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ドリーム小説
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*第3話*~小さな恋に魔の手が迫る! ④

アタシは昨日の神社でのコトも気になったけど、
やっぱり事件が気になったので、例のマンションに来てみた。
ミッションルームに行ったら誰もいなくて、
じゃぁ事件現場行ってみよう…というコトで来てみたんだけど…。

行く途中であの花屋さんに寄ってみるコトに。
すると、数馬が店の前のベンチに1人で座っているのが見えた。
すぐに近づこうとしたけど、店から瑶子さんに話しかけられたらしく、
数馬は席を立ってしまう。
あ、と思って方向転換をしようかと思うと数馬は1人で歩きだしてしまった。
アタシは急いで数馬の後を追う。

『よっ、数馬!!!』
「…もしかして、ずっといたなんて言わないよな?」
『言わない言わない!!!たったさっき見つけただけ』
「ホント?」
『ホントだってー!!!…それより何話してたの?』
「メアド…ゲットしちゃったんだよ!!!」
『嘘、すごいね!!』
「実は瑶子さんに声かける前にメグとも会ったんだ。
 その時にちょっと励まされちゃって…なんとか聞けたんだよ」
『へぇー…アタシにはそんなコト一言も言ってくれないけどねー数馬?』
数馬は気まづそうな顔でアタシを見る。
「はいはい」と適当な返事で返された。
横断歩道と渡り終えた直後、数馬の携帯が鳴る。

『数馬、携帯』
「あ、ホントだ」
携帯に出ると、それはメグからの電話だった。
「えっ!?どーいうコト?!」
数馬が大声をあげる。
何?って聞いたら「瑶子さんが、危ないって…」。
普段なら絶対に見せないような表情でアタシに言う。
アタシは数馬の耳元にある携帯に耳を寄せる。
「彼女、スクラップマーダーの殺害の様子を偶然電話で聞いていたみたいで、
 今店に電話してみたんだけど、彼女配達に出たまま行方が分からないって!!!」
「…えええ?!?!」
しばらく経つと数馬はさっきよりも大きく驚く。
もしかしたらスクラップマーダーの罠かもしれないと、勘がうずく。

「ちょっと電話貸して」
リュウの声だ。
「数馬、梓紗と一緒なのか?」
「うん」
「……梓紗を、頼むな」
『リュウ?!』
アタシは強引に数馬から電話を取る。
「あ、梓紗?!ケガ、すんなよ?何かあったら無理矢理でも数馬連れて逃げろよ?」
『わ、分かってるよ!!!』
そう言って数馬に電話を渡した。
「うん、分かった、じゃぁ」
数馬は電話を切る。

すると、その瞬間、数馬の携帯にメールが届く。
「…瑶子さん!!!」
「何?!瑶子さんから?!」
メールの内容は1枚の写真が添付されてるだけだった。
「この場所は……」
これ…今居る場所?!SOSだしてるのかな!?
数馬は素早くパソコン、ケーブルを出し携帯とつなぐ。
「この建物が見えるのは、方向から考えて…この廃工場だけ!!!」
『早く行こう!!ここからそう遠くないでしょ!?』
「言われなくても、行くよ!!!」
アタシと数馬は走る。
数馬にいたっては走りながらキュウに連絡を取っている。
「キュウ!!瑶子さんは廃工場だ!!!ボク先言ってる!!!」
アタシと数馬は走る。
そんなに遠くない廃工場に向かって全力で走る。
1秒でも遅れたら瑶子さんが危ないと思うと足が勝手に動く。

廃工場に着く。
ここに瑶子さんがいるはず。
足音を消し、数馬と中に入る。
だけど、整え切れない息切れは消せなかった。
鉄塔と鉄塔の間から見えたのは…瑶子さんと、落合さんだった。
な、なんで落合さんが?
もしかして…スクラップマーダー?!
あ、そっか!!!あの部屋から誰にも怪しまれずに部屋を出たのは落合さんしかいない!!!
アタシは一瞬にして察するコトができた。
数馬は少し離れると息を整えるように背を向けた。
何を考えたかと思うと。
ナイフが振りかぶられた時、飛び出して行った。

「やめろ!!!!」
『ちょ、数馬!!』
アタシは数馬の突然の行為に驚いて一緒に出てしまう。
「誰だ貴様」
落合さんは重く口を開く。
「あんたがここにいることは警察に通報した!
 もう逃げられないぞ、スクラップマーダー!!!!」
「お前も邪魔をするのか。…じゃぁお前から始末してやるよ」
数馬はその言葉を聞いた瞬間、背負っていたバッグを投げつける。
その抵抗はあっけなく払われ、首に腕を巻かれ動けない状態になってしまった。
そしてミゾオチに膝を一発入れられた数馬はぐったりと倒れこむ。

『いやっ!!!数馬、数馬!!!』
「うるさいな。あー…コイツはもう伸びてる。お前も始末するか?」
『ひっ…』
落合さんの目がアタシに向けられる。
【何かあったら無理矢理でも数馬連れて逃げろよ】
リュウの声が脳裏によぎった頃には遅かった。
数馬は倒れ、アタシはもう動けない。
それに目の前に震えている瑶子さんがいるんだもん。
ごめん、リュウ、逃げられなかった。
落合さんがナイフをかまえ、アタシに向かって歩いてきた。
目の前まで歩いてきたかと思うと落合さんはさっきの瑶子さんのようにナイフを振りかぶる。
ああ、刺される。と察したアタシは無意識に目を瞑る。

「数馬ぁ―――!!!!!」
「梓紗、いるのか?!」

キュウ…と、リュウの声だ。
アタシはゆっくりと目を開けた。
目の前には振りかぶられたナイフがある。
キュウ達の存在に気づいた落合さんはアタシの肩を強く押した。
アタシは震えが止まらなくなってその場にグシャっと倒れた。

「お前達、探偵学園?!」
「まさかあなたが犯人だったなんて…なぜです?
 警察官のあなたがどうして…??」
「警察官、だからこそ当然のコトをしたまでだ」
「…え?」
キュウの驚く声が聞こえる。
アタシはそこからは意識が朦朧としてよく覚えていない。

「俺が警察でいくら喚こうが、管轄が違う、被害届が出ていない。
 そう言って誰も正義の裁きを行おうとしない…!!だから俺が、ゴミ掃除をしてやった。
 周りを見渡してみろ!!アイツらが死んで、みんな喜んでんじゃねぇか!!!」
「じゃぁ瑶子さんは?!瑶子さんや数馬、梓紗は何をしたって言うの?!
 罪の無い人を自分のために殺そうとするのが正しいって言うの?!
 …そんなのおかしい。間違ってる!!!!あなたがいくら正義を気取ったって、
 そんな身勝手な理屈で人の命を奪うことは絶対に許されない!!!
 ……僕達はあなたを絶対に認めない。
 あなたはただの人殺しだよ!!!!!!!!」
「違う!!!!!!!!」
そう言って落合さんはキュウ達に近づく。
ジリジリと後ずさりをする3人。
危ないよ、ケガしないでって言ったのはそっちなんだから、守ってよ。
すると上からキンタが降ってきた!!
アタシは突然過ぎて目を丸くした。
その瞬間激しい戦いは始まった。
落合さん、キンタ、キュウは向こう側に走って行ってしまった。

