ドリーム小説
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*第1話*~実践開始!戦慄の死の予言!死体消滅の謎を追え ⑥
誰もいない。
静かな駐車場にアタシ達は着く。
遠くから近くへ、響いてくる足音とスーツケースを転がす音。
現れたのは…間違いなく文芸部顧問の米山先生。
「お出かけですか??先生」
アタシ、キュウ、メグ、リュウ、数馬は先生の行く手を阻むように囲んで立つ。
「そのスーツケースの中身、処分しに行くとか?」
『…無駄です。トリックは全て解けました』
「あなたが今回の連続殺人事件の犯人ですね!」
キュウが高らかに言い放ったかと思うと、先生は微笑で言う。
「一体何の話?言ってる意味が全然分かんないわ」
先生は何事もなかったかのように知らないふりで、その場を後にしようとした。
「氷の玉と、2人の人間による死体切断のマジック。…それだけ言えば充分だろ」
リュウが言った言葉で先生は立ち止まる。
「ずっと引っ掛かってたんです。
日頃から生徒たちとの関わりを避けているあなたに、なぜ佐々木さんがSOSの電話をかけてきたのか。
それは僕達と行動を共にし、無実を証明するためのアリバイ工作だったんだ」
「妄想もいいところよ!」
『あの子達どこにいるの、って先生言いましたよね??それが証拠です。
佐々木さんから電話があったとき、行方が分からなくなっていたのは佐々木さんだけですよ??
先生はあの場に佐々木さんだけではなく、大森さんも居ることを知っていた。
だから、【あの子達】と口にしてしまったんじゃないですか??』
「スーツケースの中、見せてよ」
メグが冷たい視線で見つめ、鋭く先生に言う。
スーツケースから血が流れ落ちた。
中には…やっぱり…。
考えただけで背筋が凍る。
「…先生、どうして、こんなひどいこと…どうして?」
「娘を殺された復讐なんだろ」
後ろからの声に振りかえる。
『…キンタ!!』
「今まで何してたのよ!!」
そこにいたのは久しぶりに見るキンタ。
最近、全然ミッションルームに顔出さないと思ってたら…。
「西村静香の周辺を調べてたんだ。彼女は、この人が産んだ娘だったんだ」
アタシ達は驚いて先生の方を向く。
「子供が生まれて間もなく、あんたは小説家になる夢を諦めきれず、家族を捨てた。
でもそれだけ頑張っても、夢は夢のままだった。
そのとき、あんたはこの学校で娘と再会したんだ」
「・・・・血は争えないわね」
先生は寂しそうにつぶやく。
「16年ぶりに再会した静香はミステリーに夢中で、天賦の才能の持ち主だった。
あの子がコンクールで賞をもらったときも嬉しかった。私の夢をかなえてくれた気がして。
…でもその幸せも、長くは続かなかった。
そんなとき、偶然あの子達の話を聞いてしまったの」
先生は佐々木さん達が西村さんを階段から突き落とし、殺害したという事実を
偶然にも聞いてしまったらしい。
「あの子達、笑ってた。娘の未来を奪ったあの子達に生きる価値なんかない…っ!!」
「…へぇ…、彼女、実の娘だったんだ」
リュウが先生の周りを歩きながらため息交じりに言い放つ。
「娘の復讐ねぇ…よくそんな綺麗事言えたもんだな」
『?リュウ??』
「この人、推敲者の新人コンクールに作品を送ってた。
でもそれは、西村静香が図書室に隠した、幻の遺作だったんだ」
黙っていた数馬が口を開く。
「…僕達がディスクの在り処に気付いた時、それはもう誰かの手に渡っていた。
だから数馬に調べてもらったんだ。彼女の遺作を売りつけられた出版社はなかったかどうか」
「でも、どの出版社も原稿を手にしていなかった」
「出版社に売りつけることが目的ではないとすると、考えられる可能性は1つ。
その原稿を自分の作品として発表することだ」
「コンクールの主催者に応募者の名前を問い合わせたら、見事にヒットしたよ。
・・・先生の名前が」
リュウと数馬が説明する。
そうか、だからリュウはあの時電話してたのは数馬だったのか。
そんなに早くから感づいていたリュウ…やっぱりすごい。
「でも…なんでそれが西村静香の遺作だってわかったんだ」
「作家はよく描きかけの作品をバックアップするのにメールボックスを利用する」
「ハッキングしてみたらしっかりと残ってたよ、西村静香の…オリジナル原稿」
「でも、かのじょの作品を自分のものにするには、ひとつだけ問題があった。
その作品をすでに読んでいた人間がいたんだ」
『…そっか!殺された3人!!』
「ああ、こいつは娘の復讐なんかじゃなく、盗作がバレないように3人を殺したんだ」
「違う…違う!!私は静香のために「だったら!!」
リュウが先生の言葉を遮る。
「…何故娘の名で公表しなかった??
