ドリーム小説
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++第1話++ ダメ教師VSスーパー中学生 ①
今でも夢だったのではないかと思う
あの時...青空なんてどこにも見えなかったのに、
彼らは言った。
「雲の上には必ず青空が広がっている」…と。
それは、まるで…
おとぎ話のような
小さな奇跡の始まりだった―――…
「17名の新入生を迎えて、新しい年がスタートします。
それでは、新しく赴任された先生を、ご紹介…致します。
、……杉先生」
「はいっ!!!」
新しく来た先生…。
うちの学校に来る先生なんていたのか。
しかも、緊張してるのか、張り切ってるのかすごく大きい声。
――――この声もいずれ聞けなくなるなぁ。
うきうき顔で檀上に上がった、杉先生。
少し溜めたかと思うと、満面の笑みへと変わった。
「みなさんっ、おはようございます!!!」
爽やかな挨拶だ。
だけど、この学校に爽やかな挨拶なんて必要ないと思う。
「はよざいます」
何人かが仕方なくボソボソと声を出しているくらいの小さな声。
もちろん、アタシは挨拶なんてしてるわけない。
……隣の秀三郎はしてたみたいだけど。
「梓紗っ、挨拶しろよ」
小声で言われたけど、アタシは横目で言った。
『タイミングつかめなかっただけ』
もちろん、嘘。こんなにウザいけど、無視できない。
アタシと秀は幼馴染だ。
別に嫌いなわけじゃないし…むしろアタシをよく理解してくれてる…
なんて本人には直接言えないけど、いい意味で尊敬する。
だからそんなアタシは常に秀と行動してる。
想像していた挨拶と違ったのか…少し躊躇ってから本題に入った。
杉先生は淡々と話を進めていた。
アタシにはなんのことだかさっぱり分からない。
だけど…すごく笑顔だったのは、分かる。
今まで、ここの学校の教師がこんな笑顔で笑ってるのを見たことがあるか、
そう聞かれたらはっきりと答える。
――――――――ない、と。
そんな杉…だっけ、杉先生は話が長い。
いつもは真面目な秀も少し落ち着かない様子だった。
アタシは暇なのに慣れてるから、どってことなかったけど。
笑顔で話してるのには嫌う理由がない…かと言って、好感が持てる訳でもない。
いわゆる…興味がない、どーでもいいってことか。
でもそんなコトより、こんな長い話されたら…貧血で倒れる人とか…
「先生ぇー、丸山さんが貧血で倒れましたー」
「ぇ…大丈夫?」
やっぱりだ。
ここの教師はやる気のない奴ばっか。
だからこんな長い話を全校の前で話すなんてことは、滅多にしない。
次は嘔吐だ。
いくら話が長いからって吐くことはないでしょ。
根性なさ過ぎだよ、それ。
一方の杉…先生は、話を巻けと高須先生に指示され戸惑っている。
「えー、ですから、手短にまとめますと頑張ります!!」
『結局はそーなるか』
「え?梓紗なんか言った?」
『え、別に言ってないよ?』
「あ、そう」
「一生懸命頑張ります!!!」
結局はみんな「頑張る」とかの一言で終わるんだよね。
何をどう頑張るのか、…まぁ興味ないけど。
そーゆう具体的なんがないと、教師としてもやってけないんじゃない?
いつも通り秀とクラスに戻ってる途中だ。
『あ、そーいえば秀』
「何?」
『何かあんた転校するみたいな噂たってたじゃん?』
「あー…そうだね。でもアレは母さんが勝手に言ってたことだし、
俺には関係ないってゆーか、無視してるってゆーか」
『へえ…んじゃ、とりあえず2年生の間は通えそうってことか』
「まあいざとなったら梓紗使っちゃうけどねっ」
『何が』
「別にっ」
2人で教室に入ると秀は自分の席へと真っ直ぐ向かっていった。
アタシは1番窓際の1番後ろの席。
秀とは結構離れている。
「あれ?え…久坂くん、転校したんじゃなかったの?」
「え?誰がそんなこと」
秀のしらけっぷりにも参るわ。
「俺!!」
振り返ると、不良気取りの3人がいた。
沢渡、楠本、美濃部の3人…まぁ主に仕切ってそうなのは沢渡だけど。
後ろの2人も従ってる…っていう雰囲気じゃない。
仲が良くているって感じかな。
「お前の母ちゃんが話してんの聞いたんだよ。
この学校はレベル低いし、どーしようもないから、
学区外の別の中学に転校させたいって」
3人が秀の机を囲むような位置に歩き始めた。
その中の楠本が秀の右に回り、肩にポンと手を置いた。
「すいませんねえ?レベル低くて。どーしようもない学校で」
「つーかだったらさ、さっさと辞めちゃえよ!!!」
「やめちゃえやめちゃえっ!!」
3人でやめろコールを始める。
周りはしらけて秀を見ていた。
くだらない、と肩を落とした秀は机で大袈裟な音をたてて立ち上がった。
「逃げんのかよ、」
沢渡は聞こえないほどの大きさの声で秀を責める。
「俺は転校なんてしない」
「嘘つけ」
「嘘じゃない、親が勝手にそー言ってるだけだ。
俺は自分の学校をどうしようもない学校だなんて思いたくない」
「カッコつけんじゃねーよ、お前のそうゆうトコがムカつくんだよっ!!!」
沢渡は秀の肩を掴んだかと思うと、思いっきり投げ飛ばした。
秀は案の定飛ばされる。
傍にいた女子たちも悲鳴をあげて逃げる。
『ちょ、沢渡っ』
アタシも思わず立ち上がった…それ程大きな声を出せていないのが現状。
起き上がった秀は沢渡を抑えようとしてる。
『ねえ秀もやめなってばっ!!ちょ、秀っ』
「梓紗あ、止めてよぉ」
女子たちに助けを求められる。
それはきっと、アタシはどっちとも会話ができるからであって…
ケンカを止めるなんてこと…試したことないし…試したくないのが本音。
でも秀と沢渡がケンカしてるのは胸糞悪い。
『沢渡ぃーっ、秀うーっ!!!』
結構大きな声出したんだけどな、聞こえないんかな、あのバカ2人はっ!!!
