ドリーム小説
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「きもだめしいー!?」
「そっ」
アタシは今、人生の窮地に立たされている…と言っても過言ではない。
肝試しとか、お化け屋敷とか、本当に無理!
「いいじゃん、クラスで思い出作ろうよっ」
「クラスで思い出作るのは大賛成だけど…」
「じゃー決まり。全員参加決まったよー!」
「なんで、なんで思い出づくりで肝試しなわけ!?」
特にクラス替えをするわけでもなく、
誰かが転校したりするわけでもなく。
ただ単に思い出を作ろうと始まった、肝試し。
「ま、いいじゃん。梓紗は佐久間くんとペアにしてあげるし」
「そ…そ、そういう、問題じゃな…」
「えー佐久間くんは、いいよって言ってたのに…」
「う…」
「梓紗やらなかったら、佐久間くん1人になっちゃうじゃーん」
「え、えー…じゃ、じゃあ…」
「んじゃ決定ね」
「くっそう、大介め…おぼえてろ」
「佐久間くん関係ないから笑」
佐久間大介はアタシの彼氏で、同じクラス。
クラスには公表してるけど、別にそんなにイチャついてるわけでもなく。
でも休み時間に話したりはしてるよ。
「だいすけえ~」
「なに?」
「肝試し…」
「お前、オッケーしたの?」
「だって…大介と一緒にしてくれるって…」
「ははは!それでオッケーしちゃったの?」
「うん…」
「可愛いなあ」
「う、うるさい!」
大介は肝試しとか、お化け屋敷とか平気だって言う。
平気って何?!怖いもんは怖いじゃん!
大介ってば強がって~、って思ってたけど、
あの人は真面目に平気みたい、全く動じない…。
もうそんな大介が1番怖いんじゃないかってくらい。
「今からやっぱ辞めるとか言えない~」
「だって俺とペアなんでしょ?」
「…って言ってたけど」
「んじゃー、楽勝でしょっ♪」
「自分が平気だからって…」
「前だって俺がちゃんとついてたら、大丈夫だったでしょ?」
「はーい、じゃあクジ引いてねー」
肝試し当日。
夕方7時に学校集合。
学校の許可はとってるみたい…余計なことを。
「クジねえ……え?!クジ!?」
大介と一緒じゃないじゃん!
あああー、もうダメだあああああ。
「はい、最後梓紗っ」
「大介と一緒の約束じゃ…」
「そんなこと言ったっけーえ?」
「ほんっと、恨む!」
「ホントに愛し合ってるなら、一緒になれるよっ♪」
ホント他人事だと思って…あたしは大介じゃないと…。
もういーや、ごめん大介。
クラスの誰か男子に抱きついても別れないでください。
…やっぱヤダよー、大介じゃなきゃ抱きつけないし、怖いよー。
思いきってクジを引く。
「8番…」
8番の男子はー…って友達が紙を見る。
なんか大介って8番って感じじゃないしな。
「んっ、8番とこ見て」
そう言われて突き出された、表には…
「だ、だいすけえーーー!!」
あたしは感動で大介に抱きつく。
「ちょ、バカ!」
クラスでこんな堂々とイチャついたことがないから、
大介が焦ってアタシの肩を掴んで剥がす。
「クジ!クジだったのに、大介と一緒!!」
「おう、良かった良かった」
「大介じゃなかったら大介じゃない男子に抱きつくとこだった…」
「それは許せないなあ」
「良かったよ~、良かったあ~」
頭をポンポンしてもらって、落ち着いた。
でもホントにまさか一緒になれるなんて…
あたし達、愛し合ってたんだね!良かった!!
「よし、俺らの番~♪」
「…無理」
「今更そんなの逆に無理だから」
「やだー」
「はい、これでいいっしょ?」
ぎゅって手をつながれた。
んー……もう行くしかないって自分でも分かってるんだけどさ。
「じゃあ、さっさと行っちゃお!」
「おっけー♪」
脅かす人たちもいて、
あたしは歩き始めて早々、大介の腕にしがみつき。
脅かすたびに大介に何らかのアクションを起こして、
脅かし甲斐があったみたい。
「怖いよおー…」
「俺がいるから」
「大介がいても怖い!」
「大丈夫だってば」
「怖い!」
「俺が、いるから!」
「こーわーい!」
ぎゅって、抱きしめられた…んだと思う。
大介の匂いがした。
その瞬間、ふっと落ち着いて。
あー、大介に包まれてる…って思った。
「大介?」
「落ち着いた?」
「え、あ、…うん」
「俺は怖くないから、梓紗を守れる自信あるよ」
「うん」
「だから安心しなさい」
「……はい」
よしよし、って頭を撫でてくれてもっと安心した。
大介がいるから大丈夫、自分に言い聞かせた。
「あのー……」
ふと声がする。
大介…の声じゃないよな?
視線をあげると「げ」と言いたそうな大介の顔。
「抱き合ってるとこ申し訳ないんですが…
そろそろ動き始めてくれませんかね?」
そこにはクラスの男女10人くらいが棒立ちしていた。
「ちょ、いるならいるって言ってくれません?」
「だってお熱い様子だったから…」
と、言いつつもアタシを開放してくれない大介。
「大介、放してくれて大丈夫だよ?」
「えー…」
「えーって」
「ずっとこうしてるつもりだったのに…邪魔が入った」
「ちょっと、みんないるのにそういうこと言わない!」
うー…顔から火が出るってこういうことだ…。
いっつもそういうこと言わないのに、
ここぞという時に言うんだもん…ホント恥ずかしい…。
「…お互い愛を確かめ合ったところで、どーぞこっちへ♪」
「うるせー…」
その後はしっかりゴールして、そこでは盛大に茶化された。
それからの学校生活でも、今まで通りに話したりしてても
「イチャつくなー」とか「あつくね?」とか言われるようになって…。
終いには「落ち着いた?」って男子が真似するし。
「佐久間もやるよねー」
「うるさいなあ…」
「そういうキャラじゃないと思ってた」
「キャラじゃないってどーいうことだよ!」
「あ、梓紗ちゃんだよ?」
「じゃー、お前見てろよ」
「は?」
「あ、大介」
怖い顔してこっちに来る。
…あたし、なんかした?
え。
「ちょっと、何!?ここ、教室!!」
「アイツらがいつまでも茶化すから、
これからは堂々としてやろうと思って!!!」
だからって…教室の真ん中で抱きつかなくたっていいじゃんか…
あとから聞いた話。
梓紗にホントのこと言ってあげる。
本当は梓紗も佐久間くんもちゃんとクジだったの。
でも、佐久間くんが「梓紗と一緒じゃなきゃヤダ」って
言いだしてきかないもんだから…。
佐久間くんが引いたクジの番号を残して、
梓紗をクジの最後にして引かせたんだよ?
もうあんたら、本当に愛し合ってて困る…。
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