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ドリーム小説
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「おいっ、梓紗っ!!!」
「何?」
「悪いんだけど…また貸してくんね?教科書」
「はぁ~?何回目ですか、慧くん」
「いや、マヂで。チャイム鳴るから!!!」
「まったく…はい!!!」
「サンキュっ」

俺はホントにすぐ鳴りそうだったから、梓紗から教科書を受け取って
すぐに走りだした。
案の定、チャイムはすぐに鳴った。



始業ベルで着席






俺が教室に入ると同時に先生が入ってきた。
急いで席に座り、授業が始まる挨拶を終えた。

「おっ、伊野尾、また彼女から教科書借りたの?」

前の席の奴に突然問われた。

「ま、まぁね。俺、忘れっぽくて…」
「イチャつきますねー?」
「なっ、イチャついてるよーに見えるか?!」
「すっげー見える。彼女4組だろ?そんな離れたトコまで教科書借りに行くなんて…。
 なんか、超彼氏って感じする」
「べっつに…超彼氏ってなんだよ、向こうだって超彼女って思ってないと思うし…」
「とか言ってさ、ホントは?そんな強がってるように言ってるけど?」
「まぁ…少なくとも俺は大好きですね」
「うっわー!!!コイツ、まぢムカつくーっ!!!」

叫びやがったから、俺らは先生から怒られる羽目に。
しかも俺らの周辺の席の人には丸聞こえだったらしく、
授業が終わってから相当な勢いで茶化された。


超彼氏…かぁ。
俺は、ホント、大好きなんだけどさ、
最近の梓紗、冷たいっていうか…俺のコト好きでいてくれてるのかな?って思う事が多い。
デートもするし、登下校も一緒にしたりするけどさ…。
デートの回数も俺の仕事のせいで少なくなってきてるし…。
俺があんまり梓紗にかまってやれないから、実は怒ってたりするのかなぁ?
あー…何かもう、別れるとか言われたらどうしよう…!!!




「あ、伊野ちゃんーっ!!!」

1人で廊下で風に打ちひしがれていると、1人の女子に声をかけられた。
あ、梓紗とよく一緒にいる…

「紗絵です」
「あっ、そうそう。って何で分かったの?」
「そんなコト言いたげな顔してたから」
「嘘、俺って顔に出るんだ…」
「それは知らないけど…梓紗のコトでちょっと…いい?」
「え?」


俺はついにその時が来たのかと思ってた。
たった今考えていたコトが、たった今起ころうとしてるんだと…。



「梓紗からの伝言…とかって訳じゃなく、アタシが勝手に伝えるんだけど…」
「う、うん」
「梓紗、【慧がホントにアタシのコト好きか分かんない】みたいなコト言っててね?
 だから、どーにかして伊野ちゃんの梓紗の好きさを伝えてほしいなーって」
「え、う、嘘?!別れる、とか言いに来たんじゃないの?!」
「まさかぁっ!!!アイツは伊野尾慧フェチ人間だから、心配しなくていいよ」

俺は突然でビックリした。
まさか梓紗も同じこと思ってるなんて、想像もしないでしょ。
しかも、そんな、可愛いコトを…

「何?あいつ、こんなに俺が愛してるのを分からないと!?」
「うー…ん、まあ、そーいうことだったりするかも」
「はー?マヂ有り得ないから。分かった、ありがとう、梓紗に伝えとく」
「うん」
「つか、紗絵、優しいんだね。わざわざ教えて下さって…」
「い、や、別に!!梓紗悩んでたからで…、つかアタシにそんなコト言わないでよ!!
 そーいうこと言うくらいだったら、梓紗に【可愛い】くらい言ってあげなよ」
「そ、それは無理だな。恥ずかしすぎる…」
「じゃ、アタシは伝えたからね!!」

そう言い終わると走り去って行ってしまった。
俺は教室に入るのを見送ると、その直後梓紗と一緒にまた教室を出てきた。
向こうの方へ歩いて行ってしまった。


俺はこんなにもお前を愛してるのにー!!!とかって、
心の中で叫んでも意味ないんだよなぁ…。
あー…どーにかしてこの気持ち伝えなきゃ、いつ別れようとか言われるか…。
でも紗絵が言うには梓紗は【伊野尾慧フェチ】とかって…。
これは…嬉しすぎる。
梓紗の気持ちを知ったからには、俺もなんとかして伝えなきゃなぁ。