あんたは悪魔に魂を売り渡したんだよ!!!!!」
リュウの言葉が駐車場を凍りつかせる。
静まり返る。
聞こえるのは、スーツケースから滴る…血の音だけが駐車場をこだまする。
しばらく、沈黙が続く。
すると、こちらに向かってくるパトカーのサイレン。
駐車場に着くと、警察がパトカーから降り、先生の周りに集まる。
1人の警官がスーツケースの中身を確認し、言った。
「…死体遺棄の容疑で、署まで同行願います」
諸星さんの言葉に、何人かの警官と一緒に先生はパトカーへ向かった。
「待って下さい!!」
キュウが叫ぶ。
「僕には・・・どうしても信じられません。
そんな、醜い欲望のために…あなたが人を殺すなんて…」
「キュウ・・・これがこの世界のリアルなんだ。僕達が立ち向かおうとしている現実なんだよ」
「違う!そんなことない!」
リュウがキュウを説得しようと口を開いたが、キュウはそれを否定する。
「だって、あの人、メグを抱いてくれたんだもん。
メグが死体を見てパニック起こしてるとき、母親みたいに優しく」
先生がメグを抱いてるとき。
先生にならメグを任せられると確信したんだ。
優しく、包み込むように抱いていた。
大丈夫って、安心させようとしてくれてた。
アタシだって…信じられないよ。
「リュウ、事実が全て、真実を語っているわけじゃないんだ。
事件を解決することも大切だけど、その裏に隠された真実を見抜くことも…探偵として、大切な役目だと思う。
だからこそ、人を救うことができるんじゃないかな。
甘っちょろいって思われるかもしれないけど…僕は・・・信じたいんだ。
この人も、ここにちゃんと血が通ってる。
だから人の痛みとか苦しみとか、そういうのを感じる心を持ってる」
キュウが胸に手を当て、先生に向かって真っすぐな目で言う。
先生は振り向かず、黙って背中で言う。
「バカな子ね。私みたいな女を信じるなんて・・・」
「先生…」
キュウは小さく呟いた。
先生はゆっくりと振り返り、言った。
「ありがとう」
そう言った先生は少し微笑んだように見えた。
その声は少し震えていて、少し…寂しそうな、切なそうな。
その後は振り返ることもなく先生はパトカーに乗り込む。
メグがキュウに近寄って行き、肩にポンと手を置き、優しく微笑む。
『やっぱり、キュウってすごいねー』
「とことんアナログだね」
「ガキのくせに生意気なんだよ」
アタシ、数馬、キンタの順に発言する。
でも本当はすごいなんて簡単な感情じゃない。
キュウの言った一言ずつに考えさせられた。
裏に隠された真実を…キュウは何よりも大切にしていると感じた。
あんなに人の心に響く言葉を…。
キュウだから、先生の【ありがとう】を聞けたのかも知れない。
今でも先生の最後の言葉は頭に鮮明に残っている。
そのとき、パンッ!と駐車場中に響く音。
アタシ達は一瞬のうちにパトカーへと歩み寄る。
アタシは音に驚いて少し遅れてパトカーのもとに着く。
リュウの隣に立つと、そこに見えたのは、血にまみれた拳銃を持った先生の手。
『・・・いやっ…!』
「梓紗、見るな」
リュウがアタシの顔を胸にうずめる。
メグは辛そうにしゃがみこみ。
数馬は吐きそうになっていた。
キンタとリュウはただ立ちつくしている。
リュウが見るなと言った瞬間、アタシは悟った。
『なんで…なんで、どう、してよ!』
リュウの胸の中でアタシは無意識のうちに叫んでいた。
リュウはさっきより強くうずめる。
助けたはずの先生が…どうしてこんなことに?
