われた)
「いつまで隠れてるんだよ」
僕が言うと、そこにいたなんて気配を感じさせないほど巧みに隠れていた
ケルベロスとユリエが出てくる。
「やはり今回も、冥王星の仕業だったか」
「我々はただ、殺人計画書を作成しただけです。実行したのは依頼人。
もう彼と我々を繫ぐ証拠は、ないんですよ」
繫ぐ証拠はない…か。
実行したのは依頼人…か。
何が何でも実行させようとしてるだろ?お前らは。
僕は軽蔑する目で2人を眺めていた。
するとユリエが僕の髪に触り始める。
すぐに払いのけたかった。
「リュウ様。いくら私達から逃れようとしたところで、自分の宿命からは逃げられませんよ」
黙れ、うるさい。
そんなこと、僕が1番分かってる。
お前らだってそうだろ。
僕が逃げてるだけだっていうのを知っている。
僕がただ宿命から逃げているっていうのを知っている。
「…僕の人生は僕のものだ。お前達の指図は受けない」
僕はもうその場にいるのが息苦しく、1秒でも早く立ち去ろうと方向転換したとき、
「宿命とは、影のようなものですよ」
そんなの…わかってる。
その時、リュウが静かにゆっくり体育館に入ってきた。
何してたんだろう?…さっき言ってくれなかったから、聞かないでおこう。
「やっぱり、神の正体は君だったんだね。五十嵐先生を殺したのも」
「殺害現場の絨毯の上に、ガラスの置物が粉々になって落ちてた。
離れた場所に置かれた置物が、何故あんな場所に落ちてたんだろうって考えた。
答えは、君のメガネだ!!」
――キュウの推理が始まった。
「君はひそかに塾長室に紛れ込み、五十嵐先生を襲った。
その時メガネを落として割ってしまったんだ。
そしてその破片を拾いきれず、ガラスの置物を割ってカモフラージュした」
「あなたのメガネが、失踪前と失踪後に変わっているのがその証拠よ。
警察の鑑識にも頼んで裏をとった。
ガラスの置物の中にメガネの破片が紛れていたそうよ」
メグがそう言い終わると、牧野くんは悲しく…微笑んだ。
アタシはやっぱり牧野くんが犯人だと信じきれず、動揺してしまう。
「…なんでだよ」
『どうして…?どうしてよ牧野くん…』
「キュウくん、梓紗ちゃん。君達は友達を蹴落としたことある?」
『…え?』
牧野くんが静かな声で話し始める。
「小学校の頃一緒に野球やってた友達が塾に入ったとたん敵になった。
お前が蹴落とさなきゃ蹴落とされるんだぞ、って。毎日毎日五十嵐に吹き込まれて。
そのうち、仲間の失敗を喜んだり、苦しんでる姿を腹の中でせせら笑ったり…
僕、そういう人間になってた。
このままじゃ、五十嵐達みたいな大人になる…そう思ったら怖くなったんだ」
「だから…五十嵐先生を殺したの?」
「………ああ」
キュウの言葉に少し躊躇った後、牧野くんは強く頷く。
ああ、やっぱり五十嵐先生を殺したのは…牧野くんなんだ。
「こいつを殺して生まれ変わろうと思った。
五十嵐から逃れるには目の前からこいつを削除するしかない…って」
「ホントに君は、そんなやり方で生まれ変われるとでも思ったの?」
キュウの声がさっきよりも大きくなる。
「人の命を犠牲にしてやり直せると思ったの?
どんな理由があろうと、人殺しは許されることじゃない。
君に五十嵐先生の命を奪う権利はないんだよ!!
それに、神を名乗ってメールで失踪を呼び掛けたのもみんなが君と同じ気持ちだと思ったから、
助けてやろうと思ったの?
友達が欲しかったんなら、どうしてちゃんとぶつかんなかったの?」
キュウが牧野くんに歩み寄る。
牧野くん…牧野くんは…助けようと思ったんだ。
神っていう名をつかって、自分と同じ気持ちのみんなを助けようと…。
「野球やってた頃を思い出してよ。
練習で一緒に苦しんで、ケンカして、励まし合ったり…
そうやっていつの間にか仲良くなっていくのが友達なんじゃないかな。
仲間なんじゃないの??」
「…そこにいるの……君の仲間?」
牧野くんの目がキュウの後ろに立っているアタシ達に向けられる。
キュウは首を動かして、アタシ達のことを確認する。
そして、大きく頷いて
「うん。同じ夢を追っている、仲間だよ」
アタシはそんなキュウの言葉に思わず涙が出た。
たった一粒だったけど、キュウと牧野くんの想いを知るのには十分だった。
「…うらやましいなぁ、そんな風に胸張って言えるなんて」
牧野くんのその言葉にはたくさんの思いが込められていた。
それがアタシなんかに分かるわけないけど、伝わってきた。
涙が溢れてきた。
もう一粒の涙が零れた時には、朝日が昇ってきていた。
完全に朝日が昇った頃には、警察が到着していた。
牧野くんはパトカーの元へと連れられる。
すると、牧野くんは振り向いて言う。
「キュウくん」
「何?」
「ちゃんと罪を償ったらさ、キャッチボールの相手してくれるかな?」
「もちろん!」
キュウは笑顔で言う。
すると牧野くんはアタシの隣へと歩いてきた。
『どうしたの?』
「梓紗ちゃん…」
『ん?』
「僕さ、梓紗ちゃんのコト好きだったんだ」
『、え?!』
そう言うと、牧野くんはアタシの両肩を優しくつかみ、
少しだけ牧野くんの身体に引き寄せられる。
牧野くんの腕の中で1回だけ頭を撫でられ、すぐに腕から解放する。
『!?え、』
「これで我慢するよ、いきなりでごめんね。じゃぁ、また!」
牧野くんは偽りのない、そんな笑顔で去って行った。
パトカーが走り出す時、また同じことが繰り返されないか、ホントにヒヤヒヤしたけど、
牧野くんなら、大丈夫…だよね。
「ほらね、そうじゃんっ!」
メグが笑いながらアタシを茶化す。
『ちょっと、メグ!そういうコト言わないでよっ!!』
「私の予感は的中するんだからっ」
『ちょっと!』
もう、恥ずかしくて寂しくてメグに当たるしかなかった(ごめん)。
すると、リュウが突然アタシの目の前にやってきて両肩に手を置く。
『…何?』
「別に」
「あらら?リュウくん消毒ですかぁ?」
メグがからかう口調でリュウに言う。
「うるさいな」
そう言うと手を離してムスッとしてしまった。
え、リュウ、なんで怒ってるか分かんないけど…とりあえずごめん。
するとメグが小さく呟く。
「私達はどうなるんだろう。ずっとライバル同士なのかな?それとも…」
少しだけ、風だけが通り過ぎた。
「っていうか、キュウ」
数馬が空気を破ってくれた。
「僕達、いつから仲間になったんだ?」
「ええ?!いつからって…仲間でしょ?ねぇ、梓紗!」
『えっとぉー…なんの話??』
「今までずっとそう言ってきたじゃんっ!!」
「よく言うよ、梓紗。キュウの仲間宣言聞いて泣いてたくせに」
『うっわ、数馬それ言うか?』
「え、そうなの梓紗!?」
『えーもう!仲間だよ、アタシ達仲間だから!それで許して!!』
「2人とも、ほんっとおめでたいわね」
『えー、アタシも巻き込まれてんの?!』
「あー腹減ったし、ちゃんぽん麺でも食いに行きますか!」
「僕はパス」
「は、何でだよ!」
『キンタの奢りだったら行ってもいーかなぁっ?』
「ちょ、何言ってんだよ、違ぇよ!」
「キュウーっ、何やってんの?早く行くよっ」
「うんっ!」
『リュウ行くっ?!』
「どうしようかな」
仲間だ、仲間じゃないって言ってるけど、本当に「仲間じゃない」って思ってたら、
こんなコトだって言い合えないと思うし…。
お互い信頼し合ってなかったらこの事件だって解決できなかったと思うよ??