「おいっ」

気付いたら授業中だった。
前の奴が俺に向かって話しかけている。

「何?」
「お前、彼女からまだ教科書借りてんのか?」
「あ、そーいえばまだ返してねぇなぁ…」
「次、4組使うみたいだけど?」
「そうなの?!あ、ありがとう」

俺は教科書を返すと同時に、梓紗に今日渡そうと思っていた
次のコンサートのチケットを渡すことにした。
俺は今回、梓紗にいい席で俺を見てもらおうと思って、
1番前のすごくいい席を用意してもらった。
チケットだけあげるのもなんだし、と思っていたから…手紙を添えよう。

授業中に手紙を考えに考えを重ねて、書いた。
途中で前の席の奴に「何書いてんの?」って覗かれたけど、
先生にはバレてなかったみたいだったから、スルーしておいた。

長い授業が終わった。
俺はまっ先に教科書に手紙を書いたルーズリーフとチケットを挟んで4組へとダッシュ。

「あ、紗絵、梓紗…いる?」
「梓紗ぁー!!!旦那が呼んでる」
「ちょ、旦那って」
「はっ?旦那とか言うなしーっ」
「だけど、将来は…お子さんは何人つくるおつもりですか?」
「お、お子さん?!」
「分かったからぁ、もう…」

梓紗は照れてるのか怒ってるのか分かんないような顔で近付いてきた。
しかも、最後の方スルー気味だったし…。

「あっずさぁ、今の流すのは酷くないー?それに旦那言うなとか酷くないー?」
「べ、別に流してないじゃん!!」
「ちょっとそこの2人ー!!教室の外でやってくださるかしらー?笑」
「ほら、梓紗のせいで怒られたジャンっ!」
「今のは完全に慧だからっ」

俺は教室の少し外に梓紗を連れ出して、一大決心をして教科書を差し出した。

「教科書を返します!!ありがとうございましたーっ」
「今後一切、このようなコトがありませんよーっに!!」
「何その言い方ー!!」
「嘘だよ、もう…でも忘れないでよ?慧が忘れたの、必ず持ってきてるわけじゃないんだから」
「気をつけるよ。んじゃ、またあとでねー♪」

俺は梓紗が返事を返してくれる前に走り去った。
だって、もし手紙をその場で読んでくれたりしたら、俺恥ずかしくて…死ぬ。
梓紗が教室に入らず、何か作業していたのは背中で分かった。

俺は、今の気持ちを精一杯綴った。

≪梓紗へ
 いつもいつも教科書借りてごめんねー
 これからは気をつけますっ!!!…と、話は変わって。
 俺からのプレゼント!!コンサートのチケット差し上げます。
 2枚入ってるから1人じゃイヤだったら誰か誘ってね。
 絶対にその席にいろよ、1番前のすっげーいい席!!
 梓紗にばっかりサービスすっから♡ちょっと恥ずかしいけどね…≫





≪愛してるよ≫

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「おいっ、梓紗っ!!!」
「何?」
「悪いんだけど…また貸してくんね?教科書」
「はぁ~?何回目ですか、慧くん」
「いや、マヂで。チャイム鳴るから!!!」
「まったく…はい!!!」
「サンキュっ」

慧はそう言って走って行った。
すぐにチャイムが鳴った。





教科書かしてくれ!




「なーに?!また伊野ちゃんに教科書貸してんだぁ。
 いっくら付き合ってるからってそんなに公衆の面前でイチャつかないで頂きたーい」

そう。アタシと伊野尾慧は付き合っています。
高1の秋。
同じクラスだった慧に告られた。
今は2年でクラス替えをして2組と4組に離れちゃったんだけど…。
ジャニーズだったコトも知ってたし、告られた時、正直夢かと思った。
だって…好きだったんだもん。

「別にイチャついてないし!!つか、イチャついてるように見えるか?!」
「めっちゃ見えるよー。何言ってるんですか」
「あー有り得ない。何あの人。アレじゃない?
 教科書借りれるのにちょうどいい人見つけたからアタシと付き合ってるんじゃない?」
「とか言って?そんなコト言ってるけど?」
「す…すきだよ?」
「なんで疑問形何だよ」