先生の最後の【ありがとう】がアタシの頭の中をぐるぐるめぐる。
結局アタシは、誰も救えなかった。
誰1人として救えなかった。
子供の探偵など、こんなに無力なのか。
アタシは無力すぎて叫ぶしかなかった。
頬には一粒の涙だけが流れ落ちた。
誰もいない。
静かな駐車場にアタシ達は着く。
遠くから近くへ、響いてくる足音とスーツケースを転がす音。
現れたのは…間違いなく文芸部顧問の米山先生。
「お出かけですか??先生」
アタシ、キュウ、メグ、リュウ、数馬は先生の行く手を阻むように囲んで立つ。
「そのスーツケースの中身、処分しに行くとか?」
『…無駄です。トリックは全て解けました』
「あなたが今回の連続殺人事件の犯人ですね!」
キュウが高らかに言い放ったかと思うと、先生は微笑で言う。
「一体何の話?言ってる意味が全然分かんないわ」
先生は何事もなかったかのように知らないふりで、その場を後にしようとした。
「氷の玉と、2人の人間による死体切断のマジック。…それだけ言えば充分だろ」
リュウが言った言葉で先生は立ち止まる。
「ずっと引っ掛かってたんです。
日頃から生徒たちとの関わりを避けているあなたに、なぜ佐々木さんがSOSの電話をかけてきたのか。
それは僕達と行動を共にし、無実を証明するためのアリバイ工作だったんだ」
「妄想もいいところよ!」
『あの子達どこにいるの、って先生言いましたよね??それが証拠です。
佐々木さんから電話があったとき、行方が分からなくなっていたのは佐々木さんだけですよ??
先生はあの場に佐々木さんだけではなく、大森さんも居ることを知っていた。
だから、【あの子達】と口にしてしまったんじゃないですか??』
「スーツケースの中、見せてよ」
メグが冷たい視線で見つめ、鋭く先生に言う。
スーツケースから血が流れ落ちた。
中には…やっぱり…。
考えただけで背筋が凍る。
「…先生、どうして、こんなひどいこと…どうして?」
「娘を殺された復讐なんだろ」
後ろからの声に振りかえる。
『…キンタ!!』
「今まで何してたのよ!!」
そこにいたのは久しぶりに見るキンタ。
最近、全然ミッションルームに顔出さないと思ってたら…。
「西村静香の周辺を調べてたんだ。彼女は、この人が産んだ娘だったんだ」
アタシ達は驚いて先生の方を向く。
「子供が生まれて間もなく、あんたは小説家になる夢を諦めきれず、家族を捨てた。
でもそれだけ頑張っても、夢は夢のままだった。
そのとき、あんたはこの学校で娘と再会したんだ」
「・・・・血は争えないわね」
先生は寂しそうにつぶやく。
「16年ぶりに再会した静香はミステリーに夢中で、天賦の才能の持ち主だった。
あの子がコンクールで賞をもらったときも嬉しかった。私の夢をかなえてくれた気がして。
…でもその幸せも、長くは続かなかった。
そんなとき、偶然あの子達の話を聞いてしまったの」
先生は佐々木さん達が西村さんを階段から突き落とし、殺害したという事実を
偶然にも聞いてしまったらしい。
「あの子達、笑ってた。娘の未来を奪ったあの子達に生きる価値なんかない…っ!!」
「…へぇ…、彼女、実の娘だったんだ」
リュウが先生の周りを歩きながらため息交じりに言い放つ。
「娘の復讐ねぇ…よくそんな綺麗事言えたもんだな」
『?リュウ??』
「この人、推敲者の新人コンクールに作品を送ってた。
でもそれは、西村静香が図書室に隠した、幻の遺作だったんだ」
黙っていた数馬が口を開く。
「…僕達がディスクの在り処に気付いた時、それはもう誰かの手に渡っていた。
だから数馬に調べてもらったんだ。彼女の遺作を売りつけられた出版社はなかったかどうか」
「でも、どの出版社も原稿を手にしていなかった」
「出版社に売りつけることが目的ではないとすると、考えられる可能性は1つ。
その原稿を自分の作品として発表することだ」
「コンクールの主催者に応募者の名前を問い合わせたら、見事にヒットしたよ。
・・・先生の名前が」
リュウと数馬が説明する。
そうか、だからリュウはあの時電話してたのは数馬だったのか。
そんなに早くから感づいていたリュウ…やっぱりすごい。
「でも…なんでそれが西村静香の遺作だってわかったんだ」
「作家はよく描きかけの作品をバックアップするのにメールボックスを利用する」
「ハッキングしてみたらしっかりと残ってたよ、西村静香の…オリジナル原稿」
「でも、かのじょの作品を自分のものにするには、ひとつだけ問題があった。
その作品をすでに読んでいた人間がいたんだ」
『…そっか!殺された3人!!』
「ああ、こいつは娘の復讐なんかじゃなく、盗作がバレないように3人を殺したんだ」
「違う…違う!!私は静香のために「だったら!!」
リュウが先生の言葉を遮る。
「…何故娘の名で公表しなかった??