「大丈夫ですか?!」
メグとリュウが瑶子さんのもとへ走って行く。
ああ、良かった、瑶子さんが無事で…。
数馬も膝をくらっただけでケガはしてないと思うし…。
あとはキンタとキュウがケガしないでくれれば。

「梓紗!!!大丈夫か?!」
リュウの声がする。
「梓紗、大丈夫か、立てるか、ケガしてないか?」
リュウがアタシにそっと腕を回して起き上がらせる。
『ん…大丈夫。それより…数馬と瑶子さんは?無事?』
「うん、大丈夫。大丈夫だよ。ああ、もう、ホント心配したんだから。
 来た時、梓紗にナイフが向けられててホントに、どうしようかと思った」
『大丈夫だって!ほら、ケガもしてない…あ』
足には大きな擦り傷があった。
多分キュウ達が来たときに安心して倒れちゃった時の傷だ。
「うわ、大きい傷あるじゃん。ミッションルームまで我慢できるか?」
『だから、大丈夫だって!!心配し過ぎ』

数馬の方にはキュウが行ってるみたい。
チラッと様子を見たら、キュウが数馬を起こしてあげてて、トンと背中を押してた。
きっと、瑶子さんのとこに行きな…って意味だと思う。
数馬は瑶子さんに歩み寄る。

「…瑶子さん……」
数馬に気付いた瑶子さんは座っていたイスから立ち上がり、数馬に近寄る。
そして「ありがとう」。
そう呟いた瑶子さんは数馬を抱きしめる。
そう言った後に瑶子さんは数馬から離れ、
「ありがとう、数馬クン」
数馬の目を見て、ゆっくりと言った。
「ありがとう」
そしてまた抱きしめる瑶子さん。
怖くて震える瑶子さんをただ見つめていた数馬。
何を考えてるんだろう…。

「梓紗」
『ん?』
「ホント心配したんだから」
そう言って瑶子さんのようにアタシを抱きしめるリュウ。
『うわっ』
思いっきり抱き寄せられてたのと、突然でビックリして声が出た。
『ちょ、みんな居るよっ!!』
「別に大丈夫だよ、みんな数馬の方見てるし」
アタシは少し戸惑ったけど、言ってみることにした。
『……ありがとう、リュウ』
リュウは少し驚いたようにピクッとしたけど、さっきよりも強い力で抱きしめてくれた。
「いいよ、何でも。梓紗が無事ならそれで」

しばたくすると、警察が来た。
数馬が通報したんだって。
廃工場にはアタシら6人と諸星警部、猫田さん、そして落合さん、警察しかいない。
暴れる落合さんを警察がおさえる。
それで落合さんは抵抗している。
「落合!!!!…厳しくいくぞ!覚悟しとけ!!!」
そう言って手錠をかけた時だった。
落合さんは今まで暴れていたのが嘘のように突然グタッとし始めた。
終いに何も考えていないような眼で連れて行かれてしまった。

パトカーを見送った。
…最初に口を開いたのはキンタ。
「さぁ、俺達も帰るかっ」
「帰ろっか」
「うん」
そう言ってみんな歩き始めたけど、リュウの足取りが重い。
それに気づいたアタシとキュウは立ち止まる。
「…リュウ」
キュウが声をかけた。
下を向いていたリュウがゆっくり顔を上げてキュウを見る。
「昨日…男の人に呼びとめられて、妙なコト言われたんだけど」
『あ、』
リュウは「何?」と言いたげな顔で少し首を傾げる。
「【天草流の正体を知ってるか】…って」
アタシもリュウを見る。
それを聞いた瞬間、リュウはキュウから目をそらした。
「それって…どういうコト?」
『…リュウ、アタシも一緒にいたんだけど…どーいうコト?』
リュウは下を向き続けている。
「今はまだ…話したくないんだ」
リュウはしばらく下を見続けた後、1人で歩いて行ってしまった。
「わかった!!!…僕からはもう、詮索しない」
足を止める。
「だから、リュウから話してくれるまで待つから、ね」
『あ、アタシも待つ!!!』
リュウはすたすたと歩いて行ってしまった。
その後はキュウとまた昨日と同じ道を歩いて帰った。
神社の前を通るとき、少しだけ、寒気がした。

次の日、ダーツバーの前で少しボーッとしてたらキュウとキンタが来た。
アタシらは話が盛り上がって、笑いながらミッションルームへと到着。
すると、イスに座っていたメグの姿が1番に飛び込んできた。
笑いながら入ってきたアタシ達に「しーっ」と呼びかける。
「アレ?数馬、どうしたの?」
『何?暑さでダウン?具合悪いの?』
「それがさー…」
メグが立ち上がり、アタシ達の方へ歩いてきた。
「ふふ……瑶子さん、結婚するんだって…!!」
「ええっ?」
「ええ?マヂで?」
『嘘ぉ?!』
「え…じゃぁ、数馬…フラレちゃったの?」
その言葉を聞いた数馬は机に伏せていた顔がグンッと起き上がった。
「ちゃん、ちゃんと告ったわけじゃないからフラれたとは…いい、言えないよ」
「どんだけ負けず嫌いなんだよ」
『そうだね、うん。数馬はまだ告ってないもんねー?』
「梓紗、それ、どーいう意味」
『いや?』

すると、数馬の携帯の軽快な着信音が鳴る。
ゆっくりと携帯に手を伸ばし、電話に出る数馬。
「もしもし、……はぁ、はい。申し訳ありません。
 ゲーム製作の方は当分休ませてもらいます。今、本気でやりたいコトがあって…
 失礼します」
電話を切った数馬にいち早く話しかけたのはキュウだった。
「ねぇ数馬…本気でやりたいコトって…」
「デジタルだろうと、アナログだろうと…キュウ達には負けないからね!!!」
数馬はアタシ達の方を指差して言い放った。
『な、何?どうしたの』
その次にバシッと見せてきた紙には、
「何それ」
「…探偵養成ギブスさ…」
数馬はメガネを上げてしゃべる。
「これさえあれば、キンタにも負けない体力がつく!!!」
「こんなの作ってる暇あったら、腕立てでもやってろ!」
キンタは数馬の持っている紙を取り上げた。
数馬は「ちょっと」とすごく返してもらいたそうだ。
数馬から取り上げた紙とキンタはメグに渡し、メグの方に数馬が来たかと思うと、
その紙をアタシによこした。
「エネルギー向ける方向間違ってるよねー、はいっ!!」
『よくできてると思うけど…これはねぇー?』
「ちょっと、返せって」
数馬が来たからアタシはキンタに紙を渡す。

