17:目開けて寝言か？

 

隣の席、渡辺翔太。

 

 

 

 

「梓紗ー？」

 

「…何？」

 

「さっきからさ、俺のこと見ないように必死だよね？」

 

「…何言ってんの、別にそんなこと」

 

「今だってさりげなく俺の腹部らへん見てるし」

 

 

 

 

 

 

 

なんかコイツと目合わせらんない。

しかも、隣になってから急に。

今まで全然普通にしゃべれてたんだけどなあ…。

 

 

「なになに、最近ー!スランプですかあ？」

「最近いっつもそんな調子だよねえ」

 

真田、宮舘が来た。

翔太と仲良かった頃を知ってるから、

最近、ちょっと心配らしく話しかけてくれる。

この２人がくるとちょっと安心して、少しだけ…話せたり。

 

 

「なんか梓紗がさあ…なんなの、最近」

「…さあ？」

「なにその、いかにも分かってるのに知らないふりみたいな」

「ホントに自分はそんな、」

 

 

なんでなんだろう…

なんかもう、翔太を見るというより…会話するのも苦しい。

 

「あーもう、俺んことうざいの？嫌いなの？」

「き、嫌いなわけないけど…」

「…若干うざいんでしょ」

「う、ざくない…よ」

「うわー、それうざいって言ってるようなもんだよ？」

「翔太、終了ー！」

「はあー？もういいよ！俺は向こう行くし！」

 

 

翔太行っちゃった。

行っちゃうと、何か少し楽になるというか、なんというか。

あれ？あたし翔太のこと嫌いなのかな？

…ん？嫌いな、はずは…ないつもりなんだけど…。

 

 

 

 

「何？真面目に」

 

宮舘に聞かれた。

そんなのあたしが分かんないよ、て言ったら

 

「ホントに？」

「何で？なんで最近おかしいの？まじで嫌いなの？」

「嫌いじゃないし」

「えー、じゃあおかしくなったきっかけは？」

「…きっかけ…、なんか見れないんだってば、会話も苦しい。

　気付いたら前みたいに話せないし…ホント最近、隣になってからだよ?!

　翔太が近くにいると、早く誰か来てほしいの。

　別に翔太にどっかに行って欲しいわけじゃなくて、誰か来てほしくて…」

 

それを話すと、２人は少しほほえんだ。

で、「ちょっと待って」と言って少し離れたとこで話しだした。

すると、さっきよりニヤついた顔で戻ってくる。

 

「梓紗、今から言うこと…ちゃんと聞いてね？」

「は？」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたは、渡辺翔太のことが好きなんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目開けて寝言か？この人たち。

 

 

 

 

 

「な、何言ってんの？」

「だから、それは好きだから緊張してんの!…分かった？」

「分かった…って、それって気付かないもんなの？」

「まあ…突然訪れすぎるとそんなこともあるかと」

「宮舘さん、素晴らしい見解です」

 

 

２人でうなずき、ニヤつきながら、あたしに説明してくる。

 

 

 

あたしが、翔太を…好き？

 

 

 

 

 

 

「う、うっそ！」

「お、自覚を始めましたよ」

「一気に表情が変わりましたね」

「まってまって！何それ、ふざけてる？」

「いやー、ふざけてんのはそっちでしょ！」

「そろそろ自覚もってこーぜ！」

「ええええええ」

 

 

 

 

 

 

 

あ、あたしは翔太を好きなの…か。

だから、緊張して話せないのか。

なんで気付かないの！

…あの２人に気づかされるなんて…恥ずかしい。

 

 

でも、そうなのか…それだったら、何か…納得。

あー…好きって気付くとき、こんな感じだっけ？

 

 

「あたしは…翔太が好きなのか…」

 

 

 

ポツリと呟いたら、２人が「うんうん」と頷いた。

「だいじょーぶ、アイツには黙っとくから…協力するよ？」

宮舘が言ってくれたけど、協力はいーや…今まで通りで。って、

なんか可愛くないことを返してしまったような…。

 

 

 

 

あ、でもこれで翔太と話せるかもしれない。

 

なんか…もやもやがなくなって、いいかも。

 

 

 

あたしは翔太が好きなんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱ梓紗は翔太好きだったねー」

「ホントに両想いとは…アイツら…」

「まっ、あとは翔太に告らせるだけだなー」

「いや絶対アイツ告んないよ？今のままでいいしーって」

「そこをなんとかすんのが俺らの役目ー♪」

 

 

「んじゃー、頑張っちゃいますか」