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ドリーム小説
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++第1話++ ダメ教師VSスーパー中学生 ④

先生の行方が気になったアタシ達は、学校に向かった。
それに、秀はバックを持ってきてない様子だったから、どっちみち…ね。
職員室に姿が見えなかったので、教室に行ってみた…居た。
小さな段ボール箱を持っている。
まさか…辞めるつもり…

「先生、それでいいの?…約束したよね?頑張るって」
『先生…何か言ってよっ!』
先生は何も言わない。
「…なんとか言えよ!!!」
先生は何も言わない…ただどこか1点を見ているだけだった。
秀の顔もアタシの顔も見ない。
秀は呆れて先生を通り過ぎ、自分の席のバックに手をかけた。
「俺…1人でも頑張るから。
 この学校が変わるって、信じて。
 逃げないで頑張るから」
先生はそこで秀の方を向いた。
でもその瞬間に秀は先生から目を逸らした。
そして先生の顔には目もくれずに、アタシの手を引っ張り教室を出た。

学校を出て、初めての無言下校。
秀はさっきから落ち着かない様子で早歩きになっていた。
ついて行くのが精いっぱいだったアタシに気を遣って時折スピードを緩めていた。
でもアタシは秀の隣に歩くのを遠慮してた。
…多分、泣き顔を見られたくないと思うから。
「梓紗…」
秀が突然口を開いた。
何を言われそうなのか、感づいていたのでアタシが先に切る。
『あ、アタシさぁ今日用事あんの忘れてたっ。ごめん、先、帰ってもいい?』
秀はその時初めて鼻をすすった。
「うん……ごめん、ありがと」
『何のことだか』
ポンと背中を叩いて、秀を振り返らずに走って追い越した。
 
秀を気遣ったはいいものの、今日は親が帰るのが遅く、
こんな時間じゃ塾に行っても意味がない。
仕方なく橋で時間をつぶすことにした。
すると…橋の下のベンチに…
いや、秀と杉先生が春に話していたあのベンチに、秀が1人座っていた。
俯きながら、手を組んで……泣いていた。
アタシは何も見てない。
…家に帰ろう、今日は用事があるんだから。

次の日、秀は普通にアタシを迎えに来てくれた。
おはよう、そう言葉を交わした後は何となくお互い会話を避けた。
橋を渡るとき、どうしても昨日秀が座っていたベンチが気になった。
見てみると、当たり前に誰も座ってはいなかった。
次に秀を見ると、秀も同じようにベンチを見ていた。
「ん?」
アタシの視線に気づいた秀は小さな声で聞いた。
『え、いや…なんでもない、よ』
「そか」
そっからは、また会話が無かった。
…秀との会話が無いって、今まで無かったけど…気まずさはなかった。

学校に着くと、ゴミだらけの校庭が広がっていた。
ひび割れだらけの校舎。そんなことを考えていたら足が止まった。
…前方に秀の姿が見えなかったから、秀も隣で足を止めたんだろう。
2人並んで校舎を黙って見つめていた。
 
「おはよう!!!!」

ああ、杉先生が始業式でしていた挨拶が聞こえた。
だけどハッと我に返り、今の声は杉先生だと確信した。
振り返ってみると、そこには春の頃に浮かべていた笑顔をした杉先生の姿があった。
秀はドンドン笑顔へと変わり、終いには「先生!!!」と走って行ってしまった。
アタシはその秀の後姿を見ていた。
「おはよう」と笑顔で呟いた先生。
昨日までとは違う、大きくて元気な挨拶だった。
「おはようございます」
「はよっ」
アタシの歩いて2人の元へと向かった。
「統一テスト、うちのクラスだけでも受けられるように学校に頼んでみてみる」
それを聞いた秀は涙声で「頑張ってよ」とだけ言った。
「うっせ」杉先生は笑顔で答えた。
『ははっ、秀』
「うぅ、なんだよ梓紗」
「なんだよ、ほら行くぞっ」

その後のHRでは、ウチのクラスだけ急きょ統一テストが決まったとの報告があった。
秀はこっちを笑顔で振り向いてきた。
アタシは満面の笑みでピースを返した。
と思ったら楠本が突然立ち上がって教室を出ようとした。
「楠本!!!…座れ」大人しく座る楠本。先生…注意してる。

「…みんなにこれだけは言われてください。
 この学校はなくなってしまうかもしれない…、
 でも何があっても!!…俺はみんなのことを全力で受け止める!!
 だから先生を信じてほしい」

そう言って笑顔になった先生を見て、秀も笑顔だった。
その秀の笑顔を見たアタシも笑顔になった。
でもまぁ…再生してくれた3人は、入江くんの笑顔以外、
なんともいえないような顔をしていた。
 
