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ドリーム小説
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*第1話*~実践開始!戦慄の死の予言!死体消滅の謎を追え ③

先生は、アタシ達のコトを少し分かってくれたのか、
校舎の外で歩きながら話してくれた。
「西村静香って子はね、今年の新人ミステリー大賞を受賞した…天才作家だったの。
 ミステリーの若きカリスマと賞賛されてね、彼女のもとには次回作の依頼が殺到したわ。
 ただ、彼女ちょっと傲慢なところがあってね 文芸部の中でもいつも女王様気取りだった。
 特に岡田さん達は、資料探しやネタ集めにいいように使われてた」
「…つまり、その3人には、西村さんを殺す理由があったってことですか?」
キュウが言うと、先生は少し怒り気味で言う。
「バカなこと言わないでちょうだい。
 そんなことで人を殺すなんて…それにこれは私の思い過ごしかもしれないし、
 あの子達から相談を受けたわけでもないんだから」
「…そうやって、いつも知らんぷりしてたんですか」
『メグ…?』
メグが突然口を開いた。
先生は驚いている。
「学校の先生なんてみんなそう。自分の身を守るためならどんな詭弁だって言えるし、
 生徒の心だって踏みにじれる。先生に守ってもらえなかった生徒がどんな想いで
 いるかなんて考えたことないでしょ!!」
先生は目を泳がせ少し挙動不審になる。
それを見たかと思うと、メグは突然歩き出す。
『メグ?!どうしたの!』
「あっ、ちょ、待っ…すいません!ちょ、メグ!!」

「急にどうしたの、」
「…、あの先生があんまり無責任だったから、ちょっと意地悪してあげたかっただけ。
 それだよ。それより、西村静香のノートのコピー手に入れなきゃっ!」
メグはちょっと笑いながら言った。
少し不安はあるけど、いつも通りになってくれたみたいでよかった。

メグは「ごめん、寄るトコあるから先行っててっ!」で、
キュウは、「僕は疲れたから、ミッションルームに戻るよ、梓紗は?」
『アタシは…。アタシも寄るトコあるから、じゃぁ、後でねっ!』。

密室殺人の事件。
まだひっかかるトコがいっぱいある。
もう1回事件現場に戻って色々調べてみよう…。
事件が起こった部屋につながるドアの前まで何とかたどり着く。
…誰かの声がする。
聞いたことのある声。…リュウだ。

『こんなところで何している、ここは立ち入り禁止ですよ』
「…!」
ハッと後ろを振り返るリュウ。
声をかけた人物がアタシだと分かると、ホッとした顔になる。
「梓紗か、ビックリさせんなよ、ていうか何その格好」
アタシは着替えないで真っすぐ来たから制服のまま。
うっわー、ちょっと恥ずかしいな。
『えっと…キュウとメグと潜入調査で高校行ったの。
 その帰りだったからそのまま来ちゃって、この格好』
「ふぅ~ん…」
『ていうか、リュウもこういうのに引っ掛かるんだぁ~?』
「…うるさいなぁ、ボイスレコーダーに声入っちゃったよ」
『ごめんごめん、もう1回取り直しだねっ』
「はぁ…」
迷惑そうにしてるけど、ちょっと笑ってるリュウ。
こんな顔、他の人にはあんまり見せてないからアタシだけの特権。
「今度は黙っててね?変な声出したらダメだよ」
『分かってるって。それより、何か分かった?』
「いや、まだ。今来たばっかりだったし」
『そっか』
「じゃぁ、録音するからね」
『はい、』
「…事件当時、外につながるドアも閉まっていた。出入り口には10cm程の穴」
リュウはそこまでいうと、しゃがんでいたのを立ち上がって部屋の中に入る。
アタシも置いてかれないようについて行く。
「部屋は蒸し暑く、日中は40度を超えると推測される」

リュウは辺りを見回したと思うとポケットに手を入れた。
その時にリュウのポケットから追跡マーカーの粒が転がり落ちる。
『あああ』
「あ、梓紗しゃべった」
『え、ごめん。てか拾わなくていいの?』
「ま、もう撮ってないしいっか。拾うの大変だね、これは…ちょっと待って、拾わないで」
『ん?』
アタシは転がる追跡マーカーを眺める…。
でも、いつまで経っても転がりが止まらない。
「まさか、この並び…」
あ、そっか。そういうコトか。
リュウは粒が転がって行った先の部屋を床近くの壁の穴から除く。
「そういうことか」リュウが呟く。
密室のトリックはこうやって出来たんだ。

『…ん?!』
突然誰かに布で口を塞がれる。
今までこの人の気配に気づかなかったなんて…うかつだった。
アタシはその手から逃れようと必死で抵抗するけど、無理だった。
「梓紗?!…、おい、誰だ!」
アタシが声を出して、リュウが振り返った。
布には薬品がしみ込んであるみたいでドンドン意識が遠のく。
抵抗する力もなくなるし、薬品のせいで意識が消えてく。
アタシは耐えられず床に転ぶ。
「梓紗!?おい、しっかりしろ、梓紗!」
リュウがアタシの名前を叫ぶ声でアタシの意識は消えた。


目が覚めた。
どこだろう。高い天井に大きな窓。どこのお屋敷??
広いベットの上で寝てる。窓の奥には広い芝生が広がってる。
服は制服からして、あの出来事は本当のコトだろう。
頭はまだ薬品のせいかぼやぼやする。
外はまだ明るい。
何時だろう。携帯の時間を見ると、さっきからそんなに時間は経ってない。
起き上がってみる。
部屋は想像以上より広く、奥のソファーには男の人が座っていた。

『すいません、ここ、どこですか?』
「お目覚めですか。ふ、それにしても呑気なものですね。
 どこの誰にどこに連れてこられたかも分からないのに…今の状況、分かってます?」
『今の状況…まさか、誘拐とかじゃないですよねっ?!』
「誘拐だなんて…ふ、面白い方だ。さすが、あの方の好いてる人ですね」
あの方の好いてる人?あの方って誰??
でも、その前に…リュウは…?
『あの、誰か、男の子も一緒にいませんでしたか?』
「リュウ様のことですか」
『…なんで、リュウを知ってるの?!』
「ふ、そのうちお分かりになりますよ。リュウ様は庭でお休みしております。
 案内します。立てますか?」
『あ、ありがとうございます』

いつもなら、こんなうさんくさい話、信じない。
名前なんて所持物を調べればすぐに分かる。
でも、リュウのことが心配で心配で、それどころじゃなかった。
早くリュウの姿が見たかった。安心したかった。
部屋を出ると、広い廊下。
廊下の天井も高く、シャンデリアがいくつもぶら下がっている。
外へ出る扉までの距離が長い。部屋のドアがたくさんある。
何か…ギリシャとかの神殿みたいな雰囲気。

外に出ると、窓から見てた景色より広い芝生。
1つのベンチが見える。
女の人と…あれは、リュウ。
2人が腰掛けていてリュウは女の人の肩にもたれている。
すると、リュウはゆっくりと肩から頭を離したかと思うと、
怯えたようにベンチから飛び起きる。
何か言ったかと思うとリュウは歩き始めた。
「どうぞ」
男の人に行ってもいいということなので、リュウに駆け寄る。

『リュウ!!』
「…梓紗!!ケガないか?大丈夫か?」
『うん…リュウは?大丈夫?!』
「…うん」
リュウは、はぁーと深いため息をついてから、真剣な顔をした。
「ごめん、守れなくて」
ビックリした。リュウがそんなこと思ってるなんて。
アタシはリュウが無事だっただけで安心だよ?
『何?大丈夫だよっ。油断してたアタシも悪いし。リュウが謝るコトじゃないよ』
「うん…ごめん」
『あ、ほらまた謝るっ』
「え、今謝ってた?」
『あはは、うん』
でもリュウはアタシを守れなかったコトに対してだけ謝ったように見えなかった。
何か、もっと奥の真実があるような気がする。
でもやっぱりリュウの姿が見れて良かった。
しかも、ケガもしてなさそうだし…でもあの女の人って誰だったんだろう?