なんだかんだで仲がいいっていうのは事実じゃないかなぁ…。
アタシはこの6人でいるのが、1番楽しいしっ!!
アタシ達は蹴落としたり蹴落とされたりしない。
そんなコトしたらQクラスじゃないからね。
常に6人歩幅を合わせて頑張ろう!(なんて言ったらメグに「キュウみたい」て言われた)
*第2話*~神のメール? 記憶消失の謎!! ③
次の日、牧野くんが発見されて牧野くんの運ばれた病院にキュウとメグが向かった。
アタシも「行く」って言ったけど、メグに「ダメ!」って言われた。
「梓紗はさー、ほら!リュウと一緒に捜査しなよ!!」
『なんで??』
「こっちは!私とキュウで十分間に合ってるから!ね?」
『メグがキュウと2人がいいなら…それでいいけど』
「違うってば!私は梓紗を思って…」
『嘘、何が??』
「なんでもない!!」
メグがどうしても!って言うからアタシは行かないことにした。
アタシのためを思ってるみたいだし、行かないでおこう。
せっかく出てきたミッションルームに戻るはめに。
戻るとリュウが今出ようとしている時だった。
「…あれ、梓紗。病院じゃないの」
『キュウ達が行くっていうから任せてきた!』
アタシが笑って言うと、リュウは「そっか」と言った。
「よかった」
『?何が??』
「いや?別に、なんでもない」
リュウは首を横に振った。少し笑顔だった。
「今日、また竹山裕紀に会ってくる。…行く??」
リュウはアタシの微笑んで聞いてきたので、思いっきり頷く。
『行くっ!』
リュウに連れられてある公園へと着いた。
階段に1人の男の子が座っている。アレが…竹山くん??
何か、スケッチしてるのかな?絵を描いている。
少しの間眺めていると、突然黒の絵具で絵を塗りつぶしてしまっていた。
『あ、』
アタシは思わず呟いてしまった。
リュウが少し睨んで触れるだけの強さで頭を叩く。
だって、ここから見える限りじゃすごく綺麗な絵だったんだもん。
リュウは「行くよ」と言って歩きだした。
竹山くんに近づいていく。
「絵にはその人の心が描かれる…って言うよね」
竹山君は顔をあげる。
「その絵には、不安に押しつぶされそうな君の心があふれてる。
記憶を失くしたっていうの、嘘なんじゃないの??」
『…?!』
…嘘、そんなコトってあり得るの?!
全然そんなコト気付かなかった…、でも。
「受験勉強に追われ、絵を描く自由を奪われた君は、」
「お前に俺の何が分かる!」
竹山くんは怒鳴りながら立ち上がった。
『ねぇ』
「、え?」
『絵、ホントに上手いんだね!他にはどんなの描いてんの??』
「…、ああ、いいけど」
言い争ってた場の空気に耐えられず、アタシは空気を破った。
突然、話を切り出したアタシに竹山くんは驚きを隠せていない。
リュウは「やれやれ」と見ている。
本人に許可をもらったので、早速竹山くんの隣に座り、スケッチブックを開く。
中に描かれていた絵はものすごくキレイで、見とれてしまった。
「ちょ、梓紗?」
『あ!ごめん、あまりに上手で見惚れてた』
「そんな…」
『すごい!アタシなんてどんなに頑張ってもこんなに上手に描けないよ!!
それなのに…塗りつぶしちゃって…もったいないよ』
「…、うん…」
小さいけど、竹山くんは返事をしてくれた。
リュウみたいに唐突すぎるのはよくないからねっ!
『…急で悪いんだけど…、教えてくれないかな??
どうして記憶がない、なんて嘘をついたの?…本当なら本当って言ってくれればいいし』
「えっと…」
『大丈夫、誰も責めたりはしない。そんなのアタシらがさせないから、ね?』
アタシは竹山くんに言った。
竹山くんはアタシを信用してくれたのか、俯きながらゆっくり話してくれた。
神のことや、どうやって失踪したのか、など。
話し終えた後、竹山くんは笑ってくれた。
後ろめたい気持ちなんてなさそうな、真っ直ぐな笑顔。
「メールで洗脳??」
アタシとリュウがミッションルームに戻ると、みんなはもう揃っていた。
五十嵐先生殺害のトリックはキュウとメグが解いたみたい。
共鳴振動を利用したトリックって言ってるけど…実際見てみないと分かんないし…、
みんな納得してたけど、アタシはよくわかんなくて適当に相槌を打ってた。
するとリュウがアタシにこっそり「ホントは分かってないでしょ」って。
どうせ分かってませんよーっ!
そしてキンタが失踪事件についてを話すみたい。
キンタも鈴木さんに会ったらしく、話が聞きだせたみたいだ。
「最初はほんのささやかな警告だったそうだ」
【君の人生本当にそれでいいのか?もし人生をやり直せたら君はどんな自分を選ぶ?】
2人の元に届いたメールの内容だ。
『2人ともストレスが溜まってたぽい。やりたいコトもできない、受験だってあるし…っていう状況。
だから新しい自分に生まれ変わろうって思って、そのメールの失踪計画に乗ったらしいよ』
すると数馬が口を開きだす。
「2人を先導してた奴の正体は?」
「素性が割れるような話は一切してこなかったそうだ。
ただ、ハンドルネームは【神】だったそうだ」
「神?」
「発売前の雑誌や漫画なんかの噂を流したり…そういうリスペクトされるような存在を、
ネットの世界じゃ神って呼ぶんだ」
『へぇ…』
牧野くんが言ってた神の声っていうのは、このことだったのかな?
「でもキンタも梓紗もすごいよ!よくそこまで聞き出せたね」
「え?いや、大したことじゃねぇだろ」
『まぁ、そうだよね』
「ライバルに点数取られたっていうのに、キュウってホント無邪気よね」
メグは呆れた目でキュウに言う。
すると黙っていたリュウが口を開く。
「でも実際、2人ともすごいよ。相手の心を解いて真相を聞きだすなんて、
悔しいけど僕には出来ないな」
リュウが呟いた。
その横顔は…どこかで見たことのあるような、寂しそうな顔。
「ねぇ数馬、さっきから何見てるの?」
キュウが沈黙を破り、数馬に話しかける。
数馬は動き出す。テレビの前に座ったみたい。
数馬が見ていたのは、塾のエレベーターの防犯カメラだった。
突然、リモコンの停止ボタンを押す。
「塾長が毎晩、音楽を聴く習慣があるのを知っているのは、塾の関係者だけだろ?
…あれ?!」
数馬の驚いた声にみんなが一斉に立ち、数馬の元へ。
「こいつ今、防犯カメラ見てるよね」
そこに映っていたのは…牧野くん。
1人でエレベーターに乗っていて、鋭い目線がこちらに向けられている。
「メガネ、違うんだよねー」
メグが言う。
「失踪する前後で、メガネが変わってるの。見舞いに行ったときに気付いたんだけど」
メガネが…違う…
共鳴振動
死ぬ前に飛び散った血
遠くのガラスの破片
「…なんで…そんなこと……」
キュウが考え込む。
アタシだって……解ける、あとちょっと!解ける…!
