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ドリーム小説
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*第5話*~ネットの恋! すれ違いの悲劇~ ④



「俺はただ腹が痛くてジュース飲まなかっただけだろ、
 そんなコトで殺人鬼呼ばわりされちゃ、こっちもたまんないね!!」
「てめぇ……まだこの期に及んで…」
キンタが少しキレ始めている。
「そもそも!!亀田が殺された時、他の誰でも無いお前達と一緒だっただろ?!
 …それに、朝吹の殺されたときのアリバイトリックだって、、
 誰にでも殺すチャンスがあったってだけで、
 俺がコレクターだっていう根拠にはなんない!!」
『言い訳するの、いい加減やめなよ。…見苦しいよ』
「根拠かぁ…それならとっくに君自身が証明してくれたじゃないか」
「………ぇ?」
富永くんは信じられない表情でリュウを見つめた。
「朝吹さんが殺された時、君なんて言ったか覚えてる?」
『【まさか、ビデオに映ってた時計が30分進めてあったなんてね】
 富永くんはそー言ったの』
富永くんは、はっと目を見開いた。
「朝吹さんの部屋から発見されたテープに、
 何分間バラエティー番組が録画されているかは、あの時はまだ分からなかった。
 君の言葉を聞いた後、僕達が検証して…初めて分かったことなんだよ!」

「亀田くん殺しに関する君のアリバイももう崩れてるよ。
 あの殺人が2日に渡って行われてたことはお見通しだ」
段々と富永くんの様子がおかしくなっていく。
「それと飴でできたこのガラス瓶を使ったこともな」
目が…泳いでいる。
「中学ン時、富永のお父さんの撮影現場見学させてくれて、
 そん時にもらったガラス瓶を俺達の映画で使ったんだ…」
佐久間さんは思い出したようにつぶやいた。
…これで、全てが繋がった。
そして、富永くんは視線が定まらないのかあちこち見ている。
「おそらく彼女はその様子を収められたビデオを僕に見せようとしたに違いない。
 でもその電話中、君が偶然部屋に訪ねてきた。
 ひょっとしたら、テープが気になって盗み出すつもりだったのかもしれないなぁ?
 そこで彼女が僕にそのテープを推理の材料として見せるつもりだと聞かされ、
 咄嗟に彼女の殺害を思いついたんだ」
そこまで言い終わったリュウは、怒りなのか悲しみなのか…、
何かに満ち溢れたんだと思う。
大きな音を立てて立ち上がった。
リュウをここまで奮い立たせるなんて、信じられない。
「なんの罪もない彼女を………


 もう言い逃れはできないぞ富永」

全員の視線は富永くんに絞られた。
みんな信じられないんだろう、中学の頃の仲間が、仲間を殺した。
「どうして…中学からの仲間を虫ケラみたいに殺せたの?
 ビデオに映ってた映画研究部は、みんな仲のいい友達だったじゃない!!」
アタシはみんなで見た撮影風景を思い出す。
あの時のみんな、本当に楽しそうだったのを思い出す。
すると、富永くんは狂いだしたように笑いだした。
……いや、本当に狂ってしまったのかもしれない。
大笑いだ。
「仲間…?……、友達??」
突然笑いが止まった富永くんは、もう別の顔だった。
「いや、友達じゃない。いつか蹴落とさなきゃならない、
 その他大勢だ……!!!信用できる奴なんて誰1人もいなかった。
 たった1人…、小椋絵美菜のぞいて」
「もしかして……彼女と?」
「俺と絵美菜は愛し合ってた…、深い心のつながりで……結ばれてたんだよ」
「でもお前らそんなそぶり…」
「みんなが知らなくて当然だよ!!
 …俺と絵美菜はネットの中で付き合ってたんだからな」
空気がはりついた。
アタシは身動きがとれないほどに。
…この人は一体何を言ってるの。

「俺は学院の映画愛好者が集まるサイトでアニメっていうH.N.の子と、
 恋人みたいな関係になった…そしてある時気づいたんだよ。
 彼女の名前をローマ字にし、逆から読むと【エミナ】になるって…。
 俺、マヂで鳥肌立ったよ。
 だって俺彼女のコト中学ン時から、ずーっと好きだったんだもん。
 ふふ…、まぁ…あっちは俺の正体に気付かなかったみたいだけど。
 時期が来たら…俺の方から告白するつもりだった…。
 でも、それなのに…ある時からアニメを攻撃する中傷が、
 何十人もの名前で書き込まれるようになった…。
 …っ、なんとかして、その書き込みをやめさせたかった…
 でも…どうにもならなかった…。
 そして…とうとう傷つきやすい繊細な絵美菜はネット上からも…
 実生活の学校からもいなくなっちゃったんだよっ!!
 …彼女はもう、この世のどこにも存在しない…。
 俺には分かるんだ…彼女の痛みや…苦しみが…」
「…それで、彼女を追い詰めた相手を探し、亀田くんにたどり着いたんだね?」
「アイツは日頃から自分より成績の良い絵美菜を嫌ってた。
 陰険にしつこく追い詰めて、俺の絵美菜を死に追いやったんだよ!!!
 亀田だけは…亀田だけは、絶対に許せなかった…。
 …だから、俺の手で…」
だからって…だからって亀田くんを殺すなんて間違ってる。
殺すだけが手段じゃなかったはずなのに…。