好きだけどさー。
好きだけど、慧は彼氏っぽいコト全然してくれないし。
一緒にお祭り行ったり、映画見たり…デートはしてくれるんだけど…。
送ってくれたり、一緒に帰ったりはしてるんだけど…。
それが普通の彼氏なのかなぁ。
でも仕事もあるし、しょうがないよねー…。

「ええ!?それで充分じゃんっ!!一緒にいれるだけで幸せ♡とか思わないわけ?」
「………思う」
「じゃっ、いいじゃんっ!!誰もが憧れる伊野尾慧だよ?!
 そんな人に好きになってもらえたんだから、自信持ちなって!!」
「そーお?じゃぁ、自信持つよー」


慧には文化祭が終わった閉幕祭で告られた。
その頃はまだ、『伊野チャン』って呼んでたなぁ…。

全校生徒が体育館に集まって盛り上がるんだけど、
アタシは少しだけ気分が悪く、教室で待機。
慧の楽しそうな姿を横目に体育館を出てきた。
アタシは30分くらい机に伏せていたら、ふと廊下に声がする。
その声は……、伊野チャンと…誰?
伊野チャンの声がして身体を起き上がらせると、友達に背中を押され伊野チャンが教室に飛び込んできた。
アタシはどうしようかと思い、どーしたの?と聞いてみた。

【いや、調子悪いって聞いてさ】
【ああ、別に、もう大丈夫だよ】
【そっか。なら良かった】
【うん】
【ちょっと心配だったから来てみちゃった】
【ええっ?!そーなの?!もう大丈夫だから、戻っていいよ】
【梓紗は?】
【いや、アタシはまだいるけど…】
【じゃぁ俺もいるよ】
【いいよ、ここに居てもつまんないでしょーに】

すると、沈黙が流れた。
アタシ、ちょっと酷いコト言った?
心配してくれたのに、つまんない、はないよね…。
あー…伊野チャンに引かれたかも。
つかもう、何コイツ的な。

あ―――……【梓紗が居ればつまんないコトなんて存在しないから】

【…はっ?!】
【俺は、梓紗を、好きだから】
【それってなんかの冗談?体育館でそーいうゲームやってんの?】
【ばっか、なんでだよ。だから梓紗が好きなんだってば】
【うっそ、ええ?何それ?は?】
【うるさいなぁ……で?付き合ってくれるの?】

慧が真っ赤な笑顔で言っていたのを覚えてる。
アタシはもう、その笑顔の虜だ。

【つ、付き合うに決まってんじゃん!!アタシがす、好きじゃないとでも、思って】
【わ、分かった!!ありがとう!!!】

そう言って始まったアタシ達の恋愛。
だけど思うように発展しない。
ただ、言葉だけで彼女・彼氏って言っているだけのようにアタシには感じる。
慧は、ホントにアタシを好きでいてくれてるのかな?って、
最近は時々思うようになってしまったほどだ。

「梓紗ぁー!!!旦那が呼んでる」
「はっ?旦那とか言うなしーっ」
「だけど、将来は…お子さんは何人つくるおつもりですか?」
「分かったからぁ、もう…」
「あっずさぁ、今の流すのは酷くないー?それに旦那言うなとか酷くないー?」
「べ、別に流してないじゃん!!」
「ちょっとそこの2人ー!!教室の外でやってくださるかしらー?笑」
「ほら、梓紗のせいで怒られたジャンっ!」
「今のは完全に慧だからっ」

授業終了のチャイムと同時に慧は教室にやってきた。
慧の手にはアタシがさっき貸した教科書。

「教科書を返します!!ありがとうございましたーっ」
「今後一切、このようなコトがありませんよーっに!!」
「何その言い方ー!!」
「嘘だよ、もう…でも忘れないでよ?慧が忘れたの、必ず持ってきてるわけじゃないんだから」
「気をつけるよ。んじゃ、またあとでねー♪」

走って行った慧の後ろ姿は廊下の女子がみんな振り返ってるくらいカッコ良かった。
あーあ、でも慧はアタシのコト好きでいてくれてるんだよね。
やっぱり自信持たなきゃね。
少なくとも、アタシは慧大好きだから―って思ってるだけじゃ意味無いけど。