リュウの元気な姿に安心したら、体の力が突然抜けて、
意識が朦朧として、倒れた。
そこからはもう意識がなかった。

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*第5話*~ネットの恋! すれ違いの悲劇~ ④



「俺はただ腹が痛くてジュース飲まなかっただけだろ、
 そんなコトで殺人鬼呼ばわりされちゃ、こっちもたまんないね!!」
「てめぇ……まだこの期に及んで…」
キンタが少しキレ始めている。
「そもそも!!亀田が殺された時、他の誰でも無いお前達と一緒だっただろ?!
 …それに、朝吹の殺されたときのアリバイトリックだって、、
 誰にでも殺すチャンスがあったってだけで、
 俺がコレクターだっていう根拠にはなんない!!」
『言い訳するの、いい加減やめなよ。…見苦しいよ』
「根拠かぁ…それならとっくに君自身が証明してくれたじゃないか」
「………ぇ?」
富永くんは信じられない表情でリュウを見つめた。
「朝吹さんが殺された時、君なんて言ったか覚えてる?」
『【まさか、ビデオに映ってた時計が30分進めてあったなんてね】
 富永くんはそー言ったの』
富永くんは、はっと目を見開いた。
「朝吹さんの部屋から発見されたテープに、
 何分間バラエティー番組が録画されているかは、あの時はまだ分からなかった。
 君の言葉を聞いた後、僕達が検証して…初めて分かったことなんだよ!」

「亀田くん殺しに関する君のアリバイももう崩れてるよ。
 あの殺人が2日に渡って行われてたことはお見通しだ」
段々と富永くんの様子がおかしくなっていく。
「それと飴でできたこのガラス瓶を使ったこともな」
目が…泳いでいる。
「中学ン時、富永のお父さんの撮影現場見学させてくれて、
 そん時にもらったガラス瓶を俺達の映画で使ったんだ…」
佐久間さんは思い出したようにつぶやいた。
…これで、全てが繋がった。
そして、富永くんは視線が定まらないのかあちこち見ている。
「おそらく彼女はその様子を収められたビデオを僕に見せようとしたに違いない。
 でもその電話中、君が偶然部屋に訪ねてきた。
 ひょっとしたら、テープが気になって盗み出すつもりだったのかもしれないなぁ?
 そこで彼女が僕にそのテープを推理の材料として見せるつもりだと聞かされ、
 咄嗟に彼女の殺害を思いついたんだ」
そこまで言い終わったリュウは、怒りなのか悲しみなのか…、
何かに満ち溢れたんだと思う。
大きな音を立てて立ち上がった。
リュウをここまで奮い立たせるなんて、信じられない。
「なんの罪もない彼女を………


 もう言い逃れはできないぞ富永」

全員の視線は富永くんに絞られた。
みんな信じられないんだろう、中学の頃の仲間が、仲間を殺した。
「どうして…中学からの仲間を虫ケラみたいに殺せたの?
 ビデオに映ってた映画研究部は、みんな仲のいい友達だったじゃない!!」
アタシはみんなで見た撮影風景を思い出す。
あの時のみんな、本当に楽しそうだったのを思い出す。
すると、富永くんは狂いだしたように笑いだした。
……いや、本当に狂ってしまったのかもしれない。
大笑いだ。
「仲間…?……、友達??」
突然笑いが止まった富永くんは、もう別の顔だった。
「いや、友達じゃない。いつか蹴落とさなきゃならない、
 その他大勢だ……!!!信用できる奴なんて誰1人もいなかった。
 たった1人…、小椋絵美菜のぞいて」
「もしかして……彼女と?」
「俺と絵美菜は愛し合ってた…、深い心のつながりで……結ばれてたんだよ」
「でもお前らそんなそぶり…」
「みんなが知らなくて当然だよ!!
 …俺と絵美菜はネットの中で付き合ってたんだからな」
空気がはりついた。
アタシは身動きがとれないほどに。
…この人は一体何を言ってるの。

「俺は学院の映画愛好者が集まるサイトでアニメっていうH.N.の子と、
 恋人みたいな関係になった…そしてある時気づいたんだよ。
 彼女の名前をローマ字にし、逆から読むと【エミナ】になるって…。
 俺、マヂで鳥肌立ったよ。
 だって俺彼女のコト中学ン時から、ずーっと好きだったんだもん。
 ふふ…、まぁ…あっちは俺の正体に気付かなかったみたいだけど。
 時期が来たら…俺の方から告白するつもりだった…。
 でも、それなのに…ある時からアニメを攻撃する中傷が、
 何十人もの名前で書き込まれるようになった…。
 …っ、なんとかして、その書き込みをやめさせたかった…
 でも…どうにもならなかった…。
 そして…とうとう傷つきやすい繊細な絵美菜はネット上からも…
 実生活の学校からもいなくなっちゃったんだよっ!!
 …彼女はもう、この世のどこにも存在しない…。
 俺には分かるんだ…彼女の痛みや…苦しみが…」
「…それで、彼女を追い詰めた相手を探し、亀田くんにたどり着いたんだね?」
「アイツは日頃から自分より成績の良い絵美菜を嫌ってた。
 陰険にしつこく追い詰めて、俺の絵美菜を死に追いやったんだよ!!!
 亀田だけは…亀田だけは、絶対に許せなかった…。
 …だから、俺の手で…」
だからって…だからって亀田くんを殺すなんて間違ってる。
殺すだけが手段じゃなかったはずなのに…。

「待って下さい!!!!」
…突然遠矢さんが立った。
「あの…小椋絵美菜さんが、何かの理由で姿を消したのは事実だと思う。
 でも、少なくともその理由は、亀田くんにネットで袋叩きにされたからじゃないわ!!」
「お前に何がわかんだよぉっ!!!!」
「アニメは恵美奈さんじゃないの…!!!」
遠矢さんは涙ながらに言った。
アニメが……絵美菜さんじゃ、ない?
「…私よ、彼女の名前を並び替えてアニメのH.N.を使って、
 掲示板に書き込みをしてたのは、私なの…!」
「え?」
……それって、もしかして、何それ?!
アニメは絵美菜さんじゃなくて、…遠矢さん?!
じゃぁ富永くんとネット上で付き合ってたのは、遠矢さんだったの?!

「私も中学の頃から、彼女のこと憧れてたわ。
 あんな人になれたら、どんなにいーだろう…って。
 それで私、ある時思いついたの…こんな私でも理想の絵美菜になれる場所がある。
 …インターネットの中なら、理想の自分になれる…って。
 初めはほんの軽い気持ちだった…でもやっていくうちにどんどんハマってって…。
 アニメを名乗ってる私は、美人で…明るくて頭もいい理想の高校生」
「嘘だ!!!!!…いい加減なこと言ってんじゃねぇよ!!」
そう言って富永くんは遠矢さんに襲い掛かった。
小さな悲鳴をあげる遠矢さん。
キンタはすぐに駆けつけて、富永くんを遠矢さんから剥がした。
床に転がる富永くん。
信じられないのか、狂いに狂っている富永くん。
次は投げられたキンタへと向かって行った…そしてキンタの胸倉を掴む。
キンタはものともせず、近くにあった飴ガラスの瓶で
富永くんの頭を殴った。
そして、少しフラついた富永くんはその場に崩れてしまった。
部屋にはキンタは手についた飴をほろう音が響く。
もう…、全てがめちゃくちゃで、もう意味分んない。