「待って下さい!!!!」
…突然遠矢さんが立った。
「あの…小椋絵美菜さんが、何かの理由で姿を消したのは事実だと思う。
 でも、少なくともその理由は、亀田くんにネットで袋叩きにされたからじゃないわ!!」
「お前に何がわかんだよぉっ!!!!」
「アニメは恵美奈さんじゃないの…!!!」
遠矢さんは涙ながらに言った。
アニメが……絵美菜さんじゃ、ない?
「…私よ、彼女の名前を並び替えてアニメのH.N.を使って、
 掲示板に書き込みをしてたのは、私なの…!」
「え?」
……それって、もしかして、何それ?!
アニメは絵美菜さんじゃなくて、…遠矢さん?!
じゃぁ富永くんとネット上で付き合ってたのは、遠矢さんだったの?!

「私も中学の頃から、彼女のこと憧れてたわ。
 あんな人になれたら、どんなにいーだろう…って。
 それで私、ある時思いついたの…こんな私でも理想の絵美菜になれる場所がある。
 …インターネットの中なら、理想の自分になれる…って。
 初めはほんの軽い気持ちだった…でもやっていくうちにどんどんハマってって…。
 アニメを名乗ってる私は、美人で…明るくて頭もいい理想の高校生」
「嘘だ!!!!!…いい加減なこと言ってんじゃねぇよ!!」
そう言って富永くんは遠矢さんに襲い掛かった。
小さな悲鳴をあげる遠矢さん。
キンタはすぐに駆けつけて、富永くんを遠矢さんから剥がした。
床に転がる富永くん。
信じられないのか、狂いに狂っている富永くん。
次は投げられたキンタへと向かって行った…そしてキンタの胸倉を掴む。
キンタはものともせず、近くにあった飴ガラスの瓶で
富永くんの頭を殴った。
そして、少しフラついた富永くんはその場に崩れてしまった。
部屋にはキンタは手についた飴をほろう音が響く。
もう…、全てがめちゃくちゃで、もう意味分んない。

「嘘だ…」
「その子は嘘なんかついちゃいない」
聞き覚えのある声がした。
振り返るとそこには――――「七海先生?!!」
「彼女の言っていることは真実だ。小椋絵美菜は自殺なんかじゃない。
 ……――恋人と駆け落ちしたんだ」
『か、かけおち…?!』
「…駆け落ち……?」
そして七海先生の手には4枚の写真、小椋さんと…男の人だ。
ふと富永くんを見ると、目にはもう光が無かった。
「相手は高校中退の、役者志望の男だ。
 彼女は厳しい両親と、自分が優等生であるプレッシャーに耐えきれず、
 何も言いだせないまま…全てを捨てたそうだ…」
「…どうしてそこまで…?」
「美南の偽ブログ騒動を聞いて、アニメの正体は彼女じゃないと考えた。
 あまりにも分かり易いアナグラムだったんでなぁ。
 アニメの発信源が、遠矢邦子ということも…間違いない」
「そんなぁ…それじゃあこの犯行は、富永くんの動機そのものが、
 インターネットの中だけの虚構だったっていうの?!」
富永くんには意識がないように見え、遠矢さんは泣いている。
そんな、そんなことがあっていいはずがない。
富永くんの勘違いで、2人の人が死んじゃったんだよ?!
キュウも突然の事態に動揺を隠せない様子だった。

「富永くん…どうして彼女が攻撃されてた時、自分の正体を明かさなかったの?!
 何で現実の世界で、彼女を守ろうとしなかったの!!
 …そしたら、こんな誤解を招くこと…。
 僕達が、生きていかなきゃいけない世界は…ネットの中じゃないんだよ?
 現実の世界は、苦しい事や思い通りに行かないコトだってたくさんある。
 でも、こうなりたい…って夢があるなら、そこから逃げちゃダメなんだ!!
 …ちゃんと…ありのままの自分を受け入れて、立ち向かうしかないんだ」
「夢。
 忘れてたね…、富永くん…
 私達、いつか世界中の映画ファンをスクリーンに釘付けにするような
 作品を作ろうって…そう言ってたよね」
遠矢さんが涙ながらに話す。
時折混じる笑顔には、想いが混ざっているのが何となく分かる。
「富永……富永ぁ…、とみながぁ……富永ぁ!!!富永!!!!」
佐久間さんが必死で富永くんをゆする。
佐久間さんから一粒の涙が流れた。
その涙をきっかけに、アタシの溜まっていた涙も溢れ出してしまった。
そして佐久間さんは持っていたカメラを富永くんに向ける。
カメラを向けられて、何を思ったんだろう…富永くんは。
少しずつ目に光が宿ってきた。
そして