あんたは悪魔に魂を売り渡したんだよ!!!!!」
リュウの言葉が駐車場を凍りつかせる。
静まり返る。
聞こえるのは、スーツケースから滴る…血の音だけが駐車場をこだまする。
しばらく、沈黙が続く。
すると、こちらに向かってくるパトカーのサイレン。
駐車場に着くと、警察がパトカーから降り、先生の周りに集まる。
1人の警官がスーツケースの中身を確認し、言った。
「…死体遺棄の容疑で、署まで同行願います」
諸星さんの言葉に、何人かの警官と一緒に先生はパトカーへ向かった。
「待って下さい!!」
キュウが叫ぶ。
「僕には・・・どうしても信じられません。
そんな、醜い欲望のために…あなたが人を殺すなんて…」
「キュウ・・・これがこの世界のリアルなんだ。僕達が立ち向かおうとしている現実なんだよ」
「違う!そんなことない!」
リュウがキュウを説得しようと口を開いたが、キュウはそれを否定する。
「だって、あの人、メグを抱いてくれたんだもん。
メグが死体を見てパニック起こしてるとき、母親みたいに優しく」
先生がメグを抱いてるとき。
先生にならメグを任せられると確信したんだ。
優しく、包み込むように抱いていた。
大丈夫って、安心させようとしてくれてた。
アタシだって…信じられないよ。
「リュウ、事実が全て、真実を語っているわけじゃないんだ。
事件を解決することも大切だけど、その裏に隠された真実を見抜くことも…探偵として、大切な役目だと思う。
だからこそ、人を救うことができるんじゃないかな。
甘っちょろいって思われるかもしれないけど…僕は・・・信じたいんだ。
この人も、ここにちゃんと血が通ってる。
だから人の痛みとか苦しみとか、そういうのを感じる心を持ってる」
キュウが胸に手を当て、先生に向かって真っすぐな目で言う。
先生は振り向かず、黙って背中で言う。
「バカな子ね。私みたいな女を信じるなんて・・・」
「先生…」
キュウは小さく呟いた。
先生はゆっくりと振り返り、言った。
「ありがとう」
そう言った先生は少し微笑んだように見えた。
その声は少し震えていて、少し…寂しそうな、切なそうな。
その後は振り返ることもなく先生はパトカーに乗り込む。
メグがキュウに近寄って行き、肩にポンと手を置き、優しく微笑む。
『やっぱり、キュウってすごいねー』
「とことんアナログだね」
「ガキのくせに生意気なんだよ」
アタシ、数馬、キンタの順に発言する。
でも本当はすごいなんて簡単な感情じゃない。
キュウの言った一言ずつに考えさせられた。
裏に隠された真実を…キュウは何よりも大切にしていると感じた。
あんなに人の心に響く言葉を…。
キュウだから、先生の【ありがとう】を聞けたのかも知れない。
今でも先生の最後の言葉は頭に鮮明に残っている。
そのとき、パンッ!と駐車場中に響く音。
アタシ達は一瞬のうちにパトカーへと歩み寄る。
アタシは音に驚いて少し遅れてパトカーのもとに着く。
リュウの隣に立つと、そこに見えたのは、血にまみれた拳銃を持った先生の手。
『・・・いやっ…!』
「梓紗、見るな」
リュウがアタシの顔を胸にうずめる。
メグは辛そうにしゃがみこみ。
数馬は吐きそうになっていた。
キンタとリュウはただ立ちつくしている。
リュウが見るなと言った瞬間、アタシは悟った。
『なんで…なんで、どう、してよ!』
リュウの胸の中でアタシは無意識のうちに叫んでいた。
リュウはさっきより強くうずめる。
助けたはずの先生が…どうしてこんなことに?
先生の最後の【ありがとう】がアタシの頭の中をぐるぐるめぐる。
結局アタシは、誰も救えなかった。
誰1人として救えなかった。
子供の探偵など、こんなに無力なのか。
アタシは無力すぎて叫ぶしかなかった。
頬には一粒の涙だけが流れ落ちた。
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