「嘘だ…」
「その子は嘘なんかついちゃいない」
聞き覚えのある声がした。
振り返るとそこには――――「七海先生?!!」
「彼女の言っていることは真実だ。小椋絵美菜は自殺なんかじゃない。
 ……――恋人と駆け落ちしたんだ」
『か、かけおち…?!』
「…駆け落ち……?」
そして七海先生の手には4枚の写真、小椋さんと…男の人だ。
ふと富永くんを見ると、目にはもう光が無かった。
「相手は高校中退の、役者志望の男だ。
 彼女は厳しい両親と、自分が優等生であるプレッシャーに耐えきれず、
 何も言いだせないまま…全てを捨てたそうだ…」
「…どうしてそこまで…?」
「美南の偽ブログ騒動を聞いて、アニメの正体は彼女じゃないと考えた。
 あまりにも分かり易いアナグラムだったんでなぁ。
 アニメの発信源が、遠矢邦子ということも…間違いない」
「そんなぁ…それじゃあこの犯行は、富永くんの動機そのものが、
 インターネットの中だけの虚構だったっていうの?!」
富永くんには意識がないように見え、遠矢さんは泣いている。
そんな、そんなことがあっていいはずがない。
富永くんの勘違いで、2人の人が死んじゃったんだよ?!
キュウも突然の事態に動揺を隠せない様子だった。

「富永くん…どうして彼女が攻撃されてた時、自分の正体を明かさなかったの?!
 何で現実の世界で、彼女を守ろうとしなかったの!!
 …そしたら、こんな誤解を招くこと…。
 僕達が、生きていかなきゃいけない世界は…ネットの中じゃないんだよ?
 現実の世界は、苦しい事や思い通りに行かないコトだってたくさんある。
 でも、こうなりたい…って夢があるなら、そこから逃げちゃダメなんだ!!
 …ちゃんと…ありのままの自分を受け入れて、立ち向かうしかないんだ」
「夢。
 忘れてたね…、富永くん…
 私達、いつか世界中の映画ファンをスクリーンに釘付けにするような
 作品を作ろうって…そう言ってたよね」
遠矢さんが涙ながらに話す。
時折混じる笑顔には、想いが混ざっているのが何となく分かる。
「富永……富永ぁ…、とみながぁ……富永ぁ!!!富永!!!!」
佐久間さんが必死で富永くんをゆする。
佐久間さんから一粒の涙が流れた。
その涙をきっかけに、アタシの溜まっていた涙も溢れ出してしまった。
そして佐久間さんは持っていたカメラを富永くんに向ける。
カメラを向けられて、何を思ったんだろう…富永くんは。
少しずつ目に光が宿ってきた。
そして

「――――――……夢、」






「全部、自分で考えたのか?」
「インターネット上のサイトです。
 そこに、亀田に対する恨み辛みを書き込んだらメールが届いたんです。
 完全犯罪の計画書を売ってる人間がいる、って」

アタシ達は後日、富永くんの取り調べに立ち会いした。
夢、と呟いた富永くんの姿はもうなかった。
口調は淡々としていて、質問されたことに対して答えているだけ、
感情が無いような表情だ。

そして、【完全犯罪の計画書を売っている人間】には驚く。
ネット上でも広がっている程、有名なのかな。
取り調べをしている諸星さんは、目の色を変えて次の質問へ急ぐ。
「…それで、どうしたんだ」
「その人を紹介してもらって、会いに行きました」
「どんな男だ」
「…普通です」
「ん…、何か…覚えてることはないのか」
「覚えてる、こと?」
そう呟いたかと思うと、富永くんの顔はニヤけ始めた。
最終的には声を出して、笑う。
ついにはイスから立ち上がり、走り出し、壁にぶつかる。
「おいっ、やめろ!!」
諸星さんは富永くんを必死で止めようとする。
猫田さんもいち早く駆けつけ、富永くんを押さえる。
「誰かーっ!!誰か来ーいっ!!!!」
「おい、人を呼べっ!!!」
アタシ達は、それを黙って見てるしかなかった。
富永くん…あんな笑顔で笑う人が、こんなにも変わってしまったなんて。
どうして、人を…友達を、仲間を殺すことなんて思いついたんだろう。
どうして、そんな簡単に殺せたんだろう。
富永くん……アタシ達と居た、あの時は偽りだったの?
バレないように必死で、何とか計画を実行したくて…。
教えてよ、何で、仲間を殺せたりなんか、すんのよ。


その場に居られなくなったアタシ達はミッションルームに戻った。
ミッションルームに戻ったからといって、空気が変わることはなかった。
みんなただ、この空気が壊れるのを待っていたのかもしれない。
沈黙は流れていくだけだった。
「七海先生…何を隠してるんだろう」
1番に沈黙を切り裂いたのは、メグだった。
アタシは混乱していて気付かなかったんだけど、
さっきリュウに聞いたら、富永くんが暴れ出した時「まだ御催眠だ…」と、
呟いていたみたいだった。
「俺達の知らないところで何かが起こってる…」
キンタが重く口を開いた。
数馬はそっぽを向き、リュウは読んでいた本を閉じた。

「そういえばメグ」
数馬は今までとは少し違う、明るい口調で話し始めた。
「例のブログを立ち上げた相手、分かったよ」
「誰だったの?」
『ちゃんと調べてくれてたんだあ』
「うるさいよ…名前は本条恵12歳、メイド姿のメグを見てずっと憧れてたんだって」
「メグの知ってる子?」
キュウが心配そうに問いかけた。
「ううん」
「本人も反省してるみたい。ブログも閉鎖したよ」
「ありがとう、色々動いてくれて」
「まだ早い段階で気づいたから良かったのかもしれねぇなぁ。
 そういう思い込みって、変な方向に膨れ上がると手がつけられなくなるからな。
 …今回の事件みたいに」
『良かったね、メグ』
「うんっ」
「梓紗は…ブログ作られないしてない?」
『え?リュウ…アタシに限ってあり得ないからっ。メイドやってるわけじゃないし…』
「まぁ、メイドやってたら僕が許してないけどね」
『なっ』
「ほんっと、リュウは全く…」
メグが笑いながらアタシ達に言った。
「でも…許せないのは、人のそういう感情を利用して殺人をけしかけた奴だ。
 …僕は、絶対に許せない…!!!!」
キュウの正義感にはいつもやられる。
アタシ達だって、常にこういう感情持ってないと。

すると、奥から何かが近付いてくる音がする。
出てきた人物にアタシ達は反射的に立ち上がる。
「団先生…」
「七海から忠告を受けた。 
 …そろそろ君達にも全てを話すべきだとねぇ…」
そう言うと団先生は、杖を使い思い切って立ち上がった。
アタシ達はそれに驚かされる。
「君達に明そう!!!…我が宿敵、冥王星の正体と彼らとの戦いの歴史を…」

みんなそれぞれ、驚いていた…もちろんアタシもだ。
冥王星っていうのは、どこかで聞いたことのある組織だ。
…だけど、みんなの驚き方とは少し違う…リュウを見つけた。

リュウ…
リュウも何か隠してるんじゃないの??