『あ、秀っ、うち今日塾だから先行くねっ!!』
「はっ、補習だろ。いっつも塾で早く帰るなんて見たことねーもん」
『う、うっさいっ!!』
アタシは出席日数が足りないとかでテストを受けることになった。
5教科、1教科30分のテストを全て受け、帰ろうと思い外に出たら真っ暗だった。
『あ、松尾先生…?』
いつもの橋を渡ろうと思っていたら松尾先生…に似てる人を見かけた。
暗くてよくわからなかったけど。
遠目で少し観察してみた。
すると柵の外に腕を伸ばし、その次にはポチャンという音が聞こえた。
何か…落としたのかな。
そしてすぐに歩きだしていった。
アタシはその松尾先生だと思われる人の立っていた場所へと行き、
そーっと橋の下を覗いて見た…が、やっぱり暗くて何も見えなかった。

今日は統一テストの日だ。
秀と「テスト今日だねー」とかって話しながら玄関まで来た。
すると、生徒玄関にも関わらず杉先生が走って出てきた。
「え、先生、先生っ?!」
『な、どうしたんですか』
「ちょっと、アパート行ってくる!!」
『アパート?!?!』
「え、いやいやテストは?!」
「そう、テスト!!そのテストには鍵が必要で、その鍵がアパートに…あああっ!!
 絶対戻ってくるから!!!!」
『わ、忘れたの?!』
「ちょっと……え?」
そう言って杉先生は全力疾走で校門を出た。

…テストの20分前。先生はまだ来ていないみたいだった。
アタシと秀は何故いないのか事情を知っているだけに不安だった。
「大変大変!!!」
まなみと沙莉が勢いよく入ってきた。
「…試験、中止かも」
「…なんでよ」
「杉先生、テストが入ったロッカーの鍵、忘れたんだって」
それを聞いた沢渡3人達の標的は…秀だ。
「なんだよそれぇ、ダメじゃんっ!!」
「間に合いまっせんっっ!!」
「だぁっせーっ?」
バンッと机を叩いて教室を出て行ってしまった。
「おーい、久坂クンっ?どこ行くのー?!笑」
沢渡のうざったい声が響いた。
『今のは、秀、関係ないと思うよ?』
そう言ってアタシは秀を追いかけた
。教室を出て廊下をそそくさと歩いて行く秀を教室の入り口で眺めた。
廊下ではあの3人が壁に寄っかかっていた。
秀の歩いて行く姿を見て、「無様だ」と呟いた高杉くん。
 
「橘…さんだっけか」
入江くんに声をかけられた、『何?』とだけ返事をした。
「君も一緒に来てみる?おもしろいことが起こると思うけど…」
『おもしろいことっていうのは、』
「おい、入江…何する気だ」
「いいじゃんっ、いいじゃんっ、橘さんも来てみなよ」
そう言われるがままに入江くんと吉田くんに連れられた。

学校を出て、乗せられたのは…ヘリ?!
上空にヘリが来てる、そこから垂れ下がるハシゴ。
「俺は乗るけど…君、乗ってみる?」
『へっ…!?ヘリに?!』
「おお、高杉から誘うなんて珍しいっ」
「高杉くん、今日は機嫌いい日だね」
「うるさいな」
『え、ちょっと、待って、話がよく…なんでヘリに乗るの?!』
「ま、そのうち分かるよっ。高杉が誘ってんだから早く乗りなよ」
『な、何それ!!2人は?!乗らないの?』
「俺らは別の作業があるからね」
「空の旅、楽しんでおいでよ」
ヘリは段々地上へと近づいてきて、ハシゴを2,3段登れば乗れる距離だった。
高杉くんとアタシはヘリに乗りこみ、入江くんと吉田くんに大きく手を振られた。
 
空高くへと飛び立ったヘリ。
中にはアタシと高杉くん、操縦士さんの3人だった。
高杉くんは慣れた手つきでヘッドフォンと通信機をかぶり、イスへと座る。
『…で、ヘリで何をするの』
「簡単に言えば、杉先生を乗せて学校まで送る」
『へぇっ!!助けてあげるんだ』
「あまりに無様過ぎて見ていられないよ、あんなの」
『ダメ教師…って?』
アタシが少し笑いながら言ったら、高杉くんは片方の口角だけ上げて、
「まぁ…そんなところですかね」と言った。
初めて冷たい顔以外を見たからだと思う、少し心が揺れた。

少し機体に揺られたかと思うと「居た」と呟いて、ドアを全開にした。
下を覗くとそこには転んだのか、倒れている杉先生がいた。
『うわっぁ』
「落ちないでよ」
そして先ほども垂れてきていたハシゴを杉先生の元へと垂らす。
しばらく杉先生と高杉くんが見つめ合っている。
杉先生はヘリから自分のクラスの生徒が見えたことに驚きを隠せないでいた。
「乗って!!!!」
ヘリの機械音に負けないくらいの大声を出して、杉先生に指示をした。
杉先生は少しためらったかと思うと、聞こえなかったけど驚きの声を漏らしてるように見えた。
そしてすぐに杉先生はハシゴを昇り始めた。
ヘリに乗りこんだ先生が発した言葉は「なんで2人が一緒にいるの?!」だった。
『分かりません』
アタシは苦笑で答えた。