…―――その日はリュウがミッションルームに顔を出すことはなかった。

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*第3話*~小さな恋に魔の手が迫る! ③

メグ、キュウ、キンタはその【SAHARA】っていうクラブに行くって言うから、
アタシもしかたなく…行くことにした。
1回家に帰ってからって言われて、渋々家に帰って着替えることに。

メグがリュウも一応誘ってみたら?って。
電話したら「梓紗は行くの?」って聞かれた。
「行くよ」って言ったら「他に誰居るの?メグと2人?」って心配そうに言われた。
キュウとキンタもいるって言ったら、
「んー…、まぁそのキンタがいるんだったら大丈夫か、僕はいいや。気をつけてね」
って言われてすぐにブチッと切られちゃった。

「家にある1番ギャルっぽい服着てこなきゃ、ナメられるからね!!!」

メグのその一言が頭を離れず、服を探してたら、
すっごーいチャラい、ジャラジャラしてるのがあった。
なんでもってるんだろう…とか思いながら着替える。

集合場所に着くと、メグがアタシ以上のギャルさで待ってた。
「えー!!!ヤバい梓紗、そんな服着るの?!普通に可愛いじゃんっ!!!」
メグが大声で驚く。
別に…着たのは今日が初めてなんだけどね…。
カバンの中をゴソゴソとし出すメグを見てたら携帯が出てきた。

すると次の瞬間。
「いえーい♪梓紗のギャル姿ゲット☆」
キラキラの笑顔でメグが見せてきたのは携帯の中にいるアタシ。
しかも相当な真顔だ。
『なっ…撮って何すんのよ!!!すっごい変な顔してんじゃん!!消してー!!』
「これはねー、ある人に送らなきゃいけないのよねー?」
『はぁー?』
「まず、行こうっ!!みんな待ってるから!!!」

クラブの前で集合って言ったはずなのに2人がいない。
キュウに電話したら「え?!中に入っちゃったよ!!すぐそこにいるから入ってきて!」だって。
クラブの中は人がたっくさん居るし、音楽はガンガンかかってるし、
お酒やカクテルの匂いが漂ってるし、ライトがチラチラしてるし
…アタシは苦手だな、こーいうとこ。

「みーんな、怪しく見えちゃうなぁー…」
メグが店内を見物して発した一言。
『そーだねぇ…』
「ってか、何その格好?!」
「ガキっぽい格好してたら、ナメられるでしょ~?ね、梓紗」
『うんー…そーだねぇ…』
アタシはメグが振って来てたのは分かってたけど適当に流す。
「梓紗までそんな格好でさー…っていうか、僕が梓紗のこの姿見ていいの?」
『何それー!!そんなにアタシこーいうの似合わないってゆーのか!!」
「いやぁ…そーいうわけじゃなくてさぁ…」
「でしょ?!アタシもそー思ってさぁ、もう写メ送っといたから♪」
「あー、そーなの?」
『はー?誰の話??』
「梓紗はとことん鈍感だな、リュウも苦労すんな」
『何でリュウが苦労するんだよー!!!』
そう言ったらメグは少し笑ってから前へと歩いて行った。
アタシも後をついていく。

すると何かに気づいたようにキュウに話しかける。
「ねぇ」
「ん?」
「アイツさっきっから店ン中うろうろしてる」
「えっ?」
店の中は人の声と爆音で少し離れると上手く会話が繋がらない。
アタシとキュウはその話をもとに誰なのか探す。
すると、キンタが突然歩き出す。
「キンタぁ?」
『どこ行くの?』
ドンドン進んでいくキンタはメグが言っていた男の人の前で立ち止まる。
こっそりついて行くアタシ達。
…何?

少し睨みあったかと思うと男の人は笑いだした。
そして、一瞬にして抱き合う2人。
「キンタっぁ!!久しぶりじゃねぇかぁ!!!!」
「なんだよ、お前ぇー!!ここで働いてたのか、ええ?!」
「店長だ!!雇われ店長だぁ!!!」
「そーうかぁー!!!」
と言ってまた抱き合う2人。
「キーンタっ♪」
少し離れたトコから女の人の声。
「おおー、はるかもいたのか。久しぶりじゃねーかぁー」
キンタと男の人は話しながら歩きだしてしまった。
…え??
「みんな…お友達みたい…」
「はぁー…あぁ…」
『どーいう?』
キュウは感心して言葉が出ない様子だった。
そこからカウンターに座り、みんなで事件のコトについて話すことに。

「スクラップマーダーかぁ…」
「誰か、怪しい人間に心当たりないか?」
「うちは色んな連中が出入りするからねぇー…」
「じゃぁ、逆に狙われそうな人は?」
「狙われそうな人……あ!!最近うちの店によく出入りする女がいんだよ。
 そいつが、覗き部屋サイトやってて、アクセスしてきた奴に、高額請求してきて、
 なんか、あちこちで恨みをかってるらしいよ」
『覗き部屋サイトってなんですか…?』
「女の人にカメラセットして、で、着替えたり、寝てるところを
 24時間流してるサイトがあんのよ」
「その女の名前分かるか?」

するとはるかさんにパソコンで覗き部屋サイトにアクセスしてもらうコトに。
慣れた手つきでサイトを探す。
少し経つとそのサイトは現れた。
「電話してる」
覗き部屋サイトに映ってる女の人は電話中だった。
マニキュアを塗ってる様子も伺える。
するとキンタは数馬に電話を始めた。
「俺だ。今から言うサイトに映ってる覗き部屋の住所調べてくれ」

サイトの方では女の人が携帯をベットに投げ捨て、部屋を出て行った。
次に女の人が画面に現れた時にはもう遅かった。
黒いジャンパーをかぶった人が女の人を床にたたきつける。
「キンタ!!!」
「ヤローぉ、出やがった!!!」
『何、これ、スクラップマーダーだったりするの?!』
と、その瞬間。
スクラップマーダーだと思われる人物は、カメラを壊す。
やっぱりこれは計画的な犯行。
サイトの画面は全て映らなくなってしまった。
「「「『あ』」」」

キンタの携帯が鳴る。
きっと、数馬からの電話だ。
覗き部屋の住所が分かったんだ。
キンタは数馬が教えてくれている住所をメモする。
「サンキュ、助かった…」
キンタはすぐに携帯を切り「ここからすぐだ。諸星警部にすぐに知らせてくれ」
キュウが「うん」と返事をした頃にはもうキンタは走り出していた。

キュウが諸星警部に連絡した後アタシ達もキンタが残したメモをもとに、
その住所へと急いだ。
メグが「リュウにも連絡して」って。
連絡したら「すぐ近くにいるからすぐ行く」って電話切れたら5分もしないうちに来た。
どんだけ近いトコいたんだよ。