現場に残った謎はあの割れたガラスの置物のみ。
あんなに遠くに置いてあったものがもみ合った時に落ちるなんて…まず、ない。
落ちたのは、ガラスの、置き物、…じゃなくて
『あ!』
「『…真犯人、分かっちゃった』」
アタシとキュウはハモる。
みんなは驚いた眼をしてこっちを見ていた。
電話をしていたメグがこっちに戻ってくる。
「鑑識が採取したガラスの置き物の破片の中から、2人が推理した例のものが発見されたそうよ」
『ありがとう、メグ!』
「、ねぇ!ネットの速報で、この辺りの中学生で失踪者が続出してるっていうニュースが流れてる」
「キンタ、梓紗!2人が失踪してた間そこに隠れてたのか知ってる?」
『小学校!』
「小学校だよ、最近廃校になったばっかりの」
そして私達は、2人が疾走している間に隠れていた廃校に向かった。
夜じゃないと潜入はできないし、廃校だからもとから暗いし…。
結構怖いけど、捜査のためだし…行くしかないよね!
「…ねえ、ほんとにいるのかなこの廃校に…」ガタンッ!!
メグが言い終わらないうちに何かが倒れる音がする。
「うわ、出た!出た!!」
「「「わーっ!!」」」
『何何何何?!ちょっと!!』
アタシはみんなの声に驚いて声をあげる。
ビックリしてリュウの腕にしがみついてしまった…情けない…。
リュウも声は出てないけど、結構ビックリしてるっぽいし。
「大丈夫?」笑いながらリュウが言った。
『リュウだってビックリしてたくせに!』「…そういうコト言うなよ」
照れながら言うリュウ。
可愛いなぁ。
すると、いまだにしがみついてたリュウの腕がピクっと動く。
「みんな」
リュウは気づいたように口を開く。
そして、近くの教室へと突然動き出す。特に変わった様子は…ないけど。
その時、アタシの腕の中からリュウの腕がするりと抜けた。
『リュウ?』
「…どうしたのリュウ、急に」
「…いや、あっちの方から人の声が聞こえた気がしたんだけど」
「体育館の方だなー…」
「行ってみよう!」
みんなが教室を忙しなく出て行く。
アタシの後をついて走り出した時、リュウが止まったままなのに気付く。
アタシはもう1回教室に入り直して聞く。
『リュウ?もしかして、さっきの嘘だったり…する?』
「え、、、梓紗にはバレるな。悪い、先行っててくれないか」
『?…うん。じゃぁ分かった。追いついてきてね、絶対!』
「うん」
アタシはそう言って振り返らずにみんなのあとを追った。
辿り着いたのは体育館。
中にはたくさんの中学生が。
人の声が聞こえたって言うのは本当だったのかな??
中にはピアノを弾いていたり、球技していたり、話したり。
やっていることはさまざま。
だけど、みんな、楽しそう。
「どうする?」
「行こう!」
キュウの言葉にアタシ達は一斉にドアを開けた。
中に入ると、すべての音が止み、すべての視線がこちらに向けられた。
「君達も神に先導されたの?だったら今すぐ家に帰った方がいい!」
「神はもうすぐ、警察に捕まるのよ」
メグが言うと、周りの人は首を傾げたり、
「意味分かんない」「そんなわけねぇじゃん」と言ったりと、
アタシ達の言っていることを少しも信用していないようだった。
その時、上の方から声が。
「勝手な真似はしないでくれる?」
体育館の2階から声。
お面をかぶった学ランの人が現れる。
「姿を見せなよ…牧野くん!!」
キュウが大声で言うと、あの人はお面を…はずす。
お面をとってあらわれた顔は…牧野くんだった。
『牧野…くん』
アタシがとっさに口から漏れた言葉。
すると、少しだけ牧野くんの眉が動いた気がした。
次の日、牧野くんが発見されて牧野くんの運ばれた病院にキュウとメグが向かった。
アタシも「行く」って言ったけど、メグに「ダメ!」って言われた。
「梓紗はさー、ほら!リュウと一緒に捜査しなよ!!」
『なんで??』
「こっちは!私とキュウで十分間に合ってるから!ね?」
『メグがキュウと2人がいいなら…それでいいけど』
「違うってば!私は梓紗を思って…」
『嘘、何が??』
「なんでもない!!」
メグがどうしても!って言うからアタシは行かないことにした。
アタシのためを思ってるみたいだし、行かないでおこう。
せっかく出てきたミッションルームに戻るはめに。
戻るとリュウが今出ようとしている時だった。
「…あれ、梓紗。病院じゃないの」
『キュウ達が行くっていうから任せてきた!』
アタシが笑って言うと、リュウは「そっか」と言った。
「よかった」
『?何が??』
「いや?別に、なんでもない」
リュウは首を横に振った。少し笑顔だった。
「今日、また竹山裕紀に会ってくる。…行く??」
リュウはアタシの微笑んで聞いてきたので、思いっきり頷く。
『行くっ!』
リュウに連れられてある公園へと着いた。
階段に1人の男の子が座っている。アレが…竹山くん??
何か、スケッチしてるのかな?絵を描いている。
少しの間眺めていると、突然黒の絵具で絵を塗りつぶしてしまっていた。
『あ、』
アタシは思わず呟いてしまった。
リュウが少し睨んで触れるだけの強さで頭を叩く。
だって、ここから見える限りじゃすごく綺麗な絵だったんだもん。
リュウは「行くよ」と言って歩きだした。
竹山くんに近づいていく。
「絵にはその人の心が描かれる…って言うよね」
竹山君は顔をあげる。
「その絵には、不安に押しつぶされそうな君の心があふれてる。
記憶を失くしたっていうの、嘘なんじゃないの??」
『…?!』
…嘘、そんなコトってあり得るの?!
全然そんなコト気付かなかった…、でも。
「受験勉強に追われ、絵を描く自由を奪われた君は、」
「お前に俺の何が分かる!」
竹山くんは怒鳴りながら立ち上がった。
『ねぇ』
「、え?」
『絵、ホントに上手いんだね!他にはどんなの描いてんの??』
「…、ああ、いいけど」
言い争ってた場の空気に耐えられず、アタシは空気を破った。
突然、話を切り出したアタシに竹山くんは驚きを隠せていない。
リュウは「やれやれ」と見ている。
本人に許可をもらったので、早速竹山くんの隣に座り、スケッチブックを開く。
中に描かれていた絵はものすごくキレイで、見とれてしまった。
「ちょ、梓紗?」
『あ!ごめん、あまりに上手で見惚れてた』
「そんな…」
『すごい!アタシなんてどんなに頑張ってもこんなに上手に描けないよ!!
それなのに…塗りつぶしちゃって…もったいないよ』
「…、うん…」
小さいけど、竹山くんは返事をしてくれた。
リュウみたいに唐突すぎるのはよくないからねっ!
『…急で悪いんだけど…、教えてくれないかな??
どうして記憶がない、なんて嘘をついたの?…本当なら本当って言ってくれればいいし』
「えっと…」
『大丈夫、誰も責めたりはしない。そんなのアタシらがさせないから、ね?』
アタシは竹山くんに言った。
竹山くんはアタシを信用してくれたのか、俯きながらゆっくり話してくれた。
神のことや、どうやって失踪したのか、など。
話し終えた後、竹山くんは笑ってくれた。
後ろめたい気持ちなんてなさそうな、真っ直ぐな笑顔。
「メールで洗脳??」
アタシとリュウがミッションルームに戻ると、みんなはもう揃っていた。
五十嵐先生殺害のトリックはキュウとメグが解いたみたい。
共鳴振動を利用したトリックって言ってるけど…実際見てみないと分かんないし…、
みんな納得してたけど、アタシはよくわかんなくて適当に相槌を打ってた。
するとリュウがアタシにこっそり「ホントは分かってないでしょ」って。
どうせ分かってませんよーっ!