拍手

*第5話*~ネットの恋! すれ違いの悲劇~ ②

アタシ達は許可が下りるまで、校舎の中庭で少し雑談をすることに。
「みんなには借りができたな」
佐久間さんがアタシ達をカメラで収めながら、後ろ向きで歩いている。
「あ、僕達はただ、アリバイトリックを解いただけですから」
キュウもメグも映りたがりみたいで、カメラのレンズを覗き込んでいる。
アタシは専ら興味はないがカメラを向けられたので、微笑を浮かべてみる。
「あなたが事件にかかわってる可能性はまだ0じゃない」
「ホントは昨日の夜、どこにいたんだよ」
「…実はさ、ホラー映画のファンサイトで知り合った奴からメールが来て、
 カルトビデオ譲ってくれるっていうから、近くの公園で待ち合わせしてたんだよ」
『それでビデオはもらえたんですか?』
「でもさぁ…そいつ、待ち合わせ時間になっても、来ないの!!!」
「すっぽかされた、ってこと?」
「うんっ!!」
佐久間さんは大きく首を縦に振り、強く肯定した。
ちょっと可愛いって思ってしまった…不覚だ。
「…お前そんな言い訳通用すると思ってんのかよ」
「通用しないと思ったから黙秘してたんだろ」
佐久間さんはキンタの問いかけに間一髪と答えた。
それはそうだ。
「第一俺がいくらヤバい人間だからって、映画研究部の可愛いーぃ後輩を殺すわけがないっ」
「映画研究部の後輩?」
「うん」
あ、まただ。
佐久間さんの「うん」って、ちょっと可愛い…。
そしたらリュウに何か感づかれたのか「どうしたの?」って怪しい笑顔で言われた。
「えっ、いや、別にぃ?」
「あの2人、同じ付属中学の出身で映画研究の仲間なんだ」
「本当ですか!?」
キュウがすかさず聞く。
「うん。亀田や朝吹だけじゃなく、冨永や遠矢、それから失踪した小椋絵美菜もみぃーんな仲間」
まさか…そんなの偶然?
これはちょっと関連性があると考えてもいいんじゃないかな?
それにしても、佐久間さんが後輩想いってトコも意外だったな。


ようやくビデオの許可が下りたので早速見ることにした。
テレビにセットしてビデオを再生すると、映ったのは今とはどこか違う佐久間さんと富永くん。
よーいスタート、という佐久間さんの声と同時に撮影が始まった。
男性用スーツを着ている朝吹さん、OLのようなスーツを着ている…小椋さん?
撮影は進んでいき、カメラやレフ板が2人が歩くスピードと同じに進む。
台詞を淡々と言う朝吹さん。
すると突然「あ、」と言って撮影が止まった。
きっと台詞を間違えたんだろう…そんな違和感はなかったんだけど。
その瞬間緊張感は消え去り、みんなの顔に笑顔が生まれた。
亀田くんは遠いアングルから撮っていたカメラにアップで映りこんできた。

「亀田くんも昔はみんなと仲良かったんだ」
「小椋絵美菜、亀田純也、朝吹麻耶…事件の被害者は皆、同じ映画研究部だったなんてなぁ…」
テレビでは佐久間さんがメガホンで亀田くんをポンポン叩いていた。
それで笑うみんな。本当に仲が良かったように思う。
「でも…これで容疑者が絞れてきたよ」
「え?」
『ほ、ほんと?』
「浅い人間関係で、計画的殺人が起こるのは、金銭がらみ以外で考えられない。
 殺された朝吹さんが素直に部屋に招き入れたことから考えても、中学時代から親交があった
 彼らが容疑者になる可能性が高い」
『え、てことは』
「まさか、この仲良さそうな中にコレクターがいるってゆーの?」
の瞬間、キンタの携帯が鳴りだした。

キンタは着信に出る…数馬のテレビ電話だ。
「おう、数馬」
「今、渋沢学院のサーバーを調べてるんだけど…ここ半年ぐらいのログが残ってた。
 …で、殺された例の亀田純也って人の書き込みを追っかけてたんだけど、
 なんかこの人、ヤバいことしててさ」
「ヤバいこと?」
「渋沢学院のサイトに映画愛好者の掲示板があるんだけど… 
 亀田って人…、1人で20人近いハンドルネームを使って、
 1人の人間を袋叩きにしてたんだ」
「まぁ、ぢかよぉ…」
『ひっどいね』
「詳しいやり取りはメールに添付して送ったから」

アタシ達はすぐにパソコンを開き、渋沢学院のサイトの映画愛好者の掲示板を見た。
パッと見、普通の掲示板に見えるだろう書き込みには、相当なコトが書いてあった。
殺る、喧嘩、死ね、…そんな言葉が平然と並んでいる掲示板には寒気がした。
それに、これが全て亀田くん1人によってつくられたものだとすると…。
「これに書き込んでる人、全員亀田くんなの?」
「中傷されてるのが…このアニメっていうハンドルネームの人物だったらしいな」
リュウが次々と画面をスクロールさせていく。
次々と中傷が酷くなってきているような気がする…

「見ろよ、これ」
リュウが呟いた。
アタシ達は従ってリュウが刺すであろうものを見る。
『…えっ』
そこにはアニメさんの書き込んだもので、【自殺します】と書かれていた。
「嘘…たかがネットの中のいじめで、自殺なんて…」
「このアニメって名前…」
リュウが何かに気がついたみたい。
「アナグラムだっ」
「アナグラムって、文字を並べ替えるやつ?」
『嘘、アニメなんて並べ替えても…あっ、ローマ字っ』
「そう、こうしてアニメをローマ字変換にして逆から読むと…」
パソコンにはローマ字で打ち込まれたANIME。
そしてリュウが逆から打ったANIMEは……EMINAになった。
「えみな…」
『嘘っ、』
「小椋絵美菜っ!!」
「じゃぁ、亀田くんが20人近くのハンドルネームを使ってイジメていたのは、
 失踪した小椋絵美菜さんだったの?!」
『嘘、何それ』
「どうやら、動機も見えてきたなぁ…」
キンタが怪しげに言う。
だって、亀田くんがこのハンドルネームがアナグラムだって知っていたら、
明らかに自分より成績の良かった小椋さんをいじめるだろう。
「ねぇ、リュウ、さっきビデオに映ってた人達を集めて上映会やってみない?」
『キュウ…??』
「おもしろそうだねぇ…」
キュウもリュウもいつになくノリ気だ。
リュウの顔がニヤけているのですぐ分かる。
上映会…?何か得ることができるだろうか。

その後、実際にみんなを呼び出し上映会をした。
真っ暗な部屋にスクリーンを下して大画面で見る。
「付属中学の映画研究部かぁ…懐かしいな」
「小椋さん…」
そう呟いた遠矢さんの声がすごく淋しく聞こえた。
「心が痛むねぇ~、この笑顔見るとキュンってなる、キュンって」
佐久間さんのキュンは尋常じゃないほど可愛かった。
もう語尾にハートは付きまくってる。
アタシはちょっと口が笑ってるみたいで、リュウにすぐ気付かれた。
「なーに、笑ってんの」
『別にっ、笑ってないよ』
「嘘つくなよ」
『なっ、なんでもないよっ』
「じゃぁー、後でしつこく聞くからっ」
リュウはちょっと笑ってまたスクリーンに顔を戻した。
しつこく聞くって…そんなコト言われても…。
「佐久間さん…」
キュウが話しかける。
「小椋さんにフラれたって本当ですか」
すると、前を向いていた佐久間さんがぐりんと顔をキュウに向け、
「はっきり言うね」
と少し動揺していた。
何回か小刻みに頷いたかと思うと、ダラッと座っていたイスを座りなおした。
「彼女ねぇー、【好きな人がいるのーっ】って。
 まぁ俺みたいな変態最初から無理って分かってたけどねっ」
「なんかずいぶんサバサバしてますね」
メグが冷たい視線で佐久間さんに問いかけた。
「そう見えるでしょぉ?でもお腹ン中どろどろっ」
せ、切ない。
わざわざ聞いたメグって一体…?笑
「何か、みんな仲よさそうだね」
「今じゃロクに口も利かなくなってるもんな」
「どうして、みんなこんなバラバラになっちゃったんだろ」
「仕方ないよ、ウチの学校受験校だし。友達はみんな成績を争うライバルなんだから」
――友達はみんな成績を争うライバル…
アタシはその言葉に少し引っ掛かった。
仲間が口を利かなくなった理由に成績を挙げるなんて…ちょっと気になる。
キュウとリュウも同じなのか、少しヒクついていた。