「犯人は?」
「部屋にはぁー、間違いなく鍵がかかってたんだな?」
「ああ…だから消火器でぶっ壊して入ったんだろ」
「キンタ、本当にこの部屋には誰もいなかったの?」
「ああ、見ての通りこの部屋にはどこにも隠れる場所なんてないしな」
「ってことはぁー…、部屋の鍵は犯人が持ち出したっていうわけか?」
「諸星さん!!!」
猫田さんが来る。
鍵を持っている。
これって…。
「部屋の鍵、被害者の着衣から発見されました。スペアキーも部屋の中から」
「えっ…何ぃ?」
「じゃぁ…この部屋は、密室だったってこと?」
その密室という言葉にアタシは過剰反応してしまった。
密室??そんなものは存在しない。
どこかに必ずトリックがある筈だ。
リュウやキュウ、キンタも少し顔付きが変わっていた。

「ご苦労様です」
「…あの」
キュウが玄関先にいる警官に話しかける。
…あ、この人、諸星警部と話をしてた落合さんじゃない?
「おまわりさんは諸星警部の指示でこちらに来たんですか?」
「いや、匿名の通報があったんです」
「あ、じゃぁキンタを犯人と誤解しちゃったわけですね」
「僕の早とちりです、申し訳ありませんでした」
そう言って落合さんは深々と頭を下げる。
「落合、もう引き上げていいぞ」
ほら、やっぱり落合さんだ。
「はい、失礼します」
落合さんは厳つい敬礼をすると、部屋から立ち去って行った。

「ああ!!それと、被害者の携帯が見つからないンですが…」
「あ?」
『犯人が侵入してきたとき、被害者、携帯でしゃべってましたよ?』
「うん!!…ってコトは携帯は犯人が持ち去ったってこと?」
「もしかして…携帯で話してた相手は、犯行の一部始終を聞いてたのかも…」
『え、嘘、それって…』
「だとしたら、その人が危ない」
まっ先に矛先がその人に向かう。
「おい猫田!!急いで通話記録を調べろ!!!」
「あ、はい!!!!」

その後アタシ達は解散した。
帰る方向が途中まで同じキュウと一緒に帰るコトに。
リュウに送るよって言われたけど、夜遅いしリュウも早く家に帰りな?て言ったら
何か、大人しく「うん、じゃぁ、キュウよろしくね」って帰っちゃった。
なにか用事でもあったのかなぁ?

神社の前の通りをキュウと2人で並んで歩く。
「密室殺人なんてありえないよなぁ…」
キュウが口を開いた。
『だよねぇ…』
「でも…あの部屋には人が隠れる場所なんて無かった…」
『いや、でも絶対トリックがあるって…ん?』
遠くから聞こえてくる口笛。
…誰?
キュウと一緒に目線をやる。
アタシは怖くてキュウに少し隠れた。
口笛の人はアタシらの近くまで来ると、立ち止まった。

「探偵学園のキュウくんと梓紗さんですね?…ふ」
「はい」
『な、なんですか?』
「君達は…天草流の正体をご存知ですか?」
「え?」
な、何?この人。
どこかで見たような気が…。
リュウの…何?
「彼がどんな目的で探偵学園に入ったのか、確かめてみるといいですよ
 きっと、興味深い答えが返ってくるはずです」
アタシとキュウは男の人を凝視する。
そして、男の人は振り返って不気味に言う。
「いずれまた会いましょう。それが我々の宿命です…ふふ」
そう言ってアタシ達の前から姿を消した。

『キュウ…』
「な、何なんだろう。リュウに何があるんだろう」
『…何もあるわけないじゃんっ!!!怖いから、早く帰ろうよ…』
「そ、そうだね」

アタシはその日の夜、考えすぎて眠る事ができなかった。

拍手

*第3話*~小さな恋に魔の手が迫る! ②

事件現場から少し離れたところでユリエと話す。

「今回の事件も、冥王星が絡んでいるのか?」
「だったらどうします?」
僕はこのユリエの笑顔が嫌いだ。
この口だけが笑っていて目が笑っていない。
こんな笑顔を見せられて不快しか湧き上がってこない。

「探偵学園の生徒として、やるべきことをやるだけだ」
僕はそれだけ言って立ち去ろうとすると、ユリエが刺すように話しかける。

「なぜ、冥王星から逃れようとするのですか?」


―――なぜ。

「…生まれながらに犯罪者の宿命を背負わされた人間の苦しみが、あんたにわかってたまるか」

わかってもらおうなんて思わない。
誰にもわかってもらうつもりなんてない。
…嘘。
誰もわかってなんてくれるはずないじゃないか。

「では冥王星を敵に回す覚悟が本当におありなのですか?
 Qクラスのメンバーがあなたの正体を知ったとき、手を広げて迎えてくれると思いますか?」
「…っ」

うるさい。
そんなこと、最初から分かってる。

――リュウが謝るコトじゃないよ――

梓紗の言葉がよぎる。
だって、君は、それを知ったら僕から離れていくだろ?
それが怖い。
君が怯えた顔をして、今までのことを捨て去ろうとするのが怖い。
僕は君がくれる優しい笑顔に甘えている、弱い人間なんだよ。

「あとで辛い思いをするのは…あなたですよ?」
頬に触るユリエの手が冷たい。
知ってるんだよ、そんなこと。
それを知ったときに離れていくみんなの姿が。
こんな現実、僕が1番信じたくないんだよ。

もう、やめてくれ。
頼む。
これ以上、
嫌だ、やめてく『…あの、』

突然聞こえた梓紗の声。
小さかったけど、しっかりと聞こえた。
瞬間、僕はユリエの手を振り払い、振り返る。
そこには走ってきたのか息が切れている梓紗。
ああ、こんなにも安心を与えてくれるのか。
一気に全身に血が通ったような救い…君しかいない。

『あの、すいません。あっ、声かけちゃって。話の途中だと思いますが…呼び出しが…』

梓紗はかなり困惑した様子で言葉を濁す。
ユリエは、あの笑みを残し、その場を去った。
やっぱり僕は梓紗に助けてもらってばかりだ。
梓紗が来ていなかったら…僕はどうなっていたんだろう。

「…話、聞いてたのか?」
『ううん、すごく探して、見つけた途端に話しかけちゃって…。
 別に話すことも何にも考えてなかったのに…自分でもビックリしちゃった…それに、』
「それに?」
『リュウにすごく話しかけたかったの。実は…呼び出しなんかなくて…。
 話しかけなきゃ、っていう、何か、感情が…』
「そっか」

話、聞いてなくて良かった。
すごい焦ってる様子だったら話を聞いてなのかと思った。
本当のことを知ったら君はそんな顔するんだろう。
軽蔑?呆れる?恐れる?…離れていくことは、確かだろうか。
『ごめんね、勝手なコトして。話の途中だったでしょ?』
「…ありがとう」
『?』
僕は梓紗に手を伸ばし、ゆっくりと自分の腕におさめる。
甘くて温かくて安心して、こんなにも僕に愛しいと思われる君がズルい。

『…リュウ!?』
「待って、ちょっとだけ」
『…?分かった…』
「顔、赤いね?」
『…なっ!』
君の慌てる様子がおかしくて、少しだけ笑った。
すると、それにつられて笑う君のその顔。
この笑顔が絶望に変わってしまうなら、僕はずっと嘘つきでいい。
弱い人間でいい、君が笑顔でいてくれるなら…そう、思った。



ー待って、ちょっとだけー

リュウがそんなコト言うからアタシは大人しくリュウの腕の中。
あの女の人は誰?
リュウと何を話してたの?
リュウは何にあんなに怯えていたの?
走って探して見つけたリュウの手のひらは強く拳になっていた。
アタシはあの時どうすれば正解だった?
どんな言葉をかければよかったのかな?