「――――――……夢、」






「全部、自分で考えたのか?」
「インターネット上のサイトです。
 そこに、亀田に対する恨み辛みを書き込んだらメールが届いたんです。
 完全犯罪の計画書を売ってる人間がいる、って」

アタシ達は後日、富永くんの取り調べに立ち会いした。
夢、と呟いた富永くんの姿はもうなかった。
口調は淡々としていて、質問されたことに対して答えているだけ、
感情が無いような表情だ。

そして、【完全犯罪の計画書を売っている人間】には驚く。
ネット上でも広がっている程、有名なのかな。
取り調べをしている諸星さんは、目の色を変えて次の質問へ急ぐ。
「…それで、どうしたんだ」
「その人を紹介してもらって、会いに行きました」
「どんな男だ」
「…普通です」
「ん…、何か…覚えてることはないのか」
「覚えてる、こと?」
そう呟いたかと思うと、富永くんの顔はニヤけ始めた。
最終的には声を出して、笑う。
ついにはイスから立ち上がり、走り出し、壁にぶつかる。
「おいっ、やめろ!!」
諸星さんは富永くんを必死で止めようとする。
猫田さんもいち早く駆けつけ、富永くんを押さえる。
「誰かーっ!!誰か来ーいっ!!!!」
「おい、人を呼べっ!!!」
アタシ達は、それを黙って見てるしかなかった。
富永くん…あんな笑顔で笑う人が、こんなにも変わってしまったなんて。
どうして、人を…友達を、仲間を殺すことなんて思いついたんだろう。
どうして、そんな簡単に殺せたんだろう。
富永くん……アタシ達と居た、あの時は偽りだったの?
バレないように必死で、何とか計画を実行したくて…。
教えてよ、何で、仲間を殺せたりなんか、すんのよ。


その場に居られなくなったアタシ達はミッションルームに戻った。
ミッションルームに戻ったからといって、空気が変わることはなかった。
みんなただ、この空気が壊れるのを待っていたのかもしれない。
沈黙は流れていくだけだった。
「七海先生…何を隠してるんだろう」
1番に沈黙を切り裂いたのは、メグだった。
アタシは混乱していて気付かなかったんだけど、
さっきリュウに聞いたら、富永くんが暴れ出した時「まだ御催眠だ…」と、
呟いていたみたいだった。
「俺達の知らないところで何かが起こってる…」
キンタが重く口を開いた。
数馬はそっぽを向き、リュウは読んでいた本を閉じた。

「そういえばメグ」
数馬は今までとは少し違う、明るい口調で話し始めた。
「例のブログを立ち上げた相手、分かったよ」
「誰だったの?」
『ちゃんと調べてくれてたんだあ』
「うるさいよ…名前は本条恵12歳、メイド姿のメグを見てずっと憧れてたんだって」
「メグの知ってる子?」
キュウが心配そうに問いかけた。
「ううん」
「本人も反省してるみたい。ブログも閉鎖したよ」
「ありがとう、色々動いてくれて」
「まだ早い段階で気づいたから良かったのかもしれねぇなぁ。
 そういう思い込みって、変な方向に膨れ上がると手がつけられなくなるからな。
 …今回の事件みたいに」
『良かったね、メグ』
「うんっ」
「梓紗は…ブログ作られないしてない?」
『え?リュウ…アタシに限ってあり得ないからっ。メイドやってるわけじゃないし…』
「まぁ、メイドやってたら僕が許してないけどね」
『なっ』
「ほんっと、リュウは全く…」
メグが笑いながらアタシ達に言った。
「でも…許せないのは、人のそういう感情を利用して殺人をけしかけた奴だ。
 …僕は、絶対に許せない…!!!!」
キュウの正義感にはいつもやられる。
アタシ達だって、常にこういう感情持ってないと。

すると、奥から何かが近付いてくる音がする。
出てきた人物にアタシ達は反射的に立ち上がる。
「団先生…」
「七海から忠告を受けた。 
 …そろそろ君達にも全てを話すべきだとねぇ…」
そう言うと団先生は、杖を使い思い切って立ち上がった。
アタシ達はそれに驚かされる。
「君達に明そう!!!…我が宿敵、冥王星の正体と彼らとの戦いの歴史を…」

みんなそれぞれ、驚いていた…もちろんアタシもだ。
冥王星っていうのは、どこかで聞いたことのある組織だ。
…だけど、みんなの驚き方とは少し違う…リュウを見つけた。

リュウ…
リュウも何か隠してるんじゃないの??

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