「あの頃は楽しかったなぁ…
 私達が作った映画を佐久間先輩のお父さんが経営してる小さな映画館で上映してもらったり…。
 映画の美術をやってた冨永くんのお父さんに小道具を色々分けてもらったり…」
遠矢さんが懐かしむように淡々としゃべっていた。
「もうよそーぜ……そんなことより、事件のコト考えよう」
冨永くんは遠矢さんの話を遮り、事件に話をすりかえた。
すると佐久間さんはイスの背もたれに首を乗せて、後ろに顔を持ってきた。
「まぁ、彼らのおかげでアリバイ解けたしね」
アタシはそこで今まで以上にリュウの目つきが変わったのに気づいた。
「まさか、ビデオに映ってた時計が30分進めてあったなんてね」
「あと、アラームの針の時間が朝の9時じゃなくて、夜の9時だっていうのもっ!」
「目覚まし時計ってゆーくらいだから、朝だと思うよなぁ」
……何だ、この不自然な会話…。
どこかおかしいんじゃないのかな。
「そっかぁー、事件は8時半に起きてたのかぁ」
佐久間さんが大声を出して言った時、
リュウとキュウは目が合っていた、…きっと何か分かったんだ。

―――上映が終わった。
部屋を明るくし、イスを片付ける。
「なぁーんか、いまいち反応無かったな」
「結局空振りかぁ…」
『でもあの3人話してるとき、懐かしそうだったよね』
「んまっ、今日は新しく得た情報無しっ…と」
「そうでもないよっ!!!」
キュウが高らかに言い放った。
「……分かっちゃった」
「え?」
「え?」
『分かった、って…犯人?!』
「あのビデオを検証されるのは、やっぱり相当なプレッシャーだったみたいだ」
「リュウも分かったのか?」
「ねぇ、誰?犯人誰よ、教えてよ」
アタシは考えてた。
さっきの上映会で誰かボロが出た人がいるってコトだよね…。
3人の言った言葉を辿ると…
―――あ!!!そうか、だからあの時違和感を感じたんだ!!!


それからアタシ達は移動して、朝吹さんが録画していたビデオの検証に入った。
さっきと同じように部屋を暗くして、イスを出す。
すると、キュウが早送りを押した。
それを黙って見るアタシ達。
そうだよ、あのことは、今初めて分かるコトなのに…あの人は知っていた。
「キュウ、ストップ!!」
リュウが言う。
止まった画面には朝吹さんが撮りたかったであろう映画のタイトルが映し出されている。
ビデオの撮り始めから、映画が始まるまでの時間を計ったのである。
アタシ達はキュウのいる上映室のような場所へ向かった。
そこに表示されていたのは…「ジャスト30分」…ほらね。
「決まりだな」
「うん」
『これは、今初めて分かったこと』
「梓紗も気づいた?」
『うん』
「え、もしかしてあの人が犯人…?」
「ああ」
「そうか…あとは亀田殺しのアリバイを崩すだけか…」
キュウは深く頷いた。

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*第5話*~ネットの恋! すれ違いの悲劇~ ①

『朝吹さんっ…………!!!!』

リュウの部屋のパソコンで見た、生中継の殺人ビデオで殺されたのは…朝吹さんだった。
朝吹さんの光のない目を見たとき、
朝吹さんを殺害したコレクターと、朝吹さんを守れなかった自分に腹が立った。
腹が立ったのと同時に自分は無力だというのを改めて感じさせられ、
不安と恐怖が1度に押し寄せてきたせいで声が出なく、息遣いだけが荒くなっていった。

「梓紗!!梓紗、落ちつけ、梓紗!!」
リュウが必死でアタシをなだめようとしてたのは分かる。
顔をぎゅーっとリュウの胸に押されていた。
遠矢さんだって、呼吸混乱状態になっている。
「遠矢さん…大丈夫?」
「あ、アタシ、あ…初めてで…何考えてるか分かんなくなって…」
『…はぁ………はぁ、はぁ…はぁ』
「とりあえず、女子寮に行くぞ。梓紗、立てるか?」
『う、……うん』
リュウはアタシを抱え込んで立ちあがってくれた。
『もう、大丈夫…だから。アタシは…見慣れた、なんて言ったら最悪だけど、
 今までに死体を見てきたわけだから、遠矢さんを心配してあげて…遠矢さん、大丈夫?』
「あ、はい!!……だ、大丈夫です!」
「…2人とも無理するなよ」

リュウの部屋から出て、アタシ達は女子寮へと走る。
途中で何回か朝吹さんの笑顔が頭をよぎった。
遠矢さんもそうなのか、少しだけ辛すぎる表情を浮かべていた。

女子寮に着くと、キュウ達やキンタ、富永クンも朝吹さんの部屋の前に集まっていた。
「リュウっ!!」
『メグ!!大丈夫?!』
「叫んじゃったけど…もう整理ついた」
『良かった…』
「とにかく入ってみよう」
「待て!」
キンタがキュウを止める。
「犯人がまだ潜んでるかもしれない…」
そう言ってキンタは勢いよくドアを開けて中に入る。
キンタとキュウとリュウの背中ではっきりとは見えなかったけど…
そこにいたのは…朝吹さんの無残な姿、ただそれだけだった。
それぞれが中に入っていき、順に朝吹さんの姿を見る。
アタシは少し瞳孔が開きそうになったけど、心を落ち着かせた。

キンタは朝吹さんの死亡確認に入っていた。
出てきた答えは…「……死んでる…」。
その一言にみんなの表情は一気に凍りついた。
「警察に知らせてきます!!」
遠矢さんはすぐに部屋を出て行った。
すると、メグはゆっくりと朝吹さんに近づいて行く。
ただただ朝吹さんを見つめ、何を言うこともなく見つめ。
心配になったキュウはメグへと近づく。
「…メグ」
「なんなのよ一体…何者なのよコレクターって…何のために朝吹さんまで…?」
『メグ…』
メグの今にも泣きそうな顔を見て、【朝吹さんの笑顔は戻ってこない】と実感した。
朝吹さんは……死んじゃったんだ。

その中でもリュウの表情は険しかった。
朝吹さんを見つめている時間に比例して、眉間にしわがよっていっている。
『リュウ…?』
リュウはゆっくり歩いていき、朝吹さんの顔の近くでしゃがみこんだ。
朝吹さんの目を閉じさせると、リュウは微笑んだような顔で
「ばいばい…」と小さな声で言った。
きっと朝吹さんと何かあったのだろう。
言い終わった後のリュウの顔はまたいつもの強張った顔だった。

「実は…朝吹さんからさっき電話をもらってたんだ」
「え?」
「亀田殺しの重大なヒントを見つけた、って…梓紗も聞いてたよな?」
『…うん』
みんなの顔が一変したのが分かる。
殺されたのは…きっとそのせいだ。
「今日の放課後、みんなでここに集まってたんだよね?」
「うん」
リュウがメグに確認をとる。
「なんでもいい、その時と比べて何か無くなった物とかないかな?」
メグが辺りを見回す。
アタシが見る限り、大きなものがなくなったりはしていないように思う。
でもメグが探せば、「そこの本棚!!本の並びが変わってる」…ほらね。
「すげぇ…何で覚えてんの?」
「私記憶力だけは異常にいいの」
冨永くんのありふれた質問に答え慣れたように冷静に言う。
キュウとリュウがその棚へと行き、参考書を全て取り出した。
中にあったのは…何本かのホラービデオだ。
「ホラービデオだ」
「変だな、6の番号のビデオだけない…」
キュウとリュウの推理が始まる。
時計を見れば、9時から10分を回っていた。
時計の隅にしゃがみこむキュウ。
「この時計…」
『何?』
「目覚ましの針が9時になってる。学校の授業は8時半から。
 9時じゃぁ、完全に遅刻だよ」

