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ドリーム小説
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山田くん小説

 



チャイムが鳴ってからすでに5分は経っている。
アタシはまだ1階の理科室。
次の授業は体育なのに…着替える時間がない…。


「先生ー、次体育なんですけどー、戻っちゃダメですかー?」
「え、そういうことは早く言え!この問題保留にしてやるから
 家でやってこい!早く行け!」
「え、あ、すいません、ありがとうございました!!」


教室に戻ると、もうみんな体育館に向かってて、
早絵だけが待っていた。

「ごめんー!」
「問題解けたの?」
「ううん、体育だって言ったら、早く戻れって言われた」
「あーマヂで?今から着替えるんでしょ?待ってればいい?」
「えっ!いいよ、先に行ってて?」
「あーそう?じゃぁ、先に行ってるね!遅れすぎるなよっ!」

アタシは、はいはい、と言ってドアを閉めて手を振る早絵を見送った。
先に行ってていいって言ったけど、ちょっと寂しいかな。
体育着を出している時点でチャイムが鳴った。
授業の始まりのチャイム。

アタシが完全に体育着を出し終わり、着替えに取り掛かろうとした時。


ガラッ



「あ、悪ぃ!…梓紗?」
「え、別にまだ着替えてないし、大丈夫」

同じクラスの涼介が入ってきた。
実はアタシの好きな人。
おちょくってるのか心配してるのか分かんないけど、
毎回毎回アタシに世話を焼いてくる。
そんな涼介に惚れちゃったりした。

「何?忘れもの?」
「うん、ファイル持ってくの忘れちゃって…取っていい?」
「あ、全然いいよ。ファイルなんて使わないじゃーん、マメだね」
「豆?!」
「マメだってば」
「ああ、マメね。お前、俺のコト豆とか言った日にはどうなるか分かってるか?笑」
「何それ」

涼介はアタシとそんなに背は変わらない。
涼介の方が1.2cm大きいくらい。
とは言っても涼介がチッチャイって訳でも、
アタシが特別大きいって訳でもないかな。
まぁどっちも平均以上平均以下なんだけど…。

「お前は?何?」
「理科の問題解けなくて、さっき教室に戻ってきた」
「マヂで?アレ解けないの?!教えてあげよっか?」
「えーもう分かるって、家でやるしっ!!」
「あーはいはい、あんまし遅れんなよ、じゃな」


涼介が出て行って5分くらいで教室を出た。
急いで行ったけどやっぱり授業は始まっていた。

「先生、前の授業が長引いて、遅れました」
「次からは気をつけろよ、準備体操して、ゲームに混ざれ」
「・・・はい」

見ると、今日はバスケみたい。
男子は体育館の狭いスペースでサッカーやってる。
涼介の上手なリフティングが見える。
そういえばリフティング得意って言ってたっけな。

アタシは腕を伸ばし始めたトコで涼介がアタシに気付く。



準備体操はしっかりと




「あれっ?今来たの?とっくに来てるかと思ってた…」
「ごめんなさいね、着替えるのが遅くてっ」
「別に怒ってねーだろ?ちゃんと準備体操してから混ざれよ。
 お前に限ってケガするとかないと思うけどっ♪じゃなっ」
「あんたはリフティングやってればいーの!」

はぁ・・・。
こんな会話が楽しくて仕方ない。
ホントはもっと話してたいけど、感づかれちゃうからね。
リフティング、上手いなぁ…。
涼介をチラチラ見てると、体操が不十分のうちに早絵に話しかけられる。


「梓紗ーっ!ちょっとー今来たのー?」
「うん」
「遅いよーっ!梓紗がいないとウチらのチームボロ負けだよ」

アタシは体育苦手じゃないけど、着替えが遅くて
毎回のように授業に遅刻してる。
その度に体操を1人でやってる。
でも必ず体操を最後までやらないうちに早絵に話しかけられるんだけどね。


「え、もうちょっと待って」
「えー、お願いっ!今回だけっ、ね?」
「・・・じゃぁ仕方ないかぁ(大丈夫だよね)」



ゲームが始まり、ボールがアタシに回ってくる。
「梓紗、パス!」
「はいよー」

ドリブルをする。
走る。










・・・・・――――痛ッ







足、つったのかな。
思うように動かない。
まだ動かせるし、まだ大丈夫か。
…でも長時間はキツいな、ここからゴール打てるか?