振り向いてくれたリュウの顔の一瞬は、すごく悲しい目。
誰かに助けを求めたくて、仕方がない目をしてた。
すぐに駆け寄りたかった。
だけど、足が動かなかった。
リュウがアタシに助けを求めてる。
そう思った瞬間、足が固まった。
どうすれば助けられるの?アタシは言葉を濁すばかりだった。
その後に聞いたリュウの「ありがとう」は情けなく感じた。
もっと気の利いた行動はできないのか、もっとリュウを楽にさせる言葉はないのか。

やっぱりアタシはリュウに助けてもらってばっかりだ。
ねぇリュウ、アタシはどうしたらいいの?わかんないよ…。


リュウが先に帰っててって言うから、アタシは仕方なく1人で帰る。
リュウ、またあんな風になんないかな?
言葉に出して聞けなくて、ちょっとだけリュウを見つめてたら
「大丈夫だよ」って言ってくれた。
アタシはまだ少し心配が抜け切れてないけど迷惑掛けたくなかったから帰ることにした。

「あれ?梓紗なんかあった?」
ミッションルームに入ると、いち早くキュウに気付かれる。
誰にも言わないつもりだったけど、キュウにはごまかせないなぁ。
『え?なんで?別になんもないよ?疲れただけだよっ』
「…そっか!」
キュウは察したように話を打ち切ってくれた。
キュウのそういうトコ尊敬するよ、本当に。

「それにしても、1日歩いても手がかりゼロかぁー!」
「被害者の年齢も職業もバラバラ、接点は何も見当たらないもんなー」
メグとキンタがソファーにもたれかかって言う。
相当疲れてるね、これ。
『え?あったじゃん、共通点』
「え?」
「2人とも、人に恨まれてた。
 こいつに復讐してやりたいとか、こらしめてやりたいとか、そういう人たちの心の叫びを
 聞いた犯人が、今回の事件を引き起こしたんじゃないかなって考えられない?」
「殺された連中は社会のゴミだった。
 だから犯人は、正義の味方を気取ってそういう連中をゴミ箱に捨てたっていうのか?」
『すごい正義感だけど、方向が間違ってる』
「でも、僕は絶対に犯人を認めない。どんなに悪人だろうと、人殺しは許されることじゃない。
 絶対に犯人を捕まえてみせる!」
キュウの言葉にアタシは深く頷いた。

「そうすると、問題は、犯人が彼らの存在をどこで知ったかってことか」
メグが呟く。
「地道に調べて回るなんて、相変わらずアナログだね」
『数馬?』
数馬が突然しゃべりだす。
「そういう数馬はネットで何か情報掴んだの?」
「別に」
「真剣に捜査もしないで、そういうコト言わないでよ!」
「こっちはゲームのプログラムとか色々やることがあったんだよ!!」
「何逆ギレしてんだよ」
数馬の様子がおかしい。
瑶子さん関係かな?って思ったけど、数馬だってその辺のメリハリはつけれるだろう。
もっと、もっと深い悩みだな、これは。
解決するまで放っておいてやるしかないね。

「数馬!」
立ち去ろうとする数馬にキュウが声をかける。
「…どうしたの?」
「…キュウはいいよなぁ、迷いがなくて」
「え?」
数馬は何を言ったかと思うとそそくさと部屋を出て行った。
キンタが「なんだアイツ」と呟くのが聞こえた。
「迷いがなくていいなぁ」…か。
アタシもキュウのコトそう思うな。
悪い意味じゃなくて、1つのコトに真っ直ぐ向き合えてるってのが…。
数馬もきっと…そういうことなんじゃないの??


次の日、また被害者が出たと聞いて、アタシ達はすぐに現場に向かった。
現場には警察、野次馬、パトカーやらうじゃうじゃしてた。
そこには当然、諸星さんと猫田さんの姿も。
「諸星さん!」
「…何しに来た」
「今度の被害者は?」
「おう、この辺の悪ガキだ。…って、何で答えてんだよ!」
そう言って諸星さんは自分で自分の顔をひっぱたく。
隣にいた猫田さんは「自分で突っ込んでどうすんですか?!」と驚いていた。

「すみません、下がって下さい」
「おう、落合!!」
野次馬を抑えようとしている1人の警察官に諸星さんが声をかける。
落合さん…というらしい。
諸星さんに対して機敏に敬礼をする。
「お前、スクラップマーダーについて何か面白いネタもってないか?
 中身次第じゃ、刑事課に推薦してやるぞ」
「いや、その話は…もう」
「あれ?お前刑事課に行きたがってたじゃねぇか」
「地域の人を身近で守れるこの仕事の素晴らしさに気付いたんです」
「おお、そうか」
「失礼します」
「ああ」
落合さんはまた諸星さんに敬礼をすると、その場を後にした。
少し…なんだか気になる会話だ。
特に…変なコトを話しているわけでもないんだけど…。

「なぁ、殺されたやついつもうちに顔出してた奴だぜ」
後ろにいた男の人たちの会話が耳に入る。
「これでやっと静かになるな」
「殺されたあの人、よく店に来てたのか?」
キンタが話に参加する。
「ほとんど毎晩だよ。駐車場でガンガン音楽かけてさ、迷惑なやつだったよな」
「ああ」
同意を求められた方は答えながらマッチでタバコに火をつける。
ブックマッチだ。
「あ、そのマッチ」
メグが突然しゃべり出す。
しかも、何かに気づいたように。
「マッチがどうしたの??」
「昨日ホームレスに差し入れいてた蕎麦屋のお兄ちゃんも持ってた。
 あのラーメン屋さんにも同じマッチがあった」
『あのぉ…変な事聞きますけど、そのマッチもらったお店って?』
「これは行きつけのクラブのマッチだけど」
男の人の持っているブックマッチを見ると、【SAHARA】と書かれている。
聞いたコトのない店だなぁ…。

「もしかして、そのお店で殺された男の話とかしました?」
「ああー…そういえば話したコトもあったかも。酔った勢いで愚痴ったかもしれないなぁー」
『そうですか。ありがとうございます』
アタシ達は会話を終え、振り返るとみんなで目を合わす。
「見つかったわね、事件の共通点」
メグが自信ありげに言う。
アタシも大きくうなずく。
「犯人は、そのクラブで被害者の情報を手に入れてたんだ」
キュウも自信満々だ。

拍手

*第3話*~小さな恋に魔の手が迫る! ①

『あれ?もしかして、数馬??』

ミッションルームまでの道のりのこと。
ちょっと時間もあるし、遠周りしてみようっていつも違う道を歩いてたら、
…数馬を見つけた。
【フローリスト・カンダ】っていう花屋の前にずっと立ってる。
だから最近、花が多かったのかな??