そうしてるうちに、遠矢さんが通報してくれた警察の人が来てくれた。
「全く狂ってやがるな、コレクターって野郎は!!」
「でもそれって本当に生中継だったのかなぁ?録画した映像を後で流したとも考えられるだろ?」
諸星警部と猫田さんだ。
「いえ、それはないと思います」
冨永くんが突然口を開いた。
「画面にこの部屋の目覚まし時計は大写しになりましたから」
「事件前後、不審な人物を見かけたという目撃情報はない、とするとー…犯人は!!」
「校内の人間である可能性が高いですね!!」
「よぉし、被害者に恨みを持つ人間がいないか、調べるぞ!!」
「はい!!」
そうして諸星警部と猫田さんは部屋を出た。
猫田さんに至っては、メグをチラ見しニヤけた顔で出て行った。
こっちは、そんな気分じゃないってのに…。

諸星警部、猫田さんが部屋を出て行ったあと
朝吹さんの部屋のビデオデッキが動き始めた。
みんな反射的にデッキ周りに集まる。
やっぱり探偵ってのはそーなっちゃうもんなんだねぇ。
「朝吹さん、何か録画してたのかな?」
アタシは気づいた。
『ねぇ、このデッキの時計のトコ見て?』
「だよね、時間表示が壊れてる」
キュウがアタシに付け加えた。
「ほら、数字が全部0のまま動かない」
キュウがそう言った後にデッキの動きは止まった。
「あ、止まった」
「彼女、何を録画してたんだろう…」
メグが徐に問うと、キュウの手が自然にリモコンへと伸びる。
そしてテレビの電源をつけて、ビデオを再生する。

そこに映ったのは、賑やかなバラエティー番組。
きっとお笑い番組なのだろう。
後半戦に突入と言っているところから見て、本来の放送時間の半分は過ぎているのではと推測される。
「バラエティー番組だ」
「しかも、途中から?」
「え?これ…今日の8時からやってたやつだ…」
キンタがぼそりと呟いた。
『なんで途中から?撮り忘れとか?』
キュウは腕時計と見てからテーブルの上のテレビ雑誌を手に取った。
今日のページを開くと、9時からの映画に赤丸がつけられていた。
と、なると、朝吹さんは9時からの映画を撮るのが目的だった?
するとキュウが何か気付いたみたい。
「そうか…そーいうコトだったのか」
『え?』


『…………え?!?!』
「佐久間さんが犯人?!」
突然の知らせにアタシ達は驚いた。
さすがに佐久間さんは人間の死や殺人とかに興味がありそうな人だけど。
実際に殺人を犯したりするような行き過ぎた人ではないと思うし…。
それに、信じたくない。
「ま、まさか、何を根拠に?」
「警察からの連絡だと、9時ころに佐久間さんが寮にいないことが確認されたとか…」
『嘘、それだけの理由で…?』
「それに佐久間は死や殺人に興味があるらしいし、
 被害者の朝吹麻耶に『コレクターの犯人は佐久間しかいない』と陰口を叩かれていたそうで、
 殺す動機もはっきりしているという…」
『本人はっ?なんて言ってるんですか?!』
「そりゃあもちろんやってないって言ってるよ。
 今もう、連行されそうな勢いだったから、早く行った方がいいよ」
『でも…佐久間さんが犯人じゃないっていう根拠がアタシ達にもない…』
「それなら…あるよ」
キュウがゆっくり口を開く。
さっきから朝吹さんの殺された殺人ビデオをずっと見ていたのには訳があったのだろう…。
キュウはきっと何かに気づいたんだ。

アタシ達は根拠を得たからにはと、全力で佐久間さんの元へと向かう。
このままだと本当に佐久間さんが署に連れて行かれちゃう…!!
「待って下さい!!!」
佐久間さんの元まで走るとキュウが焦って言う。
「佐久間さんは心理的に見て、犯人ではないと思います…!!!」
「心理…?」
「まずは、これを見てください!!」
キュウは手に持っているDVDを警察の前に出した。

アタシ達は上映のできる部屋を探して、DVDを再生した。
「ここをよく見てください」
それは朝吹さんの部屋にコレクターが入ったときの映像だ。
「被害者の朝吹さんが、犯人を招き入れるような動きをしているのが判りますか?」
「…確かに…そう見えるな…」
「朝吹さんがコレクターだと疑っていた佐久間さんをこんな風に
 簡単に自分の部屋に招き入れるでしょうか?…そんなコト、するはずがない。
 つまり、朝吹さんが犯人に対して取ったこの無防備な行動こそが…
 佐久間さんが犯人じゃないっていう、証明なんです」
な、……なるほど。
「…しかし、この男にはアリバイが…」
諸星警部は声を濁らせて反抗する。
「だから…そのアリバイ自体がトリックだったのよ」
『おおっ、そーか』
「梓紗、大丈夫?」
リュウが心配そうにアタシを覗き込んだ。
『大丈夫ですっ』
すると、佐久間さんは喜んで猫田さんの膝にあったビデオカメラを奪い取る。
「…ったくよぉ……」
「この続きを見てください」
キュウは一時停止していたビデオに再生をかける。
音と同時に朝吹さんが倒れる、そして時計が映る……見慣れたものだ。
「コレクターは被害者の部屋の中の目覚まし時計を、わざわざカメラを向けて映しこんでいます。
 …この映像はリアルタイムでネット掲示板で流れていたから、
 その時間にアリバイの無い者が犯人だと普通は考えます。
 でも、もし、この目覚まし時計の時刻そのものが犯人による細工だとしたら…どうしますか?」
「…えっ」
猫田さんは驚き過ぎて声が出ている。
「どぉーしますかぁ?!」
佐久間さんも猫田さんに嫌味っぽく問いただす。
「被害者にとって犯人は、招き入れるような親しい関係なんです。
 時計の針を進めることぐらい、いつでもできます。
 現に僕が午後8時過ぎに朝吹さんから電話を受けた時、彼女の部屋に何者かが訪ねて来たんです」
「それっ…本当か?!」
諸星警部がビックリするのに対し、佐久間さんはいつものようにカメラで警部を撮影していた。
「もしそれが犯人だとしたら…時計の針を進めるチャンスは、必ずあったはずです」
「しかしー…犯人が時計の針を進めたという証拠はないだろう…!!」
「証拠ならキュウが見つけたよ」
キンタが後ろから呟いた。
あ…もしかして、さっきの目覚まし時計の針?!