そしてキンタが失踪事件についてを話すみたい。
キンタも鈴木さんに会ったらしく、話が聞きだせたみたいだ。
「最初はほんのささやかな警告だったそうだ」
【君の人生本当にそれでいいのか?もし人生をやり直せたら君はどんな自分を選ぶ?】
2人の元に届いたメールの内容だ。
『2人ともストレスが溜まってたぽい。やりたいコトもできない、受験だってあるし…っていう状況。
だから新しい自分に生まれ変わろうって思って、そのメールの失踪計画に乗ったらしいよ』
すると数馬が口を開きだす。
「2人を先導してた奴の正体は?」
「素性が割れるような話は一切してこなかったそうだ。
ただ、ハンドルネームは【神】だったそうだ」
「神?」
「発売前の雑誌や漫画なんかの噂を流したり…そういうリスペクトされるような存在を、
ネットの世界じゃ神って呼ぶんだ」
『へぇ…』
牧野くんが言ってた神の声っていうのは、このことだったのかな?
「でもキンタも梓紗もすごいよ!よくそこまで聞き出せたね」
「え?いや、大したことじゃねぇだろ」
『まぁ、そうだよね』
「ライバルに点数取られたっていうのに、キュウってホント無邪気よね」
メグは呆れた目でキュウに言う。
すると黙っていたリュウが口を開く。
「でも実際、2人ともすごいよ。相手の心を解いて真相を聞きだすなんて、
悔しいけど僕には出来ないな」
リュウが呟いた。
その横顔は…どこかで見たことのあるような、寂しそうな顔。
「ねぇ数馬、さっきから何見てるの?」
キュウが沈黙を破り、数馬に話しかける。
数馬は動き出す。テレビの前に座ったみたい。
数馬が見ていたのは、塾のエレベーターの防犯カメラだった。
突然、リモコンの停止ボタンを押す。
「塾長が毎晩、音楽を聴く習慣があるのを知っているのは、塾の関係者だけだろ?
…あれ?!」
数馬の驚いた声にみんなが一斉に立ち、数馬の元へ。
「こいつ今、防犯カメラ見てるよね」
そこに映っていたのは…牧野くん。
1人でエレベーターに乗っていて、鋭い目線がこちらに向けられている。
「メガネ、違うんだよねー」
メグが言う。
「失踪する前後で、メガネが変わってるの。見舞いに行ったときに気付いたんだけど」
メガネが…違う…
共鳴振動
死ぬ前に飛び散った血
遠くのガラスの破片
「…なんで…そんなこと……」
キュウが考え込む。
アタシだって……解ける、あとちょっと!解ける…!
現場に残った謎はあの割れたガラスの置物のみ。
あんなに遠くに置いてあったものがもみ合った時に落ちるなんて…まず、ない。
落ちたのは、ガラスの、置き物、…じゃなくて
『あ!』
「『…真犯人、分かっちゃった』」
アタシとキュウはハモる。
みんなは驚いた眼をしてこっちを見ていた。
電話をしていたメグがこっちに戻ってくる。
「鑑識が採取したガラスの置き物の破片の中から、2人が推理した例のものが発見されたそうよ」
『ありがとう、メグ!』
「、ねぇ!ネットの速報で、この辺りの中学生で失踪者が続出してるっていうニュースが流れてる」
「キンタ、梓紗!2人が失踪してた間そこに隠れてたのか知ってる?」
『小学校!』
「小学校だよ、最近廃校になったばっかりの」
そして私達は、2人が疾走している間に隠れていた廃校に向かった。
夜じゃないと潜入はできないし、廃校だからもとから暗いし…。
結構怖いけど、捜査のためだし…行くしかないよね!
「…ねえ、ほんとにいるのかなこの廃校に…」ガタンッ!!
メグが言い終わらないうちに何かが倒れる音がする。
「うわ、出た!出た!!」
「「「わーっ!!」」」
『何何何何?!ちょっと!!』
アタシはみんなの声に驚いて声をあげる。
ビックリしてリュウの腕にしがみついてしまった…情けない…。
リュウも声は出てないけど、結構ビックリしてるっぽいし。
「大丈夫?」笑いながらリュウが言った。
『リュウだってビックリしてたくせに!』「…そういうコト言うなよ」
照れながら言うリュウ。
可愛いなぁ。
すると、いまだにしがみついてたリュウの腕がピクっと動く。
「みんな」
リュウは気づいたように口を開く。
そして、近くの教室へと突然動き出す。特に変わった様子は…ないけど。
その時、アタシの腕の中からリュウの腕がするりと抜けた。
『リュウ?』
「…どうしたのリュウ、急に」
「…いや、あっちの方から人の声が聞こえた気がしたんだけど」
「体育館の方だなー…」
「行ってみよう!」
みんなが教室を忙しなく出て行く。
アタシの後をついて走り出した時、リュウが止まったままなのに気付く。
アタシはもう1回教室に入り直して聞く。
『リュウ?もしかして、さっきの嘘だったり…する?』
「え、、、梓紗にはバレるな。悪い、先行っててくれないか」
『?…うん。じゃぁ分かった。追いついてきてね、絶対!』
「うん」
アタシはそう言って振り返らずにみんなのあとを追った。
辿り着いたのは体育館。
中にはたくさんの中学生が。
人の声が聞こえたって言うのは本当だったのかな??
中にはピアノを弾いていたり、球技していたり、話したり。
やっていることはさまざま。
だけど、みんな、楽しそう。
「どうする?」
「行こう!」
キュウの言葉にアタシ達は一斉にドアを開けた。
中に入ると、すべての音が止み、すべての視線がこちらに向けられた。
「君達も神に先導されたの?だったら今すぐ家に帰った方がいい!」
「神はもうすぐ、警察に捕まるのよ」
メグが言うと、周りの人は首を傾げたり、
「意味分かんない」「そんなわけねぇじゃん」と言ったりと、
アタシ達の言っていることを少しも信用していないようだった。
その時、上の方から声が。
「勝手な真似はしないでくれる?」
体育館の2階から声。
お面をかぶった学ランの人が現れる。
「姿を見せなよ…牧野くん!!」
キュウが大声で言うと、あの人はお面を…はずす。
お面をとってあらわれた顔は…牧野くんだった。
『牧野…くん』
アタシがとっさに口から漏れた言葉。
すると、少しだけ牧野くんの眉が動いた気がした。
*第2話*~神のメール? 記憶消失の謎!! ②
「考えてみたら、あいつらも不幸よね」
五十嵐学院の帰り道。
3人で歩きながら話している。
「え?」
『なんで急にそんなコト…』
「だって、学歴があれば幸せになれるって時代じゃないでしょ??」
まぁ…確かにそうかもね。
今もしそんな時代が続いてたらアタシは多分ここにいないし。
「同じ夢を目指す仲間。そういうのはいる僕達はすごい幸せなのかもね」
『そうだね、キュウっ』
キュウがにこにこしながら言う。
アタシもそれに同感。
今こうして6人で頑張ってるから、ここまでこれたんだしなーって思う。
「キュウと梓紗ってさ、ほんっとおめでたいよね」
『…?』
「何が??」
「私達を出し抜こうとか、そういうこと考えたことないの??」
『うーん…まぁ、まだないかな』
「いやあー負けたくないっていう気持ちはあるけどさぁ…」
『あー!それはあるね』
キュウは視線に困らせてキョロキョロしてると何か発見した見たい。
「…!キンタ?」
キュウの視線の先には紛れもなくキンタの姿が。
しかも、キンタの後ろには柄の悪そうな男の人がたくさんいる。
…キンタ、もしかしてケンカ??
