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ドリーム小説
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薮くん小説


あーあ、アタシみたいなのがサボったって授業なんも変わんないしー。


いっつもそんなコト思ったって、授業サボったりしなかった。
そりゃあ、少しは居眠りしたり、メールしたりして遊んだことはあるよ?
だけどアタシにはサボるまでの勇気がなくて…。


「ヤバい、こーいうのをサボりってゆーんだよね?」






アタシは、5校時目真っ最中の、今、屋上で、しゃがんでます。









授業中の屋上で









いつも友達とお昼を食べているアタシ。
今日は友達が欠席で、久しぶりに1人でお弁当。
いつもは学食でお弁当を食べてたんだけど、今日は屋上で食べてみた。
風が気持ちいし、周りに人がいなくて静かだし。
すごく居心地が良かった……のはよかったんだけど。


「ヤバい、寝過ごしたっ!!!」

いつも独り言は控えているアタシの声が屋上に響いた。
お昼を食べた後、寝っ転がって空を見るなんて青春臭いことしてたら
寝ちゃったみたいで、気付いた時にはもう5校時も半分を過ぎようとしていた。

急いで立ち上がった後に、【今更授業戻ったって意味無いって】。
アタシの頭に響き渡ったアタシの声。
確か得意な英語だったし、1回サボったくらいじゃ変わんないって。
アタシはまた座りなおした。


ふう…と小さなため息をつき、もう1度座りなおしたその時だった。


「あ…梓紗」


振り返ったら、そこにいたのは同じクラスの薮宏太。
少し汗の混じってる顔で呆然としていた。

「あ、薮くん…優等生が何してんの、今英語やってんじゃないっけ?」
「それは、こっちのセリフでしょ」
「え?」
「毎回毎回真面目に授業出てんのに、今日どうしたの?」

ちょっとドキっとした。
違う、ただ単に【誰かが自分のいないことに気づいてくれた】から。
自分がいなくても変わらないって思ってたからだよ。
何かが変わったってわけじゃないけど。

「いやぁ、友達も学校休んじゃってるし、久しぶりにお弁当屋上で食べようかと思ったら、
 寝過ごしちゃっててさ。授業始まってたし…もういいやぁーみたいな。
 でも授業サボるってさ、最初はちょっと抵抗あったんだけど、
 少し経ってみちゃうと、たまには息抜き出来ていいかなぁーとか思っちゃったり」
「へぇー、実は俺もサボるの初めてなんだよね」
「そうだと思う」

アタシの座ってる後ろのフェンスに寄りかかるように薮くんは立った。
アタシは少し上を向いて言った。

「え、何それ」
「だって薮くんはアタシ以上に真面目そーに黒板見てるのこの間見つけたんだ」
「ふーん…」

アタシは薮くんの隣にそっと立った。
そっからは少しだけ沈黙が流れた。
風と雲が流れるのをそっと見てた。
チラリと横を見ると、空を眺めてる薮くんが少しカッコよくみえた。
髪が風に少しなびいていたから?
隣で見る薮くんはアタシより全然背が高いのに気付いたから?
今までこんなに近くになったことないから?
自分ってちょっと単純な女なんだなって思った。

「な、何?どーかした?」

アタシが見てたのが薮くんにバレて、ちょっと恥ずかしかった。

「え、いや、なんでもない」

すると、さっきよりも少し長い沈黙が流れた。
ああ、アタシのせいだ。

「ねぇ」

突然口を開いた薮くん。

「ごめん、嘘ついた」
「え?」

「俺さ、サボった…てーばサボったんだけどさ…」
「な、何?」

薮くんは何か言いにくそうに言った。






「梓紗がいない授業はつまんないからさ、捜しに来たんだよ」




「…はい?!」

「いや、だから、多分黒板を真面目に見てたってゆーのは…」
「な、何よ」



「梓紗を見てたんだと思う。
 梓紗が振り返ったから、パッて黒板に目線変えただけなんだと…」

「いやいやいやいや……それってどーいう意味?」


薮くんからの突然言葉に驚くことしかできなかった。
え?何?
それって…もしかして…




「あー…こーいうのを鈍感っていうんだ…
 つか、ホントは分かってんじゃないの…あー…もう








 好きなんだってば、梓紗のコト」







「アタシも」











アタシ、なんて言った?

勢いてゆーのか、こーいうの。

でも、何か違うよ、ていうか何でアタシは黒板を真面目に見てる薮くん知ってるんだよ。

あーあ、そーいうコトなのかなぁ。




「は?今なんつった?」


「いや、アタシも好きなんだと思う。…薮くんのコト」

「ま、マヂで?!」
「うん…」
「うっそ、やった、え、付き合ってくれんの?!」
「うん…、」


「うっわ、マヂやったぁ!!!ホントだよな?嘘じゃないよな?!」
「うん」




アタシはぎゅーっと薮くんに抱きしめられた。

全然嫌じゃなかった。




むしろ、1人の屋上よりも何億倍も居心地が良かった。

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