次の日、アタシ達はそれを説明するために、朝吹さんの部屋に1度戻った。
そしてさっき見つけた途中から録画されているビデオを見せた。
「この番組は昨日の夜8時に放送された、バラエティー番組です」
「被害者は殺される直前、この番組を録画してたのか…」
「そうです」
「でもこの番組、途中からしか録画されてないじゃないか」
「そりゃー当然だ。彼女が本当に録りたかったのは、この番組じゃなく…
 このあと9時から始まるホラー映画だったんだ」
キンタはテーブルへと近づき、証拠のテレビ雑誌を見せた。
やはりそこには9時からのホラー映画の欄に赤丸が記されてる。
「…これは」

「実はこのデッキ、タイマーが壊れてるんです。
 朝吹さんは…どうしても録画しておきたい番組があるときは、目覚ましをセットして、
 番組開始時間と合わせて録画していたに違いありません。
 つまり、そのアラームが指し示す【9時】直前という時間は朝の9時ではなく、夜の9時だったんです。
 朝吹さんは、犯人に殺される直前にセッティングしておいた、目覚ましのベル通りにしたがって、
 録画ボタンを押した…にも関わらず、録画されていたのは映画の前に放送されたバラエティー番組。
 しかも途中からです。つまり、犯人は…あらかじめ目覚まし時計の時間を進めておくことで、
 リアルタイム映像と見せかけて殺人シーンを録画し、アリバイをでっちあげた証拠です」

キュウの長い推理が終了した。
さすがにここまで細かく推理を説明されると警察もなす術がないだろう。
猫田さんはうろたえながら口を開いた。
「え、え?じゃあやっぱりあの映像は生中継じゃなかったんだ」
すると、猫田さんはすごくまずいという顔をしている。
ああ、佐久間さんのことか。
「…となるとぉー…夜の9時のアリバイは、意味をなさなくなるな」
「そういうことです」
諸星警部と猫田さんは気まずい顔で佐久間さんを見る。
佐久間さんは相当キレてるようで、2人に対し中指を立てていた。
「よしっ、もう一度アリバイを洗い直すぞ!!」
「はいぃ」
猫田さんの声が少し震えて聞こえてきたのは、気のせいだろうか?
部屋を立ち去ろうとした時、リュウが口を開いた。
「刑事さん」
「なんだ?」
「押収した朝吹さんのビデオテープ、僕達にも見せてもらえませんか?」
「どうしてそんなこと?」
佐久間さんはまだ怒っているのか、猫田さんの肩にあごをのせ、睨みつけている。
「数時の打たれたビデオの中で6番のビデオだけ抜けおちていたんです。
 そのビデオを犯人が持ち去った可能性があります」
「本当か?」
「その前後の映像を見ることで、何か手掛かりがつかめるかもしれません…。
 ……お願いします」
リュウが頭を下げた。
アタシは少し驚いたけど、すぐに頭を下げた。
『お、お願いします…』
「私からも…お願いします!!」
「お願いします!」
「…捜査本部に連絡して、見られるように手配しておく。しかし、今日1日だけだぞ」

「「「『ありがとうございます』」」」

拍手

*第4話*~ネットの恐怖から仲間を救え ④

足音が聞こえる。
そう思って少し意識が戻ってきた。
目は…まだ開けられていない。
足音が近付く。
さっきは気づかなかったけど、かなりの人数で…走ってきている。
誰…アタシ達に追い打ちをかける何者か…?

大きな音をたてて、扉が開かれた。
「メグ!!!!」
「梓紗!!!!」
キュウ、それにリュウの声だ。
そう気づいた瞬間、これは夢なのかと自分で確認したほどだった。
「あ…梓紗!!!!!」
「メグ!!」
さらに近付いて聞こえるリュウの声。
リュウがアタシを呼ぶ声。
でもいつもの冷静な声ではなかった。
息が切れてて今にも崩れそうな声だった。
その瞬間、肩に温かいものが触れた。
「梓紗、しっかりしろ、大丈夫か?!梓紗!!」
肩をゆすられ、嫌でも現実に引き戻される。
ゆっくり目を開けると、夢だと思っていたリュウが目の前にいる。
それを気付かされた時、不安と安心が一気に訪れ、
アタシは泣きそうになったのを必死にこらえた。

リュウは口に貼られていたテープを優しく剥がしてくれた。
不安でリュウに抱きつきたい思いも、腕がつながれていてできないことに腹が立つ。
『あ、…リュ、リュウ…』
長い間しゃべっていなかったようには思わなかったのだか、
震えて上手くしゃべることができなかった。
「だい、大丈夫か?!」
『大丈夫だよ、薬品嗅がされただけだと思うし…』
リュウも少し滑舌が回っていなかったのに安心を感じ、
もう不安にさせたくないという想いから、アタシの口から強がった言葉が出た。
身体は震えているのに。

その次に目に入ったのはリュウの肩だった。
ああ、抱きしめてくれてるんだ。
「ああ、もう、本当に心配させるな」
アタシの背中にあるリュウの手がすごく震えているのに気づいた。
本当に心配させちゃったんだと、すごく反省した。
自分が鈍いから勝手に連れ去られたのに、こんなに震えて探してくれた…。
『ごめん、ありがとう…』
「無事ならそれでいいよ」
リュウのその言葉を聞いた時、さっき止まりかけていた涙がまた溢れてきた。
更に心配させちゃうから、泣かないと決意した。
アタシも抱き返したいと腕を動かしたが、つながれているのを改めて分かり、
さっき以上の苛立ちを感じた。
『リュウ、ありがとう…ごめんね』
リュウは小さな声で「うん」と言ったのが聞こえた。
その声は、さっき以上に震えていた。

『メグっ、メグは?』
「メグも無事だよ」
隣にはキュウとメグの姿があった。
正面には富永クン、朝吹さん、遠矢さんの姿も。
リュウとキンタが腕の紐を外してくれた、抱きついたい想いを封じてメグを見つめた。
「それより…」
メグが指差した黒幕。
その向こうに…何が………か、亀田クン!!!!
キンタがさっと立ち上がり、幕の元へ歩いて行く。
できることなら、見たくない。
リュウは震えるアタシの手をぎゅっと握ってくれた。
アタシもリュウにぎゅっと握り返す。

バッとキンタが幕を開くと、そこにはシャツが真っ赤に染まった亀田クンの姿だった。


その後は警察が来て、救急車が来て。
救急車にはアタシとメグと亀田クンを乗せて病院へと向かった。
キュウが「僕も行く!!」ってきかなかったのを、メグが説得してるのを見て、
「ああ、いつものみんなだ」と感じれたことが嬉しかった。
リュウは最後まで心配そうに見つめてくれていた。
アタシが微笑むとリュウも無理に笑ってくれた。

病院では精密検査をするって言ってたけど、
軽くレントゲンみたいなのを撮って、薬飲まされて点滴打って寝てるだけで。
先生には「どこも異常なしです」って言われたし、なんでもなかったみたい。
「梓紗」
『メグ?』
「こ、怖かったね、私、本当に死ぬんだと思ったもん」
『アタシだって!!ホント、怖くて…』
「助けてもらえてさ…私達、幸せだよね…」
『うん…ホントに』
メグの顔はとろーんとしてた。
『メグ?』
「あ、え、何?!」
『今、もしかしてキュウのコト考えてた?』
「な、なにそれ?!あ、梓紗こそ!!リュウのコト、じゃないの?!
 …だ、抱きしめられてたじゃんっ」
『わ、わわ!!何言ってんの!!いや、でも助けてもらったし!!!
 心配してくれたんだよっ、別に深い意味なんかは…』
「それ!!私はそれなの!!助けてもらったから!!」
『もう、メグうるさいよ!!ここ病院なんだから!!』
「それは梓紗もでしょーがっ!!」
やっぱりメグはキュウを好きなんだなーって再確認。
こんなに赤くなってるなんて…ねぇ?
アタシもリュウを話に持ち込まれたとき、ちょっと焦ったけど…。
でも…抱きしめてくれた時、心臓の奥ががきゅーってなった。

タクシー拾って寮に帰ろうと思ってた時、「ねぇお腹すかない?」ってメグ。
「まぁ…ちょっとは」
「あそこ、行かない?」
メグが指差したのは、ラーメン屋さん。
「い、いいよ?」
アタシがそう言った瞬間メグは勢いよく走り出して、「チャーシュー麺2つ!!」と注文していた。
ああ、2つって…ひとつはアタシのか。
アタシが半分くらい食べてる頃にメグは1杯目完食。
「すいません…ラーメン、もう1杯お願いしますっ!!」
「ええ?!」
「だってさー、お腹すいちゃってっ♪」
アタシが1杯目を食べ終わった少し後にメグは2杯目を完食した。
改めてタクシーを拾い、寮に帰った。