学校付近まで来た。
校庭に着陸するつもり?!…でもそんなことしたら全校中の騒ぎだ。
下手でもそんな真似はしないと3人の常識を信じていた。
すると、校庭横の草原の荒れ地に大きな緑の機械と2人の人が見えた。
あ、機械を操縦してるのは入江くんと吉田くん?!
となると、横で見ているのは秀だ!!…もう1人、滝先生?
「先生、飛び降ります。じゃないと学校にはつけません!これを来てください」
「ええええ?!」
「パラシュートです!!早くつけてください!!」
「ええええ?!」
とは言いながらも正直に必需用具をとりつけていた。
そして外を眺めて、ひるむ先生…そりゃあそうだろう。
アタシだって普通に降ろしてくれるもんだと思ってたし。
「早く跳び下りてください!!!」
「…ありえないって……絶対ありえないって!!!」
「あなた言ったよね?何があっても受け止めるって…」
冷たいまなざしじゃない、力強いまなざしを受けた杉先生。
それで決心がついたのか、身体を放り出そうとしていた。
「無理―――っ!!!」
と高杉くんの期待を裏切った。
『ちょ、先生っ!』
「これだけは受け止めきれないよおっ」
呆れた高杉くんは「やはり無様だ」と呟いた。
その瞬間、高杉くんは思いっきり杉先生を突き飛ばした。

『ちょ、高杉くん?!大丈夫なの?!』
杉先生は奇声をあげて落ちて行った。
「大丈夫、自動性のパラシュートだから」
『そうことじゃなくてさぁ』
と会話をしながら、先程杉先生がつけていた用具を自分にも取り付けている高杉くん。
アタシは目を見張った。
『えええ、嘘、まさか、はぁ?!』
「そう、そのまさか」
『アタシも?!』
「当たり前でしょ、でも君は俺が抱いてくからつけなくていいよ」
『な何それ?!』
「はい、俺らが離れないようにこれ」
渡されたのは1本のロープ。
『これだけ?!』
「充分だから」
高杉くんとアタシの腰にロープを巻きつけた。
巻き付け方があまりに早いというか…適当というか。
これだけじゃ不安…とゆうのより、近すぎる。
そしてグイッと引っ張られ姫抱っこをされたかと思うと、何の躊躇いもなく飛び降りた。
『ちょ、嘘、何か言ってよ!!!』
「あまり騒ぐと離すよ」
『…すいません』
たった何秒かの高杉くんの腕の中は、それ程居心地が悪いわけじゃなかった。

杉先生着陸後、すぐ何分かでアタシ達も静かに着陸した。
「あ、梓紗?!」
「お、一緒に降りて来たんだ」
「高杉くん、珍しいね」
軽快なステップで降り立ったかと思えば、すぐにパラシュートをはずし、
アタシと高杉くんを繋ぐロープもすぐに取った。
こんな簡単につけられてたのか…。
そして、親指を突き立てて、行くぞ、の合図をしたら秀は頷いて走った。
アタシは空中浮遊でバランスが取れなくなり、座ってしまった。
「まったく…」
そう言って高杉くんが肩を貸してくれた。
「あ、梓紗、大丈夫?」
「君の彼女だろ、責任もって連れてって」
「彼女……じゃないけど」
酔ったのか力は抜けたのかしゃがみこんだアタシに、秀は肩をかしてくれた。

教室に入ると、全員に注目を浴びた。
「梓紗?!ちょ、久坂何やってんの?!」
「お、俺は別に何もしてないよ…た、高杉が」
「早く座ろう、テストが始まる」
入江くんがみんなを静めた。
「え、だって先生がロッカーの鍵を…」
「ああ、それなら問題ないよ」
そう微笑んだ高杉くんは優しかった。
 
テストは無事に終わり、みんながガヤガヤ騒いでいる。
アタシはさっきの着陸の場所が気になって、校舎を出た。
草をかきわけて入った円状の着陸場所には、誰か居た。
『あ、滝先生…』
「お、橘さんっ。さっきはお疲れ」
『あ…あぁ、はい』
「信じられないよね」
『はい』

今でも夢だったのではないかと思う

あの時...青空なんてどこにも見えなかったのに、
 

その後、急いで教室へ戻ろうとしていたら、秀は玄関に居た。
「あ、梓紗いたいた。はい、バック、持って来たよ」
『嘘、ありがとうっ』
チラリと後ろを見ると、あの3人と一緒だった。
『さ、先程はどうも』
「何改まっちゃってんの?」
笑いながら入江くんが言った。
「別に、」
そっぽを向いて返事をしてくれた高杉くん。

校舎を出て、グラウンドを5人で歩く。
「君達は…誰なの?」
「…この学校を変えるために来た」
「え?」
アタシは職員室での会話を聞いていたので、サラリと流した。
「頑張れば夢は叶う」
「叶うと思う?」
吉田くんの投げかけに全員が自然と足を止めた。
 
「雲の上には青空が広がっているんだ」

そう呟いた高杉くん。
アタシ達は空を見上げる。
そこには、悲しいほどに鮮やかな青空があった。
秀が校舎の方を振り向いた。
アタシも気になって振り向いたら、みんなが校舎を眺めた。
それと同時に夕日が射し、校舎はオレンジ色に染まった。
 

それは、まるで…
 
おとぎ話のような  

小さな奇跡の始まりだった―――…


*END*

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