アタシ達はキンタを追いかける。
辿り着いたのは、路地裏にある1つのトンネルの下。
アタシ達が着いた頃にはもうケンカは始まっていた。
しかも、相当レベルの高いケンカ。
キンタが1人に対して相手が5人。
「キンタッッッ!!」
キュウが叫ぶ。
「何やってんだお前ら?!」
キュウが叫ぶとキンタがこっちを向く。
かなり驚いてるっぽいけど、それでも隙を見せず続けるところが凄い。
やっぱりキンタすごいなーって改めて思った。
「その人達がキンタのことつけてたから!」
「キュウ!」
メグがキュウのTシャツの裾を引っ張って連れて行こうとしてる。
「危ねぇから向こう行ってろ!」
「嫌だ!キンタ1人を置いて逃げられないよ!!」
そう言ってキュウは近くにあった棒を手に走っていく。
『ちょっと!キュウ!!』
キュウがケンカに加算したって、邪魔なだけなんだってば!!
でもまぁ、案の定抵抗に棒を振り回されて、それにビックリして、あっさり転ぶ。
あーあ、こんなカッコ悪いとこメグに見られちゃって…。
『もう、何やってんのよ』
アタシがそこにいると余計にケガすると思い、キュウを立ち上がらせると、
アタシの腕を引っ張る…男の人。
やっば、つかまった。
掴まれてる腕にかかる力が思ったより強くて声が出る。
『ちょ、痛ッ!離して!!』
「うっせぇ、てめぇが勝手に入って来たんだろうが!」
キュウがどうにかして腕を離そうとしてたのは見えたけど…。
きょろきょろしてばっかりで何にもできてないじゃん!
やばい、手に血が回んなくなってきた…。
するとキンタがすぐに助けに来てくれて、アタシの腕を掴んでる男の人を殴る。
男の人は悲鳴をあげてその場に寝転ぶ。
キンタはすぐに続きの体制を取り、
キュウがアタシの腕をすっごい心配してくれてる。
しばらくすると、メグがやってきた。
ケンカは終わったみたい。1対5のケンカだったのにあっさりキンタの勝利。
「キュウ、梓紗!!大丈夫?!」
『あ、うん。ちょっと痛いけど』
「お前って野郎は…なんであんな無茶までしたんだ。梓紗まで巻き込んで…」
『ああ、アタシは大丈夫だから。勝手に入っていったんだし』
「…梓紗ごめん。だってキンタは仲間だし、仲間を見捨てて逃げられないよ」
キンタはその言葉を聞いて「ばーかっ」と微笑みながらキュウの頭をポンと叩く。
するとキンタは立ち上がってまだ逃げ残っていた1人の男の人を捕まえた。
「何で俺をつけまわした?」
「別に意味なんかねえよ!」
「誰に頼まれた!!」
「知らねえ!さっき携帯にメールが回って来たんだ!」
キンタが携帯を取り出すと、男の人を離した。
「ちょっと借りるぞ」
キンタは携帯を手にこちらに向かってくる。
「ったく梓紗!お前もボーッとしてんなよ!」
『…ごめん』
「…はぁ……俺がリュウに怒られんじゃねぇかよ」
『…リュウ?なんで??』
「別に」とキンタは言う。
メグは「ああー、そうだよ梓紗」とニヤニヤしながら言う。
キンタはこっちに向かって歩いてきたかと思うとアタシ達を通り過ごす。
「キンタどこ行くの!?」
「早くキュウと梓紗のケガの治療でもやってろ!」
…治療??
ふと腕を見ると、掴まれた跡の痣と、何本かの擦り傷。
ちょっとだけ血が出てる。
でもまぁ、これで済んで良かったかもしれない。
ミッションルームに戻るとメグはすぐにキュウの治療を始めた。
「いったぁあ!ねぇ、もっと優しくしてよ」
「男でしょ??我慢しなさいよ」
メグもさー、素直に「痛くない?」とか言ったらいいのに。
メグがキュウのこと1番心配してたの知ってるんだからね、アタシ。
キュウが飛び出して行ったとき「キュウ…っ!」って呟いてたの聞こえちゃたよ??
ケガの手当をしているメグをキュウはずっと見つめてる。
何を思ったか恥ずかしそうに目をそらすキュウ。
やっぱり、2人は両想いかー…。
アタシは1人で頑張って治療中。
その時ドアが開いてリュウが入ってきた。
『あー、リュウおかえりー』
「あ!リュウいいタイミングで来た!
私さぁ、キュウの治療終わってから梓紗の傷の手当てやろうと思ってたんだけどさー。
キュウが情けないから終わんないのよー。梓紗の手当手伝ってあげて??
数馬に頼んでもやってくれないのよぉー」
「そんなの、僕が手当してるときにリュウが入ってきたらどうなるか分かんないだろ?」
「…まっ、そうだけど」
アタシはよく理解できない会話だったけど「ふーん」と思って聞いてた。
メグがリュウを呼んでイスに座ってるアタシの横に立たせる。
リュウはゆっくりとしゃがみこむと心配そうに見た。
「けが??何でしたの?」
『いや、色々あって』
「…色々って?」
『えーっと…転んだの!この痣は転んだ時に引っ掛かってできちゃって…』
「ふーん…」
納得してるように見えるけど、絶対疑ってるな。
キュウを助けようとして男の人に掴まれたなんて情けなくて言えないしなぁー。
「メグ、消毒液。あとガーゼ」
「はいはーい♪」
メグはかなりのご機嫌で消毒液とガーゼを持ってくる。
こっちはケガしてるっていうのに、何を楽しんでるんだか。
リュウはガーゼを消毒液で浸して、アタシの傷口につける。
「…痛い?」
『…っ、えーっと、ちょっと』
「梓紗に痛い思いさせるなんて…後でキンタに言っとかなきゃな」
『…?なんでキンタ?(なんで知ってんの?!)』
「まぁ…これくらいで済んで良かったよ。あんまり無理するな」
リュウがすごく心配した顔で言った。
その顔は今まで見たことのない顔でちょっとドキっとした。
『…心配かけてごめん。ありがとね』
「うん」
アタシが頭を下げて言うと、リュウがポンポンと頭を撫でた。
それが、妙に居心地が良かった…なんて言ったら怒られるかな。
「あーそうそう!!」
メグが急に声を張る。
「さっきまでさ、五十嵐学院に行ってたんだけどね。
梓紗ねぇ、牧野大介っていうAクラスの子に気に入られちゃってさーっ。
リュウもさ、早くしないと梓紗取られちゃうよ??」
『だからさ、牧野クンが言ってた訳じゃないんだしさ!その話やめようよ!
しかも、取られるとかって何よ?!』
メグは「梓紗はね、気にしなくていいんだよ」っておちゃらけて言われた。
「気に入られてるの??」
『えっ…そんな、分かんないよ』
「牧野…大介だっけ。Aクラスなんでしょ?」
『うん…』
「へぇ…覚えとく」
リュウは少し怒ったように言った。
「リュウ、名前とクラス覚えて何する気だろうねー?」
メグがおもしろそうに言う。
『ええ?知らないよ、そんなの』
「梓紗ってば、ホントに鈍感だよね~。そろそろ気づいてもいいのに…」
『?』
メグってば、いっつもアタシとリュウが話してると茶化してくるんだよね。
何??じゃぁアタシもキュウとメグが話してる時、いっつも茶化せばいいのかな?
ていうか、キュウとメグみたいな関係じゃないし…なんでよ??