タクシーを降りると、女子寮の玄関にはキュウが待っていてくれていた。
メグはそれに気づいていないみたいで、つまようじで口の中をイジっている。
「メグっ!!キュウ、待っててくれてるよ?」
「え?!」
「メグ…っ?」
するとメグは我に返り、つまようじをポイと捨てると、
何も見てないよね?と言いたげな顔で優雅に手を振って見せていた。

「なんかすっごくお腹すいちゃってー…病院の前の店でラーメン、2杯も食べちゃったっ♪」
「2杯…あ、梓紗は?」
『いやぁーアタシは1杯しか食べてませんよ?』
「だろーね」
「ちょっと、キュウそれどーいう意味よ?!」
「いやいやいや」
「なっがぁーい緊張から解放されると、急にお腹すくことってあるよねっ」
「うん、あぁーるぅ、ねぇ、うんある」
「味はいまいちだったけどね」
『味はいまいちなのに、2杯食べたからねこの人』
「最強だよね」
すると、キュウが身体中をかき回している。
待ってくれてる間に蚊に刺されたんだろう。
「何?かゆいの?」
「うん、かゆい」
「ああ、そう」

「あっ、ここ!ここ!!」
メグは部屋についたみたい。
アタシはメグの部屋の1個手前。
『あ、アタシの部屋も、こっち』
「じゃぁねーっぇ!!お、や、す、みぃーっ!!!」
メグは自己紹介の時のフリを「おやすみ」にあてはめてキュウに向けた。
「じゃあね、お、や、す、みぃっ!!」
『お、や、す、みぃっ!!!』
みんなで「おやすみ」をして、手を振って別れた。
キュウはまだ身体のあちこちがかゆいみたいで、かきながら帰って行った。
アタシはメグにもう1度「んじゃ、おやすみー」と言った。
メグは少し元気なさげに「おやすみ!!」と言ってドアノブを回そうとしていた。
アタシはちょっと気になったけど、何だかキュウは戻ってきてくれるような気がして、
部屋に入って行った。

部屋に戻ってベットにはぁーっと大きなため息をついて飛び込む。
すると、何だか手足が縛られてるような感覚に襲われた。
バッと腕を動かしてもあたりまえに繋がれてなどいない。
怖くて目を閉じると、走馬灯のように倉庫での不安が蘇る。
コレクターと亀田クンの悲劇がうずをまく。
恐怖と不安で身体が徐々に震えだしてきた。
そこに机の上に置いた携帯が大きなバイブ音でアタシを驚かせる。
発信は…リュウだ。
『りゅ、リュウっ?!』
「あ、梓紗、今キュウに2人が帰ったって聞いたから…」
『うん』
「今1人?」
『うん』
「1人で大丈夫?」
『だ、大丈夫じゃない!!さっきね、手足が縛られるような感じがしたし、
 目を閉じると、カメラを向けられた瞬間が蘇るの…』
「僕の部屋、来るか?」
『い、行くっ!!』
「すぐ迎えに行くから、待ってて!!」
リュウはそれだけ言ってプチっと電話を切った。

リュウは5分も経たないうちに来てくれた。
「ごめん、待った?」
『ううん、全然。隣メグの部屋なんだけど、多分、キュウがいるんだ』
「そっか」
『仲良くていいよね、あの2人。似合ってる』
「…行くぞ」
『…?うん』

リュウの部屋に着くと、そこは物静かな部屋だった。
部屋に付属されてる家具以外はほとんど何もない状態だった。
『リュウの部屋、来た時と全然変わってないっ』
「そーいう梓紗は部屋に何か置いたの?」
『時計とか…まぁアタシもそれくらいかっ!!』
「だろ?」
すると、リュウの携帯が鳴った。
「…朝吹さんだ」
『え?』
「…出るよ?……はい」
何を言ってるのかは分からないけど、電話越しに朝吹さんの声がする。
リュウの顔が少し険しくなった。
『何?どーしたの?』
アタシは携帯に耳を近付けた。
【あれっ、もしかして今橘さんの部屋にいる?】
「いないけど」
【じゃあ天草クンの部屋に橘さんがいるの?】
「いるよ」
『なになにー?』
【え、嘘、それってもしかして邪魔しちゃった?】
『…えっ』
「ん、まぁそうかもしれない」
『ちょ、リュウ、何言ってんの!!」
「んで?話の続き」
【あ、そうそう、亀田殺しの重要なヒントを見つけたの】
「え?」『え?』
【あっ…ごめん、誰か来た。またあとで電話するね。
 橘さんと、仲良くやってください♪】
そう言って朝吹さんは電話を切った。
亀田殺しの重要なヒントを見つけた?
『朝吹さん、アタシが電話を聞く前、何て言ってたの?』
「何?気になるの?」
『違うくて!!!』
「見せたいものがある…って言ってたけど」
『あ、それが亀田クン殺しの重要なヒントってコトか…』

すると、ドアの方からトントンとノックをする音がした。
『誰か、来たんじゃない?』
「うん」
リュウはゆっくりドアへ歩いて行く。
アタシもその後を追う。
ドアを開けるとそこに立っていたのは…「遠矢さん…?」
遠矢さんが申し訳なさそうに立っていた。
『え?遠矢さんっ?!』
「あ、え、すいません!突然お邪魔しちゃって…」
「いや、別に大丈夫なんだけど」
「いや、だって、橘さんと2人のとこに割って入るのは申し訳なくて…」
『ああー…アタシ、今日のコトが1人だと思いだして怖いから、
 リュ、天草クンのトコにお邪魔してただけだからっ』
「や、え、す、すいません!…それで、またネット版に奇妙なメッセージがアップされてて…。
 怖くなって…」

それを聞いて、早速ネット掲示板へとページを飛んだ。
すると【午後9時よりビックリ映像生中継】という書き込みとURLがアップされていた。
「9時より生中継…」
『9時って…もう9時なんじゃないの?」
リュウの時計を見ると、9時の少し前だった。
「…これ、放送部が使っている、映像配信アドレスだと思います…」
リュウがURLをクリックする。
黒画面に赤字で【某所より生中継中】と出てきた。
「梓紗、悪いんだけど、キュウに連絡してくれ」
『わ、分かった』
アタシは携帯を取り出して、キュウに発信した。
【もしもしっ】
『キュウ、コレクターがまた現れたの!!』
【え!!?】
パソコンでは画面が切り替わり、建物が映し出されている…廊下?少し見覚えが…。
「ここ、女子寮だわっ!!」
遠矢さんの一言で「そうだ」と確信した。
カメラはゆっくりと誰かの部屋へと向かっていく。
アタシはメグの部屋じゃないことだけを祈って画面を見ていた。
ノックをして、ドアが開く。
その部屋の女生徒の下半身のみが映し出される。
手招きをして、部屋の中へと案内しているのが見受けられる。
そして、部屋の奥の方まで来たかと思うとカメラと女生徒の距離が縮まっていく。
ずんっ、という音と同時に女生徒は倒れてしまった。
何…え?まさか、そんなはずないよね?
次に時計が映る…9時だ。
大きな音がしたかと思えばカメラは女生徒へと向けられる。
さっきとは体勢が違っていた。
足が伸び、しっかりと気をつけをして寝ている状態である。
足もとからゆっくりと上半身へとカメラが動く……!!!!
胸にクッションの上からナイフが刺されてある。
『い、いゃっ…!!』
「ひぃっ…」
遠矢さんも声が漏れていた。
リュウはアタシの頭を腕で覆ってくれた。
そしてゆっくりと顔の方へと向かっていく…や、う、あ…あ、あさ、




『朝吹さんっ…………!!!!』

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