『数馬くん…ですよね??』
「…うわ?!え、なんだ梓紗か、ビックリさせるなよ」
『なんだ、とか。酷くない?!いっつもここで花買ってたのかー?』
「ま、まぁね」
『ホントに花が目的ー?』
「え、いや、まぁ、う、うん」
しどろもどろしてるトコを見ると違うね、こりゃ。
アタシは数馬の目線を辿ると店番をしているお姉さんにぶつかる。
『ほぉ。数馬はああいうお姉さんが好きなのね』
「ばっか、そういうこと言うなよ!」
『意外とタイプいいんじゃんっ』
「うるさいなあ」
『早く中入るよっ』

数馬の迷いを無視して腕を引っ張り店の中に入る。
「いらっしゃいませー…あ、数馬くん」
『こんにちわっ』
「こんにちわ、えーっと…」
アタシが数馬の腕を掴んでいるのが手を繋いでいるのに見えたのか、
ちょっと気まずそうにしているのが伺えた。
アタシはパッと手を離して、『友達です!』と答えた。
すると、数馬はキッとアタシを睨んで、前へ出た。
「あのー…また適当に見繕ってもらってもいいですか?」
「ご自宅用でいいですか?」
「はい!」
やけに積極的だなぁ。
こんなに接しられてるんだったら躊躇なく入ればいいのに。
やっぱり最近ミッションルームに花を持ち込んでくるのはコレだったんだな。
何気にさっき「また」って言ってたしね。

「それにしても、ホントに好きなのねお花!3日とあけずにお店に来てくれて」
アタシは数馬に耳打ちで
「好きなのはあなたです♡ホントは毎日でも来たいです♡」って言ったら
思いっきり頭叩かれた。痛すぎだよ、もう。
「なんか、見てるだけで幸せな気分になるんですよね」
「嬉しいな、そういう風に言ってもらえると」
「、いや!そんな…」
アタシは笑いをこらえるのに必死。
でも後でそう言っても怒られそうだから言わないでおこう。

花を持って店を出る。
『あのお姉さん、名前なんて言うの?』
「瑶子さん」
『へー、可愛い名前だね』
ミッションルームまで数馬と一緒に行ったんだけど、
その間、瑶子さんのコトで色々質問してた。
それにしても終始笑顔が絶えなかった!こんな数馬は見たことないってくらいに。
これはレアだと思い、携帯のカメラ準備したら「何したいの?」って腕掴まれちゃって断念。
ちぇ、笑顔の数馬は待ち受けにしてもいいくらい、可愛いと思うんだけどなーっ?

「グッモーニンエブリワンっ♪」
数馬が元気よく部屋に入る。
アタシは後ろからのそのそと数馬をよけて奥へと進む。
…真中にある大きなテーブルが無い。
キュウとキンタ、何かやってたな。
イスがなかったので、部屋の奥まで行きリュウの隣の空いてるイスに座る。

『リュウ、おはよっ』
「…数馬と一緒だったの?」
『うん、途中で会ったんだ』
「へぇ…」
眉をみけんに寄せながらリュウが言った。
…絶対何か怒ってる。
っていうか、牧野くんの事件解決の時から何か冷たい。
アタシ何か…リュウに対して酷いことした??
『…リュウ、何か怒ってる?ごめん、アタシ何かした?』
「別に、梓紗が悪いんじゃない」
『でもさぁー!アタシ鈍感だから知らないうちに…』
「まぁ…鈍感なのは、鈍感だよね」
『?』
リュウが意味深なコトを言うので、模索はそこでやめといた。
それに何で怒ってるかなんて絶対に教えてくれそうになかったし。

「数馬、あんたまた花買ってきたの?!」
メグがうんざりして言う。
「部屋も明るくなるし、優雅でいいじゃないか!」
「ていうか、はっきり言って邪魔なんですけどっ」
まぁ、言われてみれば…邪魔かもねぇ。
部屋の端っこには「数馬のお花コーナー」ができている。
どこかの結婚式ですか?みたいな位花がたくさんある。
部屋も明るくなるし、優雅だけど、さすがにこの量は多いよ…;

「まぁ、メグにはわからないかもね。花に囲まれて生活する、この豊かさ!ってものが…」
「甘いぞ、鳴沢!!」
七海先生の声。
姿は見えない。
また変装でもしてんのかな?
すると、天井からぶら下がってくる七海先生の姿が。

「ミッション・イン・ポッシブル!…だよ」
天井から吊下げたワイヤーで浮いている。
いや、でも、格好は気取ってるね。
すると、キュウから順に七海先生をつつき、回している。

「…見ればわかりますよ」
「っていうかなんで普通に現れないんですか」
「俺の趣味なんだよ!悪いか!おい止めろよこれ!おい!」
「開き直ってるし…」
「さすがです、七海先生」
『このために天井からワイヤーを…?』
「ちょ、おい!お前らそんなたるんだ気持ちでなあ。
 1人前の探偵になれるとでも思ってんのか!ちょ、おい!誰か止めろ!」
七海先生は次々と体を押され、クルクル回っている。
…ずっとそこに入ればいいのに…とかって。
すると、数馬が止める。
「おお、ありがとう。…なんだ?」
数馬は七海先生に持っている花束の中から花を一輪取り出して、七海先生に渡す。
七海先生は不思議そうにしてるけど、「なんでもありません」と答えるだけだった。

「…そんなわけで、団先生からの指令だ!」
そう言って七海先生はディスクを取り出した。

「Qクラスの諸君、御機嫌よう。今回君達に調べてもらいたいのは、連続殺人事件だ」
…殺人。
その言葉にみんな固まるのが分かった。
「犯人はスクラップマーダー呼ばれる殺人鬼」
スクリーンには資料として殺害現場が映る。
男の人が腹部を刺されていて、ゴミ捨て場に捨てられている。
目をそらしてしまいそうになったけど、アタシは必死で堪える。
「最初の被害者はホームレスを襲っていた若者だ。次は地上げ屋。
 被害者は皆、ゴミ捨て場に捨てられていた。
 犯人は狡猾で一切の翔子を残していない。君達の力でこの殺人鬼の正体を暴いてもらいたい。
 諸君らの健闘を祈る」
DVDの再生が終わり、キュウが口を開く。
「今回は連続殺人犯か」
「相手にとって不足はねぇな」
「お前らあまり調子に乗るなよ。相手は連続殺人鬼だ。正体を掴んだらすぐに警察に知らせろ!
 絶対に深追いはするな!」
七海先生の言葉にアタシ達は6人で大きく返事をした。


