ドリーム小説
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「俺さぁ、梓紗から名前で呼ばれた記憶がない」
「呼んでんじゃんっ!塚ちゃん♡って」
「それって、名字のあだ名じゃん!」
「えー…今さら下の名前で?…無理だよ、」
「好きとかも聞いたことない」
「それは言ったことあるよ、絶対に!」
「俺から告ってそのままな気がするもん」
そんな会話、したっけなあ。
いいよ、梓紗に名前で呼ばれなくても、
好きって言われなくても…、
一緒にいられるだけで嬉しいって思うもん。
でも、その幸せを俺は自ら…、捨てた。
「は?何言ってんの、そんな嘘…笑えない」
「嘘じゃないよ、ホント」
「あ、……アタシ置いてアメリカ行くの…?
…あ、アクロバットのため、なの?」
梓紗が泣きそうな目に弱い。
ああ…だから言いたくなかった、決心が揺らぐ。
「うん、ごめんな…」
「いっしゅーかんご…?そんなの早過ぎるよ…嫌、嘘でしょ?!
いつもみたいに、笑ってよ!!…ねえ、何で?!アタシのこと、嫌いなったの?」
「んなわけねーじゃん!!……愛してる、だけど…」
「ごめん、ごめんね…色々整理つかないや…帰るね、」
その時、予感した…もう逢うことはないんじゃないかって。
的中した…それっきり、連絡が取れなくなった。
それりゃあそうだろう。
彼氏に1週間後アメリカに行くと告げられたんだもんな。
…別れよう、そう思われてもしょーがねえよ。
結婚したいほど愛してた…、
でも俺は自分からその幸せを奪った。
出発当日、俺はその日最後の便に乗る。
一応梓紗に連絡もしてあるけど、来てくれるはずなんてない。
俺だって、期待なんてこれっぽっちも抱いてなかったし。
日時を連絡したメールの返信もなかったし。
少し気にはかかったけど、ここでうじうじして、
飛行機に乗らなかった…なんてことしたら、梓紗に申し訳ない。
大きな荷物を持ち上げて、ゲートをくぐろうとした時だった。
ふと、背後に温かいものを感じた。
懐かしい…
―――――梓紗だ、
遠くの方で梓紗が息を切らして、俺を見ていた。
「つ、塚ちゃ…、」
「あず、さ…なんでいんの?」
「み、見送りにきたに決まってんじゃんか!!」
「何で…」
「悩んだ…よ。
アタシは塚ちゃんにどう接したら1番いいのか…とか、
このまま連絡途絶えた方が塚ちゃんにとって楽かも、とか。
でも…1週間も塚ちゃんに逢わないなんてことなかったじゃん?
1回、塚ちゃんに逢わない…て自分で規制を作ったんだけど…無理だった。
気付いたら、家飛び出してたの。
もうこれから逢えなくなるよりだったら、自分のプライド捨てろ!って。
良かった、間に合って…逢えてよかった」
そう言って梓紗は泣いてくれた。
「ありがとう…、」
俺はたまらなく、梓紗を抱きしめた。
震えていた…なんで気付かなかったんだろう。
俺はちゃんと愛されてたのに。
「梓紗…俺、必ず戻ってくるから…
結婚しよう?」
「うん、待ってるよ…僚一、愛してる」
そっとキスを交わして、振り返らずに飛行機に乗った。
後ろで梓紗が泣き崩れたような気がした。
自然と涙は出なかった、
梓紗が待っててくれると思えば、どんなことも乗り越えられる。
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