「リュウどこ行ってたの?」
ケガの治療を終えたキュウがリュウに問う。
「失踪した竹山裕紀って奴に会ってきた。彼、もしかして解離性健忘症かもしれない」
「かいりせいけんぼうしょう…って何??」
『アタシもわかんない』
「心の傷やストレスが原因で、記憶を失ったり部分的に思い出せなくなる一種の記憶障害だ。
過去の記憶を思い出そうとして、頭痛や吐き気に襲われるというのも彼らの症状と一致する」
リュウってそこまで知ってるんだ…。
あ、でもリュウのことだから、どこかで調べて来たんだろうなぁ…。
そこまで事件に深追いするなんて…すごい。
「つまり2人は、受験勉強に追い立てられて記憶を失くしたってこと?」
「ひとつの可能性としてね」
『2人同時に??そんな…偶然がすぎる』
「私は塾の講師が怪しいと思う」
「なんで?」
「キュウも梓紗も見たでしょ??あの塾長の傲慢な態度!!
きっと行使の誰かが腹いせに嫌がらせしてるのよ。今夜、塾に忍び込んで証拠探してみる!」
メグが突然思い切ったことを言う。
まあ…それ、楽しそうだけど…。
キュウはかなり驚いてる様子。
「よしわかった、一緒に行こう。メグ1人じゃ心配だし。ね、リュウ、梓紗!」
『うん!アタシも行く!!』
「…僕に振るなよ」
リュウはうんざりしたように言ったけど、
アタシがしつこく誘ったら「しょうがないな…」って来てくれることになった。
「よし!12時ジャスト!!」
アタシらは12時に塾に入り込むという作戦で今12時になったところ。
アタシ、キュウ、メグ、リュウ、数馬の5人で忍び込むことに。
数馬の12時宣言の瞬間アタシ達は塾の入口へと走る。
塾の中は月明かりで薄暗く、すっごい雰囲気でてる。
さすがに怖いなーと思ってたらいつの間にかリュウの服の裾つかんでた。
「怖いの?」って笑って聞いてくる。
「う、っわ!こ、怖くない!ごめん!」ってパッと慌てて裾を離したら、
「別に掴んでてもいいよ、ちゃんとついてきてね」って言われたから…つかんじゃおっかな。
エレベーターから降り、少し進むと部屋が立ち並ぶ廊下に出る。
すると突然響く電子音。
「ねぇ、何の音?」
『…電話、かな?』
「あっちだ!」
リュウは勢いよく走り出して行った。
その瞬間手の中からリュウの服の裾がこぼれる。
だけど、リュウはアタシの腕を掴んでくれた。
「…この部屋からだ」
1番奥の部屋にたどり着く。
…確かに、この部屋から音が聞こえるのは確かだ。
電子音はなり続ける。
「…誰かいるのかしら」
「でも…誰も出ないよ」
音が止む。
リュウが焦ったようにドアノブを回す。
鍵がかかっていてビクともしない。
すると、リュウはしゃがみ込んでピッキングを始める。
全く…どこでそんな術覚えてくんのよ。
部屋の鍵は見事に開き、部屋の中は真っ暗だった。
「数馬、電気!!」
リュウが突然叫ぶ。
数馬は焦って電気をつける。
その瞬間目に入ってきたのは…首の脈にナイフの刺さった五十嵐先生。
『…っ、嘘』
五十嵐先生のスーツは血に染まっていて真っ赤になっている。
周りには粉々になったガラスの破片が散らばっている。
「数馬、記録」
「う、うん」
そう言うと数馬はカメラで現場の写真を撮り始めた。
リュウはそっとアタシの隣に立ち、腕を肩にまわして、アタシを寄せた。
「見せてゴメン」と呟くと、頭をポンと撫でてくれた。
「…大丈夫だよ」アタシはゆっくり頷いて、微笑して言った。
心配そうにしてたけど、毎回辛くなってたら拉致あかないもん。がんばらなきゃ。
しばらくすると、警察が来た。
メンバーの誰かが連絡したんだろう(…気付かなかった)。
「第一発見者は…って!何でお前らここにいるんだよ!!」
諸星さんと猫田さんが入ってくる。
ソファーに腰掛けていたアタシ達はだるそうに立ち上がる。
「勝手に入っていたのか、不法侵入罪だぞ!」
『そんなコトより、今は捜査でしょう!それにアタシ達が来なきゃ発見されなかっただろうし』
「…えー、男の身元は?」
納得したように諸星さんは言う。
「被害者の名前は五十嵐匠45歳。この塾の経営者です」
猫田さんが答えるべきである、諸星さんの質問にキュウが答える。
「死因は?」
「おそらく、頚動脈切断による失血性のショック死です」
リュウが答える。
「死亡推定時刻!」
猫田さんは誰かが答えると思っていたようで、黙っていたが、
誰も答えそうでないのを把握し、キュウに「どうぞ」と手を差し伸べる。
さすがにそこまではプロじゃないと分からないでしょう。
キュウは猫田さんに手を返す。
「何確認してんだバカ!」
猫田さんは怒られる。
「死後硬直から推定して、夜10時から11時の間とのことです」
すると、数馬が口を開く。
「非常階段の出入り口は、内側から鍵がかかっていた。残る出入り口は通用口だけ」
「その時間帯、警備員は?」
「ビルの見回りをしていたそうです」
「じゃぁ、エレベーターの防犯カメラをチェックしてみたら?ね、猫田さんっ」
メグが笑顔で猫田さんにそう告げると、猫田さんの顔がぐにゃあっと笑った。
知り合いだっけ、この2人。どんな関係か聞き忘れてた。
猫田さんが「にゃあるほど」と言うと、また諸星さんに怒られる。
「ちょっと気になる事があるんですけど」
今まで数馬の撮影したカメラに記録を見ていたリュウが言う。
「死体の上の陶器のかけらを見てください。血しぶきを浴びたように血だらけです。
完全に心臓が止まった後なら、派手に血が飛ぶことはありません。
つまり被害者は生きてはいたけれど、動けない状態だったんじゃないでしょうか」
そっか。死んで心臓が止まった後じゃ、血が流れてないからね。
「じゃぁ、睡眠薬か何かで眠らされてたってこと??」
「おそらく」
「だが、何のために?」
諸星さんがうっかりこっち側に聞いてくる」
「それはこれから調べます」
「おお、…あ、いい!調べなくて!」
諸星さんは否定を始める。
すると、1人の警官に呼ばれて諸星さんと猫田さんが部屋を出る。
写真と部屋を見比べているメグがしゃべりだす。
「花瓶と燭台、本棚の上にあったんだ」
「なんであんな上にあったものが落ちてるんだろう」
「犯人ともみ合った時に堕ちたんじゃないの??」
『でもあんなに遠くにあるよ?ここで粉々になってるのは、不自然じゃない??』
キュウとメグと3人で考える。
諸星さんが部屋に戻ってくる。
「ほら、もうお前らさっさと帰れ!家でサッカーでも見てろ!」
すると猫田さんが慌てて部屋に飛び込んできた。
「諸星さん!この塾の生徒がまた行方不明になったそうです!!」
「名前は!?」
「牧野大介、15歳です!!」
…牧野大介って・・・あの牧野くん??
アタシは驚いて。メグとキュウを見た。
2人も相当驚いてるようで、目を丸くしてた。
「考えてみたら、あいつらも不幸よね」
五十嵐学院の帰り道。
3人で歩きながら話している。
「え?」
『なんで急にそんなコト…』
「だって、学歴があれば幸せになれるって時代じゃないでしょ??」
まぁ…確かにそうかもね。
今もしそんな時代が続いてたらアタシは多分ここにいないし。
「同じ夢を目指す仲間。そういうのはいる僕達はすごい幸せなのかもね」
『そうだね、キュウっ』
キュウがにこにこしながら言う。
アタシもそれに同感。
今こうして6人で頑張ってるから、ここまでこれたんだしなーって思う。
「キュウと梓紗ってさ、ほんっとおめでたいよね」
『…?』
「何が??」
「私達を出し抜こうとか、そういうこと考えたことないの??」
『うーん…まぁ、まだないかな』
「いやあー負けたくないっていう気持ちはあるけどさぁ…」
『あー!それはあるね』
キュウは視線に困らせてキョロキョロしてると何か発見した見たい。
「…!キンタ?」
キュウの視線の先には紛れもなくキンタの姿が。
しかも、キンタの後ろには柄の悪そうな男の人がたくさんいる。
…キンタ、もしかしてケンカ??