「まずは被害者と因縁のある人から探ってみよう!」
『じゃぁさ、若者に襲われてたホームレスの人から探る??』
「…梓紗は誘ったし、キュウはいつものことだけどさ、…なんでキンタまで一緒についてくんのよ」
メグは足を止めて振り返り、呆れて言う。
行く時に買ったアイスを食べながらアタシはキンタを見る。
合流したときにキュウもキンタもアイスを食べてて笑っちゃったけど。
でも、今日はまたなんでキンタまで。
「キュウは後先考えずに突っ走っちゃうからさ、見てらんねぇだろ?」
「キンタはいざってときに心強いから!ねえ?」
『いざって時のみ??』
「ばっか、余計なこと言うな!」
なんだか2人は気持ち悪ーくニヤニヤしてる。
「そうなる前に私は逃げます!行こ、梓紗!」
『…メグ、アイス食べる?』
「あ、食べるー♡」
メグはおいしそうにアタシのアイスを一口食べる。

「毎晩だったよ。あいつらほんとに、容赦なかった…。
 あのガキが殺されなかったら、俺が殺されてた。悪いが、犯人には感謝してるよ」
ホームレスのおじさんは弱々しく話してくれた。
やっぱり、そういうことする人っているんだぁ。
でも人殺しはよくないよ。殺さずにやめてくれるコトが1番いいと思うんだけどなぁ、やっぱり。

「おっさん!これ」
すると自転車に乗った男の人がおじさんにそばを渡す。
自転車と服装を見る限りでは、この人お蕎麦屋さんっぽいね。
「ああ、いつも悪いね」
「いいんだ、いいんだ」
「お知り合いですか?」
「ときどき店の残り物差し入れしてんだよね、捨てんのもったいないし」
食べ始めたおじさんを眺めながらキンタが口を開く。
「この人が襲われたことも??」
「ああ、知ってたよ」
男の人はたばこにマッチで火を点け、煙草を吸い始める。
「まぁでも、これで安心して眠れんな!!」
男の人の言葉におじさんは小さく頷いた。

「殺された地上げ屋、暴力団を使って毎日のようにきやがらせさせて、
 この辺の土地、強引にかきあさってたんだよ」
「おじさんは何か酷い目に遭ったんですか?」
「ああ。見せに来て大声出したり、まずいって騒いだり。これで安心して商売ができるよ」
アタシ達は地上げ屋の被害に遭った人たちに話を聞いて回る。
このラーメン屋のおじさんも酷い目に遭ったようだ。
アタシはふと思いだす。
ホームレスのおじさんも「殺されて良かった」と言っていた。
殺された被害者は、人から本当に恨まれていたんだ。
おじさんにお礼を言い、店を出る。

「これから、どうする??」
「とりあえず、1回ミッションルームに戻ってみない??」
『あ…じゃ、アタシ1回現場に行ってみる!』
「1人で大丈夫か??」
『何キンタ!大丈夫だよ、ちょっと調べたらすぐ戻ってくるから』
「そう?じゃぁ、梓紗先に行ってるね」

メグとキュウが手を振ってくれたので振り返す。
アタシは方向転換すると一気に走りだす。
現場には絶対にリュウがいるはず!
何か怒ってるし、怒ってるから話しかけにくくて気まずいし。
とりあえずリュウとは普通に話せるように戻らなきゃ!!
少し走ると現場に着く。
やっぱり…――リュウの姿が。

『リューウッ!』
「!…梓紗」
リュウはアタシが急に声をかけたのでビックリしたみたい。
でも振り返って微笑んでくれた。
…今は、怒ってないみたい、良かった…。
「今からまたボイスレコーダーに録音するから、しゃべっちゃダメだよ」
『あ、了解ですっ!』
「…翔子を一切残していないことから考えて、犯人は用心深く犯罪に精通した人間な。
 しかも死体をゴミ捨て場に捨てていることから、注目願望症候群だと思われる。
 つまり、ストレスが溜まっているもの、歪んだ正義感の持ち主でもある」

リュウの話を聞いて、頭の中で整理していると背中に視線を感じた。
パッと振り返ると、そこには日傘を差した綺麗な女の人。
しかも、何とも言えない優しくない微笑をしていた。
待って、アタシどこかで、この人、会ったことあるような――――
「私の顔、どこか可笑しいところがございますか?」
「あ、いえ!すいません、違います」
アタシは女の人をかなり凝視してたのだろう。
その視線に気づいた女の人は首を傾げて聞いてきた。
アタシはかなり戸惑っちゃって、手を左右に振るしかなかった。
…でも、この雰囲気、顔、しゃべり方…どこかで……。

「梓紗」
『何っ、リュウ?』
「ちょっとさ、ここで待っててくれないか?あんまり遅かったら帰ってていいから」
『え、うん、分かった』
「あの人の用事があるんだ、悪い」
リュウはアタシの両手をギュっと一瞬だけ握り、女の人のもとへ。
ねぇ、リュウ、その人、誰なの?
アタシ、多分、その人と、会ったこと、あるよ?
溢れる感情は、リュウがアタシに向けた最後の淋しそうな顔で消された。

アタシは時々思う。
リュウって…今まで何を抱えて生きて来たんだろう。
アタシ以外のメンバーには笑顔を見せないのはどうして?
色々考えちゃうけど、やっぱりリュウが心配だった、なによりも。

拍手

*第2話*~神のメール? 記憶消失の謎!! ④

「いつまで隠れてるんだよ」
僕が言うと、そこにいたなんて気配を感じさせないほど巧みに隠れていた
ケルベロスとユリエが出てくる。

「やはり今回も、冥王星の仕業だったか」
「我々はただ、殺人計画書を作成しただけです。実行したのは依頼人。
 もう彼と我々を繫ぐ証拠は、ないんですよ」

繫ぐ証拠はない…か。
実行したのは依頼人…か。
何が何でも実行させようとしてるだろ?お前らは。
僕は軽蔑する目で2人を眺めていた。

するとユリエが僕の髪に触り始める。
すぐに払いのけたかった。
「リュウ様。いくら私達から逃れようとしたところで、自分の宿命からは逃げられませんよ」

黙れ、うるさい。
そんなこと、僕が1番分かってる。
お前らだってそうだろ。
僕が逃げてるだけだっていうのを知っている。
僕がただ宿命から逃げているっていうのを知っている。

「…僕の人生は僕のものだ。お前達の指図は受けない」

僕はもうその場にいるのが息苦しく、1秒でも早く立ち去ろうと方向転換したとき、
「宿命とは、影のようなものですよ」
そんなの…わかってる。


その時、リュウが静かにゆっくり体育館に入ってきた。
何してたんだろう?…さっき言ってくれなかったから、聞かないでおこう。

「やっぱり、神の正体は君だったんだね。五十嵐先生を殺したのも」
「殺害現場の絨毯の上に、ガラスの置物が粉々になって落ちてた。
 離れた場所に置かれた置物が、何故あんな場所に落ちてたんだろうって考えた。
 答えは、君のメガネだ!!」