アタシは思いっきりジャンプしてボールを投げる。
ゴンッという音がしてボールがゴールする。


アタシはよしっという思いと、
足が痛いのでバランスが取れなくなりその場に倒れる。

「梓紗ー?大丈夫?気合い入り過ぎーっ笑!」
「立てるー?梓紗カッコよかったよー!」

バランス崩しただけだろう、そう思って立ち上がろうとした。


カクンッ



・・・立てない。
気付かなかった足の痛みが増す。
何これ、捻挫?


「え、梓紗大丈夫?」
「平気平気!なんでもないよ、力入らなかっただけ」

そう誤魔化してもう1回立とうと試みる。

カクンッ


「・・・あれ?」


途惑ってるアタシはキョロキョロと見回した。
どうしよう、立てない。
体育の授業を台無しにしちゃう。

・・・・涼介と目が合う。



涼介はハッと気づいたような顔をして、こっちに向かってくる。
何?怒られる?嫌われる?
それなら来ないで。見ないふりして。


「梓紗、どうした?!」
「いやー、ちょっと力入らなくて」

立とうとする。
でも立てない。
立てずに涼介の足もとにしゃがみ込む。

「無理すんな、足痛ぇんだろ?」
「・・・ちょっとね」
「貸してみ」

涼介がアタシの足に触れる。
アタシの足はちょっと腫れてるみたい。
そこを涼介がそっと押す。


「痛いっ痛い痛い!」
「・・・ちょっとじゃないじゃん」
「…ごめん」
「保健室」
「あ、うん、じゃぁありがと、行ってくる」
「歩けないでしょ?」
「へ?」


涼介の腕に包まれる。


「えっ、大丈夫歩ける!」
「立てない奴がどうやって歩くの?」

涼介にお姫様抱っこされてる。
こんなに嬉しいことない、でも…ちょっと恥ずかしい。
みんなめっちゃ見てる。
でも、いいや。嬉しい方が勝ってる。

「先生ー、コイツ足くじいてんので保健室連れて行きますー!」
「お、頼んだぞ」
「はーい」

そう言った涼介は満面の笑み。
アタシの痛みをあざわらってんのか?
憎たらしいほどカッコいい。
周りの女子がキャアキャア言ってる。
男子はなぜか赤くなる。
そんなに背が変わらないこいつ、なんでアタシのコト運べるの?

「豆のくせして何でアタシ運べんのよ」
「バーカ、男ナメないでくださーい」
「男って…」

涼介の口から男って出たことにちょっとドキっとした。
顔を上げればすぐそこに涼介の顔。
真っすぐ前見てちょっと笑ってる。







今すぐ言いたくなった。








「涼介」
「何」




「好き」

「・・・は?」
「好き」
「何言ってるの」
「好き」
「待って、よくわかんな「好き」」

涼介の胸に顔をうずめて話してたから顔が見れなかった。

「梓紗」

恥ずかしくて見れない。

「梓紗、顔あげて」

きっとアタシ顔真っ赤だろうなって思いながらゆっくりと顔を上げた。
涼介のキリッとした顔が見えた。

「何?」
「梓紗」
「?」
「好き」
「・・・え?」
「好きなの」
「え、どういうこと「好きなの」」

え?
涼介がアタシを好き?
何の話?

「さっきの俺の状態」
「何言ってんの?」
「さっきの俺と絶対同じ顔してる」
「えー涼介と同じ顔なんてヤダよ」
「バカ、ちげーよ、そうじゃなくて」

ヤバい、何これ。
すっごい嬉しい。
顔がニヤけるのを必死で我慢する。
涼介のちょっと赤くなった顔が愛おしい。

「ねえ」
「何?」
「アタシも好きだよ」
「・・・それ、さっき聞いたよ」
「照れてるの?顔赤いよ」
「バッ、照れるとかの問題じゃないよ!もうヤバい!!」

赤くなる涼介。
抱きしめられてばかりじゃ嫌になり、抱きしめた。
アタシは大きく体を動かして、涼介に抱きつく。


「ばっか、あんま動くなって。落ちるぞ!」
「いいもん、涼介助けてくれるもーんっ」
「調子いいな、ったく。絶対助けないもんね」
「またまた~・・・うっわっっ…」


バランスを崩して落ちそうになるアタシ。
でも…涼介が助けてくれた。


「助けてくれたじゃん」
「今のは偶然」
「ホント?」
「…嘘」






真っ赤になる涼介。
こんな涼介が愛しくてたまらない。
あの時、言って良かった。








「涼介」













「何?」













「好き」
























「・・・分かったって///」








足の痛みなんてもう知らない。

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