アタシ達はキンタを追いかける。
辿り着いたのは、路地裏にある1つのトンネルの下。
アタシ達が着いた頃にはもうケンカは始まっていた。
しかも、相当レベルの高いケンカ。
キンタが1人に対して相手が5人。
「キンタッッッ!!」
キュウが叫ぶ。
「何やってんだお前ら?!」
キュウが叫ぶとキンタがこっちを向く。
かなり驚いてるっぽいけど、それでも隙を見せず続けるところが凄い。
やっぱりキンタすごいなーって改めて思った。
「その人達がキンタのことつけてたから!」
「キュウ!」
メグがキュウのTシャツの裾を引っ張って連れて行こうとしてる。
「危ねぇから向こう行ってろ!」
「嫌だ!キンタ1人を置いて逃げられないよ!!」
そう言ってキュウは近くにあった棒を手に走っていく。
『ちょっと!キュウ!!』
キュウがケンカに加算したって、邪魔なだけなんだってば!!
でもまぁ、案の定抵抗に棒を振り回されて、それにビックリして、あっさり転ぶ。
あーあ、こんなカッコ悪いとこメグに見られちゃって…。
『もう、何やってんのよ』
アタシがそこにいると余計にケガすると思い、キュウを立ち上がらせると、
アタシの腕を引っ張る…男の人。
やっば、つかまった。
掴まれてる腕にかかる力が思ったより強くて声が出る。
『ちょ、痛ッ!離して!!』
「うっせぇ、てめぇが勝手に入って来たんだろうが!」
キュウがどうにかして腕を離そうとしてたのは見えたけど…。
きょろきょろしてばっかりで何にもできてないじゃん!
やばい、手に血が回んなくなってきた…。
するとキンタがすぐに助けに来てくれて、アタシの腕を掴んでる男の人を殴る。
男の人は悲鳴をあげてその場に寝転ぶ。
キンタはすぐに続きの体制を取り、
キュウがアタシの腕をすっごい心配してくれてる。
しばらくすると、メグがやってきた。
ケンカは終わったみたい。1対5のケンカだったのにあっさりキンタの勝利。
「キュウ、梓紗!!大丈夫?!」
『あ、うん。ちょっと痛いけど』
「お前って野郎は…なんであんな無茶までしたんだ。梓紗まで巻き込んで…」
『ああ、アタシは大丈夫だから。勝手に入っていったんだし』
「…梓紗ごめん。だってキンタは仲間だし、仲間を見捨てて逃げられないよ」
キンタはその言葉を聞いて「ばーかっ」と微笑みながらキュウの頭をポンと叩く。
するとキンタは立ち上がってまだ逃げ残っていた1人の男の人を捕まえた。
「何で俺をつけまわした?」
「別に意味なんかねえよ!」
「誰に頼まれた!!」
「知らねえ!さっき携帯にメールが回って来たんだ!」
キンタが携帯を取り出すと、男の人を離した。
「ちょっと借りるぞ」
キンタは携帯を手にこちらに向かってくる。
「ったく梓紗!お前もボーッとしてんなよ!」
『…ごめん』
「…はぁ……俺がリュウに怒られんじゃねぇかよ」
『…リュウ?なんで??』
「別に」とキンタは言う。
メグは「ああー、そうだよ梓紗」とニヤニヤしながら言う。
キンタはこっちに向かって歩いてきたかと思うとアタシ達を通り過ごす。
「キンタどこ行くの!?」
「早くキュウと梓紗のケガの治療でもやってろ!」
…治療??
ふと腕を見ると、掴まれた跡の痣と、何本かの擦り傷。
ちょっとだけ血が出てる。
でもまぁ、これで済んで良かったかもしれない。
ミッションルームに戻るとメグはすぐにキュウの治療を始めた。
「いったぁあ!ねぇ、もっと優しくしてよ」
「男でしょ??我慢しなさいよ」
メグもさー、素直に「痛くない?」とか言ったらいいのに。
メグがキュウのこと1番心配してたの知ってるんだからね、アタシ。
キュウが飛び出して行ったとき「キュウ…っ!」って呟いてたの聞こえちゃたよ??
ケガの手当をしているメグをキュウはずっと見つめてる。
何を思ったか恥ずかしそうに目をそらすキュウ。
やっぱり、2人は両想いかー…。
アタシは1人で頑張って治療中。
その時ドアが開いてリュウが入ってきた。
『あー、リュウおかえりー』
「あ!リュウいいタイミングで来た!
私さぁ、キュウの治療終わってから梓紗の傷の手当てやろうと思ってたんだけどさー。
キュウが情けないから終わんないのよー。梓紗の手当手伝ってあげて??
数馬に頼んでもやってくれないのよぉー」
「そんなの、僕が手当してるときにリュウが入ってきたらどうなるか分かんないだろ?」
「…まっ、そうだけど」
アタシはよく理解できない会話だったけど「ふーん」と思って聞いてた。
メグがリュウを呼んでイスに座ってるアタシの横に立たせる。
リュウはゆっくりとしゃがみこむと心配そうに見た。
「けが??何でしたの?」
『いや、色々あって』
「…色々って?」
『えーっと…転んだの!この痣は転んだ時に引っ掛かってできちゃって…』
「ふーん…」
納得してるように見えるけど、絶対疑ってるな。
キュウを助けようとして男の人に掴まれたなんて情けなくて言えないしなぁー。
「メグ、消毒液。あとガーゼ」
「はいはーい♪」
メグはかなりのご機嫌で消毒液とガーゼを持ってくる。
こっちはケガしてるっていうのに、何を楽しんでるんだか。
リュウはガーゼを消毒液で浸して、アタシの傷口につける。
「…痛い?」
『…っ、えーっと、ちょっと』
「梓紗に痛い思いさせるなんて…後でキンタに言っとかなきゃな」
『…?なんでキンタ?(なんで知ってんの?!)』
「まぁ…これくらいで済んで良かったよ。あんまり無理するな」
リュウがすごく心配した顔で言った。
その顔は今まで見たことのない顔でちょっとドキっとした。
『…心配かけてごめん。ありがとね』
「うん」
アタシが頭を下げて言うと、リュウがポンポンと頭を撫でた。
それが、妙に居心地が良かった…なんて言ったら怒られるかな。
「あーそうそう!!」
メグが急に声を張る。
「さっきまでさ、五十嵐学院に行ってたんだけどね。
梓紗ねぇ、牧野大介っていうAクラスの子に気に入られちゃってさーっ。
リュウもさ、早くしないと梓紗取られちゃうよ??」
『だからさ、牧野クンが言ってた訳じゃないんだしさ!その話やめようよ!
しかも、取られるとかって何よ?!』
メグは「梓紗はね、気にしなくていいんだよ」っておちゃらけて言われた。
「気に入られてるの??」
『えっ…そんな、分かんないよ』
「牧野…大介だっけ。Aクラスなんでしょ?」
『うん…』
「へぇ…覚えとく」
リュウは少し怒ったように言った。
「リュウ、名前とクラス覚えて何する気だろうねー?」
メグがおもしろそうに言う。
『ええ?知らないよ、そんなの』
「梓紗ってば、ホントに鈍感だよね~。そろそろ気づいてもいいのに…」
『?』
メグってば、いっつもアタシとリュウが話してると茶化してくるんだよね。
何??じゃぁアタシもキュウとメグが話してる時、いっつも茶化せばいいのかな?