「…ん?」

慧から返してもらった教科書には何かが挟まっていた。
ルーズリーフが1回折られたものに、クリップで小さな封筒がつけられている。

≪梓紗へ
 いつもいつも教科書借りてごめんねー
 これからは気をつけますっ!!!…と、話は変わって。
 俺からのプレゼント!!コンサートのチケット差し上げます。
 2枚入ってるから1人じゃイヤだったら誰か誘ってね。
 絶対にその席にいろよ、1番前のすっげーいい席!!
 梓紗にばっかりサービスすっから♡ちょっと恥ずかしいけどね…≫

ルーズリーフには慧の字でたった6行の手紙。
そして、一緒に挟まっていた封筒の中にはチケットが。
あー…何だあの人。
こんなコトして…アタシをどーするつもりですか。

「あ、」

ルーズリーフの下の方に何か書かれているのを見つけた。







≪愛してるよ≫

拍手

「ねぇ、大ちゃんっ!」

どこからともなく梓紗の声。

「ん~??」
俺は自分で出した声にビックリして起きる。
声出して気づいた。
今、授業中だった。
すぐ目の前には俺の顔を覗き込む隣の席の梓紗。
すっげぇビックリしたけど…それ以前に――――。

「有岡、今、寝てただろ?」




いねむり厳禁!




先生の視線と梓紗の両手を合わせてウインクしてる姿が輝く。
起こせなくてごめん、って言いたいのが伝わってくる。
…可愛い。
あー、やべぇ。
昨日ロケで家着いたの結構遅かったからなぁ。
ついに授業中寝ちゃったか。

「ね…寝てました」
「仕事も頑張るのもいいが、しっかり授業は受けろ。罰として…」
「罰あるんですか?!」
「何だ?今日、仕事か?」
「いや…違いますけど」

…あ!今、仕事あるって言っとけばよかったかな…とかって。
どうせどっかの掃除とかだろうなぁ。
かったるいし、早めに終わらせるか。

「教室の掃除当番が掃除した後にもう1回教室を掃除しろ!
 これで目、覚めるだろー?」
「…はい?!」
「あー、あと梓紗もな」
「はい?!何でですか!!」
「お前寝てんの知ってて起こさなかっただろ?!」
「…すいません」
「有岡も1人より、2人の方がはかどるだろ?」
「そりゃ…まぁ」
「じゃぁ決まり。今日の放課後2人で教室掃除なー。はい!授業再開ー!」

と、いうように。
めちゃくちゃ遠慮がちに言った俺ですが…実は好き。
梓紗のコトがめっちゃ好きなんです。
もう先生にはかなり感謝してます。





「ねーぇ、もう掃除終わったでしょー?」
「はいはい、終わりました♪じゃぁアタシ先生に終わったって言ってくるから!」
「はぁーい」

…掃除、終わっちゃった。
まぁ俺が切り出しちゃったんだけどね。
実際掃除中は無言だったし。
んー…あ、唯一先生の重い机運んでんの見て「運ぶか?」って言ったけど、
あっさり「え、大丈夫だよ」って言われたし。
でも少しでも一緒にいられたのが嬉しかったからいっか♪

はぁ…。
深いため息をついて俺は自分の席に座る。
俺、どっちの方向向いて寝てたかなー?
あ、そっか。
目覚めたらすぐ梓紗の顔があったから梓紗の方向いて寝てたのか。
……うっわー、恥ずかしい!
あんなアホ面見せちゃったんだ。
はぁ…せめて向こう向いてれば良かった…な、ぁ…
梓紗来るの遅いなぁ…少しの間だけ休むかぁ。




結構時間経ったなぁと思い目を開けると…
そこには俺と同じ体勢で机に伏せて眠っている梓紗。
…えっと、どういうこと?理解できない。
俺は梓紗の寝顔に向かいあったまま少しだけ考えた。
そしてゆっくりと身体を起こし、辺りを見ると夕日が差し込んでいる。
時計を見ると、もう6時だ。
ああ、俺あのまま寝ちゃったのか、最悪じゃん。
梓紗は俺を起こさないでくれたのか。…ったく、優しいなぁ。

しばらく…っていっても5分くらいだけど、梓紗を見つめていた。
するとたまに「んんっ…」と寝言を発する。
それが可愛くて仕方なかった。
ずっと見ていたい…という気持ちが抑えきれなくなり、俺は梓紗の元へ行く。
そっと髪に触れてみると、サラサラと手からすり抜けて行った。
顔に髪がかかる。
俺はちょっと苦しそうだったので、少しだけ顔に触れて髪をどかそうとした…その時だった。