――キュウの推理が始まった。

「君はひそかに塾長室に紛れ込み、五十嵐先生を襲った。
 その時メガネを落として割ってしまったんだ。
 そしてその破片を拾いきれず、ガラスの置物を割ってカモフラージュした」
「あなたのメガネが、失踪前と失踪後に変わっているのがその証拠よ。
 警察の鑑識にも頼んで裏をとった。
 ガラスの置物の中にメガネの破片が紛れていたそうよ」

メグがそう言い終わると、牧野くんは悲しく…微笑んだ。
アタシはやっぱり牧野くんが犯人だと信じきれず、動揺してしまう。
「…なんでだよ」
『どうして…?どうしてよ牧野くん…』
「キュウくん、梓紗ちゃん。君達は友達を蹴落としたことある?」
『…え?』
牧野くんが静かな声で話し始める。

「小学校の頃一緒に野球やってた友達が塾に入ったとたん敵になった。
 お前が蹴落とさなきゃ蹴落とされるんだぞ、って。毎日毎日五十嵐に吹き込まれて。
 そのうち、仲間の失敗を喜んだり、苦しんでる姿を腹の中でせせら笑ったり…
 僕、そういう人間になってた。
 このままじゃ、五十嵐達みたいな大人になる…そう思ったら怖くなったんだ」
「だから…五十嵐先生を殺したの?」
「………ああ」
キュウの言葉に少し躊躇った後、牧野くんは強く頷く。
ああ、やっぱり五十嵐先生を殺したのは…牧野くんなんだ。

「こいつを殺して生まれ変わろうと思った。
 五十嵐から逃れるには目の前からこいつを削除するしかない…って」
「ホントに君は、そんなやり方で生まれ変われるとでも思ったの?」
キュウの声がさっきよりも大きくなる。
「人の命を犠牲にしてやり直せると思ったの?
 どんな理由があろうと、人殺しは許されることじゃない。
 君に五十嵐先生の命を奪う権利はないんだよ!!
 それに、神を名乗ってメールで失踪を呼び掛けたのもみんなが君と同じ気持ちだと思ったから、
 助けてやろうと思ったの?
 友達が欲しかったんなら、どうしてちゃんとぶつかんなかったの?」
キュウが牧野くんに歩み寄る。
牧野くん…牧野くんは…助けようと思ったんだ。
神っていう名をつかって、自分と同じ気持ちのみんなを助けようと…。

「野球やってた頃を思い出してよ。
 練習で一緒に苦しんで、ケンカして、励まし合ったり…
 そうやっていつの間にか仲良くなっていくのが友達なんじゃないかな。
 仲間なんじゃないの??」
「…そこにいるの……君の仲間?」
牧野くんの目がキュウの後ろに立っているアタシ達に向けられる。
キュウは首を動かして、アタシ達のことを確認する。
そして、大きく頷いて
「うん。同じ夢を追っている、仲間だよ」

アタシはそんなキュウの言葉に思わず涙が出た。
たった一粒だったけど、キュウと牧野くんの想いを知るのには十分だった。

「…うらやましいなぁ、そんな風に胸張って言えるなんて」
牧野くんのその言葉にはたくさんの思いが込められていた。
それがアタシなんかに分かるわけないけど、伝わってきた。
涙が溢れてきた。
もう一粒の涙が零れた時には、朝日が昇ってきていた。

完全に朝日が昇った頃には、警察が到着していた。
牧野くんはパトカーの元へと連れられる。
すると、牧野くんは振り向いて言う。
「キュウくん」
「何?」
「ちゃんと罪を償ったらさ、キャッチボールの相手してくれるかな?」
「もちろん!」
キュウは笑顔で言う。

すると牧野くんはアタシの隣へと歩いてきた。
『どうしたの?』
「梓紗ちゃん…」
『ん?』
「僕さ、梓紗ちゃんのコト好きだったんだ」
『、え?!』
そう言うと、牧野くんはアタシの両肩を優しくつかみ、
少しだけ牧野くんの身体に引き寄せられる。
牧野くんの腕の中で1回だけ頭を撫でられ、すぐに腕から解放する。
『!?え、』
「これで我慢するよ、いきなりでごめんね。じゃぁ、また!」
牧野くんは偽りのない、そんな笑顔で去って行った。
パトカーが走り出す時、また同じことが繰り返されないか、ホントにヒヤヒヤしたけど、
牧野くんなら、大丈夫…だよね。

「ほらね、そうじゃんっ!」
メグが笑いながらアタシを茶化す。
『ちょっと、メグ!そういうコト言わないでよっ!!』
「私の予感は的中するんだからっ」
『ちょっと!』
もう、恥ずかしくて寂しくてメグに当たるしかなかった(ごめん)。
すると、リュウが突然アタシの目の前にやってきて両肩に手を置く。

『…何?』
「別に」
「あらら?リュウくん消毒ですかぁ?」
メグがからかう口調でリュウに言う。
「うるさいな」
そう言うと手を離してムスッとしてしまった。
え、リュウ、なんで怒ってるか分かんないけど…とりあえずごめん。

するとメグが小さく呟く。
「私達はどうなるんだろう。ずっとライバル同士なのかな?それとも…」
少しだけ、風だけが通り過ぎた。

「っていうか、キュウ」
数馬が空気を破ってくれた。
「僕達、いつから仲間になったんだ?」
「ええ?!いつからって…仲間でしょ?ねぇ、梓紗!」
『えっとぉー…なんの話??』
「今までずっとそう言ってきたじゃんっ!!」
「よく言うよ、梓紗。キュウの仲間宣言聞いて泣いてたくせに」
『うっわ、数馬それ言うか?』
「え、そうなの梓紗!?」
『えーもう!仲間だよ、アタシ達仲間だから!それで許して!!』
「2人とも、ほんっとおめでたいわね」
『えー、アタシも巻き込まれてんの?!』
「あー腹減ったし、ちゃんぽん麺でも食いに行きますか!」
「僕はパス」
「は、何でだよ!」
『キンタの奢りだったら行ってもいーかなぁっ?』
「ちょ、何言ってんだよ、違ぇよ!」
「キュウーっ、何やってんの?早く行くよっ」
「うんっ!」
『リュウ行くっ?!』
「どうしようかな」

仲間だ、仲間じゃないって言ってるけど、本当に「仲間じゃない」って思ってたら、
こんなコトだって言い合えないと思うし…。
お互い信頼し合ってなかったらこの事件だって解決できなかったと思うよ??
なんだかんだで仲がいいっていうのは事実じゃないかなぁ…。
アタシはこの6人でいるのが、1番楽しいしっ!!

アタシ達は蹴落としたり蹴落とされたりしない。
そんなコトしたらQクラスじゃないからね。
常に6人歩幅を合わせて頑張ろう!(なんて言ったらメグに「キュウみたい」て言われた)

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