ていうか、キュウとメグみたいな関係じゃないし…なんでよ??
「リュウどこ行ってたの?」
ケガの治療を終えたキュウがリュウに問う。
「失踪した竹山裕紀って奴に会ってきた。彼、もしかして解離性健忘症かもしれない」
「かいりせいけんぼうしょう…って何??」
『アタシもわかんない』
「心の傷やストレスが原因で、記憶を失ったり部分的に思い出せなくなる一種の記憶障害だ。
過去の記憶を思い出そうとして、頭痛や吐き気に襲われるというのも彼らの症状と一致する」
リュウってそこまで知ってるんだ…。
あ、でもリュウのことだから、どこかで調べて来たんだろうなぁ…。
そこまで事件に深追いするなんて…すごい。
「つまり2人は、受験勉強に追い立てられて記憶を失くしたってこと?」
「ひとつの可能性としてね」
『2人同時に??そんな…偶然がすぎる』
「私は塾の講師が怪しいと思う」
「なんで?」
「キュウも梓紗も見たでしょ??あの塾長の傲慢な態度!!
きっと行使の誰かが腹いせに嫌がらせしてるのよ。今夜、塾に忍び込んで証拠探してみる!」
メグが突然思い切ったことを言う。
まあ…それ、楽しそうだけど…。
キュウはかなり驚いてる様子。
「よしわかった、一緒に行こう。メグ1人じゃ心配だし。ね、リュウ、梓紗!」
『うん!アタシも行く!!』
「…僕に振るなよ」
リュウはうんざりしたように言ったけど、
アタシがしつこく誘ったら「しょうがないな…」って来てくれることになった。
「よし!12時ジャスト!!」
アタシらは12時に塾に入り込むという作戦で今12時になったところ。
アタシ、キュウ、メグ、リュウ、数馬の5人で忍び込むことに。
数馬の12時宣言の瞬間アタシ達は塾の入口へと走る。
塾の中は月明かりで薄暗く、すっごい雰囲気でてる。
さすがに怖いなーと思ってたらいつの間にかリュウの服の裾つかんでた。
「怖いの?」って笑って聞いてくる。
「う、っわ!こ、怖くない!ごめん!」ってパッと慌てて裾を離したら、
「別に掴んでてもいいよ、ちゃんとついてきてね」って言われたから…つかんじゃおっかな。
エレベーターから降り、少し進むと部屋が立ち並ぶ廊下に出る。
すると突然響く電子音。
「ねぇ、何の音?」
『…電話、かな?』
「あっちだ!」
リュウは勢いよく走り出して行った。
その瞬間手の中からリュウの服の裾がこぼれる。
だけど、リュウはアタシの腕を掴んでくれた。
「…この部屋からだ」
1番奥の部屋にたどり着く。
…確かに、この部屋から音が聞こえるのは確かだ。
電子音はなり続ける。
「…誰かいるのかしら」
「でも…誰も出ないよ」
音が止む。
リュウが焦ったようにドアノブを回す。
鍵がかかっていてビクともしない。
すると、リュウはしゃがみ込んでピッキングを始める。
全く…どこでそんな術覚えてくんのよ。
部屋の鍵は見事に開き、部屋の中は真っ暗だった。
「数馬、電気!!」
リュウが突然叫ぶ。
数馬は焦って電気をつける。
その瞬間目に入ってきたのは…首の脈にナイフの刺さった五十嵐先生。
『…っ、嘘』
五十嵐先生のスーツは血に染まっていて真っ赤になっている。
周りには粉々になったガラスの破片が散らばっている。
「数馬、記録」
「う、うん」
そう言うと数馬はカメラで現場の写真を撮り始めた。
リュウはそっとアタシの隣に立ち、腕を肩にまわして、アタシを寄せた。
「見せてゴメン」と呟くと、頭をポンと撫でてくれた。
「…大丈夫だよ」アタシはゆっくり頷いて、微笑して言った。
心配そうにしてたけど、毎回辛くなってたら拉致あかないもん。がんばらなきゃ。
しばらくすると、警察が来た。
メンバーの誰かが連絡したんだろう(…気付かなかった)。
「第一発見者は…って!何でお前らここにいるんだよ!!」
諸星さんと猫田さんが入ってくる。
ソファーに腰掛けていたアタシ達はだるそうに立ち上がる。
「勝手に入っていたのか、不法侵入罪だぞ!」
『そんなコトより、今は捜査でしょう!それにアタシ達が来なきゃ発見されなかっただろうし』
「…えー、男の身元は?」
納得したように諸星さんは言う。
「被害者の名前は五十嵐匠45歳。この塾の経営者です」
猫田さんが答えるべきである、諸星さんの質問にキュウが答える。
「死因は?」
「おそらく、頚動脈切断による失血性のショック死です」
リュウが答える。
「死亡推定時刻!」
猫田さんは誰かが答えると思っていたようで、黙っていたが、
誰も答えそうでないのを把握し、キュウに「どうぞ」と手を差し伸べる。
さすがにそこまではプロじゃないと分からないでしょう。
キュウは猫田さんに手を返す。
「何確認してんだバカ!」
猫田さんは怒られる。
「死後硬直から推定して、夜10時から11時の間とのことです」
すると、数馬が口を開く。
「非常階段の出入り口は、内側から鍵がかかっていた。残る出入り口は通用口だけ」
「その時間帯、警備員は?」
「ビルの見回りをしていたそうです」
「じゃぁ、エレベーターの防犯カメラをチェックしてみたら?ね、猫田さんっ」
メグが笑顔で猫田さんにそう告げると、猫田さんの顔がぐにゃあっと笑った。
知り合いだっけ、この2人。どんな関係か聞き忘れてた。
猫田さんが「にゃあるほど」と言うと、また諸星さんに怒られる。
「ちょっと気になる事があるんですけど」
今まで数馬の撮影したカメラに記録を見ていたリュウが言う。
「死体の上の陶器のかけらを見てください。血しぶきを浴びたように血だらけです。
完全に心臓が止まった後なら、派手に血が飛ぶことはありません。
つまり被害者は生きてはいたけれど、動けない状態だったんじゃないでしょうか」
そっか。死んで心臓が止まった後じゃ、血が流れてないからね。
「じゃぁ、睡眠薬か何かで眠らされてたってこと??」
「おそらく」
「だが、何のために?」
諸星さんがうっかりこっち側に聞いてくる」
「それはこれから調べます」
「おお、…あ、いい!調べなくて!」
諸星さんは否定を始める。
すると、1人の警官に呼ばれて諸星さんと猫田さんが部屋を出る。
写真と部屋を見比べているメグがしゃべりだす。
「花瓶と燭台、本棚の上にあったんだ」
「なんであんな上にあったものが落ちてるんだろう」
「犯人ともみ合った時に堕ちたんじゃないの??」
『でもあんなに遠くにあるよ?ここで粉々になってるのは、不自然じゃない??』
キュウとメグと3人で考える。
諸星さんが部屋に戻ってくる。
「ほら、もうお前らさっさと帰れ!家でサッカーでも見てろ!」
すると猫田さんが慌てて部屋に飛び込んできた。
「諸星さん!この塾の生徒がまた行方不明になったそうです!!」
「名前は!?」
「牧野大介、15歳です!!」
…牧野大介って・・・あの牧野くん??
アタシは驚いて。メグとキュウを見た。
2人も相当驚いてるようで、目を丸くしてた。