「だ、大ちゃん?どーした?起きたの…?」
ゆっくりと梓紗が目を覚ました。
俺は梓紗の左目尻辺りに触っていたので、バッと手を離した。
そしたらまた髪が落ちちゃった。
「う、あ!!!ごめん、顔に髪かかってたから、つい…」
「いやぁ、それはいいんだけど…、あ、いや、ありがとう…。
 ってか、今何時?…6時過ぎてるじゃんっ!!どんだけ寝てたのアタシ…」
「え、うわ、ごめん。だって俺が寝てたから…でしょ?」
「…そう!!そうなんだよ!!!職員室から戻ってきたら大ちゃんが寝てて…。
 寝顔可愛いなぁーって思ってたら、寝ちゃったのか…全部大ちゃんが悪いんだよ!!」

梓紗が物凄い勢いでしゃべる。
この人、さっきまで寝てたのか?ってくらいしゃべる。

「お、俺が全部悪いわけじゃないでしょうっ!!…って俺が悪いのか…。
 別に起こしてくれても良かったし、俺なんて置いて友達と帰っても良かったのに…」
「えーだってさあ、無理矢理起こされるのも、起きた時1人なのも嫌じゃんっ!!!」

ふはー…。
コイツはどんだけ俺を惚れさせれば気が済むんだか…。
ああ、さっき髪に触れるだけに抑えられて良かった…。
もうちょっと梓紗が起きるの遅かったら、俺…完全に奪ってた。

「そうだね、はい、ありがとう」
「何その言い方ー!!!もう、こういう日があっても1人で帰っちゃうから!!!」
「えーなんでだよ、お礼言ってんじゃんっ!!」
「…でも、大ちゃんの可愛いー寝顔見ながら寝るのも悪くなかったぜっ。
 結構寝心地が良かった…」
「…梓紗」

唇にふと柔らかく温かい感触。
俺はついに我慢できなくなり、梓紗の唇を奪った…と思っていた。
だけど俺は動いてない。
ひとつも。
机に片手を乗せて、よっかかってる姿勢のままだ。
これって…どういうこと?
目の前には、すぐ目の前には梓紗がいる。
すごく澄ましている梓紗がいる。
唇が…触れている。
俺が…奪ったんじゃない…??

ゆっくりと離れる梓紗。
俺はキスする前と全く同じ格好だ。
梓紗は真顔で俺を見つめる。
何、どうしたの、この展開は。

「大ちゃんっ♪」
「……はい」
「ごめん、キスした…」
「…俺が…?」
「違う、アタシから」
「俺が奪ったんじゃないの?俺が無理矢理奪ったんじゃないの?」
「違う、アタシが奪ったの」
「………え?」

梓紗が俺にキスした?
何それ。
はぁ?
俺がしたんじゃないの?
あー…何それ。

気付くと俺は梓紗を抱きしめていた。
次に意識が戻ったときは梓紗も俺を抱きしめ返してくれていた。
自然に離れると、梓紗は俺の目をずっと見てた。

「大ちゃん、好きなんだけど…さぁ」
「…うん」
「うんってなんだよ、……で、付き合ってくれる?」
「普通さ、告ってからキス…じゃないの?」
「え、いや、ごめん、我慢できなくて…」
「俺が好きでもない奴にキスされてずっと黙ってると思う?
 俺が好きでもない奴にキスされてから無意識に抱きしめると思う?
 俺が…さ、俺が…さぁ、もう、俺が」
「な、何?」

あー………

「俺が梓紗のコト好きじゃないと思う?」


「何その、アタシが自惚れてそうな言い方」
「俺が梓紗を好きって確信したからのキスじゃないの?」
「ち、違います!!…残念ながら…無意識です。
 大ちゃんから離れてから、やっちゃった…って思ったもん…」
「無意識?」
「うん」
「じゃぁ、俺も無意識にキスしていい?」
「えっ…」
「何?」
「無意識なのに、許可取るの?」

と言い終わった梓紗にキスをする。
唇を離した後の梓紗は異様に驚いていた。

「む、むいしき?」
「うん♪」


俺と梓紗の関係は俺の少しの居眠りから始まった。
お互いの我慢を超えた恋だった。

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