結局は3対1てゆう不利な立場に遭った秀はあっけない捉えられる。
机もイスもぐちゃぐちゃでこれは言い訳のしようもない。
まあ、本人達は言い訳しようなんて考えてそーにないけど。
『沢渡、その辺にしなって。秀、のびてんじゃん』
「やめなさいっやめなさいっ!!!お前ら何してんだあ!!」
…遅れて登場過ぎだろ、大声あげて杉先生が入ってきた。
もう一連の騒ぎは終わったってのに…来るの遅すぎ。
「実践訓練です」
「じっせんくんれえんっ?!?!」
「ほらぁ、最近変な奴多いでしょ?なあ?」
「なっ」
「なあっ」
うわ、言い訳しやがったよ…言い訳じゃないか、楽しんでるだけっしょ。
「…大丈夫か?」
杉先生が優しく声にかけたのにも関わらず、
さすがの秀もムカついたのか、机に若干のやつあたりをして教室を出た。
その一瞬で杉先生が秀を追いかけてった。
『秀ー?』
アタシも気になって追いかける。
秀は背が高い。アタシより15cmくらいは高いだろう。
イコール、その分足が長いわけなので歩くのが早い。
杉先生は小走りで秀を追いかけて行った。
アタシは秀がどこに行きそうなのかだいたい見当はついていたから、
そんなに急ぎはしなかったけど、杉先生が変なことをついてしまいそうだったので、
秀の背中は見えるように早歩きくらいは。
「ちょっと、ちょ、ちょっと…久坂くん、だっけ?何があったの」
「別に」
秀は話しかけられているのを遮るようにして不機嫌に答えた。
「別にじゃないだろう!!」
「先生には、関係ないことです…もう、大丈夫ですから」
ペコと小さく頭を下げて秀は1人で階段を降りて行った。
アタシはそこで秀に追いつく。
「お、梓紗、来てたの」
『うん』
「待って!!」
杉先生は走ってアタシ達よりも先に踊り場に着く。
両手を前に出して秀を止めている。
「先生は29歳だ、どー思う?」
「は?」『は?』
「この際、隣のー…橘さんだっけ、にも聞こうっ。
29歳って言ったらもう30だ。どーなのよっ」
「どーなのよ…って」
「それで先生としてデビューってどうなんだろう」
この人はアタシらに何を伝えよーとしてんだ?
「一般的に考えたら…遅いですよね」
『おおっ、真面目に答えた』
「遅れてきた新人!!!!!」
「…、、え、ええ」
『ま、そーですね』
「だよねえ?」
もうアタシらは頷くしかなかった。
それを見て一緒に頷く杉先生…と思っていたら突然微笑み始めた。
話…終了したの?!「終わり?!」『終わり?!』
「話…それで終わりですか」
『何を伝えたいのか、よく分かりません』
「だから、どうして先生は遅れてきた新人かってゆーと、
先生は教員採用試験に5回も落ちてるっ、大学は3回も落ちてるっ」
手で5と3を作ってお茶目に言っているが、これは対したことじゃないよな。
「落ちっぱなしの人生で、ダメかなーって思ってたけどなんとか合格して
先生になれたんだあ!!!」
「……で?」
「逃げださずに頑張ってよかったな、って思ってる」
その言葉を機に秀の瞳は泳いだ。
杉先生から顔をそむけてしまった。
「話、したくなったら話して。いつでもいいから…待ってる、なっ」
そう言うと満面の笑みへと変わり、ポンと秀を叩くと
降りてきた階段を戻って行った。
秀は背中を眺めるように振り向いた。
『…秀、大丈夫?』
「うん、まぁ…すごい人だね」
『うん』
*end*
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