ドリーム小説
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*第5話*~ネットの恋! すれ違いの悲劇~ ②
アタシ達は許可が下りるまで、校舎の中庭で少し雑談をすることに。
「みんなには借りができたな」
佐久間さんがアタシ達をカメラで収めながら、後ろ向きで歩いている。
「あ、僕達はただ、アリバイトリックを解いただけですから」
キュウもメグも映りたがりみたいで、カメラのレンズを覗き込んでいる。
アタシは専ら興味はないがカメラを向けられたので、微笑を浮かべてみる。
「あなたが事件にかかわってる可能性はまだ0じゃない」
「ホントは昨日の夜、どこにいたんだよ」
「…実はさ、ホラー映画のファンサイトで知り合った奴からメールが来て、
カルトビデオ譲ってくれるっていうから、近くの公園で待ち合わせしてたんだよ」
『それでビデオはもらえたんですか?』
「でもさぁ…そいつ、待ち合わせ時間になっても、来ないの!!!」
「すっぽかされた、ってこと?」
「うんっ!!」
佐久間さんは大きく首を縦に振り、強く肯定した。
ちょっと可愛いって思ってしまった…不覚だ。
「…お前そんな言い訳通用すると思ってんのかよ」
「通用しないと思ったから黙秘してたんだろ」
佐久間さんはキンタの問いかけに間一髪と答えた。
それはそうだ。
「第一俺がいくらヤバい人間だからって、映画研究部の可愛いーぃ後輩を殺すわけがないっ」
「映画研究部の後輩?」
「うん」
あ、まただ。
佐久間さんの「うん」って、ちょっと可愛い…。
そしたらリュウに何か感づかれたのか「どうしたの?」って怪しい笑顔で言われた。
「えっ、いや、別にぃ?」
「あの2人、同じ付属中学の出身で映画研究の仲間なんだ」
「本当ですか!?」
キュウがすかさず聞く。
「うん。亀田や朝吹だけじゃなく、冨永や遠矢、それから失踪した小椋絵美菜もみぃーんな仲間」
まさか…そんなの偶然?
これはちょっと関連性があると考えてもいいんじゃないかな?
それにしても、佐久間さんが後輩想いってトコも意外だったな。
ようやくビデオの許可が下りたので早速見ることにした。
テレビにセットしてビデオを再生すると、映ったのは今とはどこか違う佐久間さんと富永くん。
よーいスタート、という佐久間さんの声と同時に撮影が始まった。
男性用スーツを着ている朝吹さん、OLのようなスーツを着ている…小椋さん?
撮影は進んでいき、カメラやレフ板が2人が歩くスピードと同じに進む。
台詞を淡々と言う朝吹さん。
すると突然「あ、」と言って撮影が止まった。
きっと台詞を間違えたんだろう…そんな違和感はなかったんだけど。
その瞬間緊張感は消え去り、みんなの顔に笑顔が生まれた。
亀田くんは遠いアングルから撮っていたカメラにアップで映りこんできた。
「亀田くんも昔はみんなと仲良かったんだ」
「小椋絵美菜、亀田純也、朝吹麻耶…事件の被害者は皆、同じ映画研究部だったなんてなぁ…」
テレビでは佐久間さんがメガホンで亀田くんをポンポン叩いていた。
それで笑うみんな。本当に仲が良かったように思う。
「でも…これで容疑者が絞れてきたよ」
「え?」
『ほ、ほんと?』
「浅い人間関係で、計画的殺人が起こるのは、金銭がらみ以外で考えられない。
殺された朝吹さんが素直に部屋に招き入れたことから考えても、中学時代から親交があった
彼らが容疑者になる可能性が高い」
『え、てことは』
「まさか、この仲良さそうな中にコレクターがいるってゆーの?」
の瞬間、キンタの携帯が鳴りだした。
キンタは着信に出る…数馬のテレビ電話だ。
「おう、数馬」
「今、渋沢学院のサーバーを調べてるんだけど…ここ半年ぐらいのログが残ってた。
…で、殺された例の亀田純也って人の書き込みを追っかけてたんだけど、
なんかこの人、ヤバいことしててさ」
「ヤバいこと?」
「渋沢学院のサイトに映画愛好者の掲示板があるんだけど…
亀田って人…、1人で20人近いハンドルネームを使って、
1人の人間を袋叩きにしてたんだ」
「まぁ、ぢかよぉ…」
『ひっどいね』
「詳しいやり取りはメールに添付して送ったから」
アタシ達はすぐにパソコンを開き、渋沢学院のサイトの映画愛好者の掲示板を見た。
パッと見、普通の掲示板に見えるだろう書き込みには、相当なコトが書いてあった。
殺る、喧嘩、死ね、…そんな言葉が平然と並んでいる掲示板には寒気がした。
それに、これが全て亀田くん1人によってつくられたものだとすると…。
「これに書き込んでる人、全員亀田くんなの?」
「中傷されてるのが…このアニメっていうハンドルネームの人物だったらしいな」
リュウが次々と画面をスクロールさせていく。
次々と中傷が酷くなってきているような気がする…
「見ろよ、これ」
リュウが呟いた。
アタシ達は従ってリュウが刺すであろうものを見る。
『…えっ』
そこにはアニメさんの書き込んだもので、【自殺します】と書かれていた。
「嘘…たかがネットの中のいじめで、自殺なんて…」
「このアニメって名前…」
リュウが何かに気がついたみたい。
「アナグラムだっ」
「アナグラムって、文字を並べ替えるやつ?」
『嘘、アニメなんて並べ替えても…あっ、ローマ字っ』
「そう、こうしてアニメをローマ字変換にして逆から読むと…」
パソコンにはローマ字で打ち込まれたANIME。
そしてリュウが逆から打ったANIMEは……EMINAになった。
「えみな…」
『嘘っ、』
「小椋絵美菜っ!!」
「じゃぁ、亀田くんが20人近くのハンドルネームを使ってイジメていたのは、
失踪した小椋絵美菜さんだったの?!」
『嘘、何それ』
「どうやら、動機も見えてきたなぁ…」
キンタが怪しげに言う。
だって、亀田くんがこのハンドルネームがアナグラムだって知っていたら、
明らかに自分より成績の良かった小椋さんをいじめるだろう。
「ねぇ、リュウ、さっきビデオに映ってた人達を集めて上映会やってみない?」
『キュウ…??』
「おもしろそうだねぇ…」
キュウもリュウもいつになくノリ気だ。
リュウの顔がニヤけているのですぐ分かる。
上映会…?何か得ることができるだろうか。
その後、実際にみんなを呼び出し上映会をした。
真っ暗な部屋にスクリーンを下して大画面で見る。
「付属中学の映画研究部かぁ…懐かしいな」
「小椋さん…」
そう呟いた遠矢さんの声がすごく淋しく聞こえた。
「心が痛むねぇ~、この笑顔見るとキュンってなる、キュンって」
佐久間さんのキュンは尋常じゃないほど可愛かった。
もう語尾にハートは付きまくってる。
アタシはちょっと口が笑ってるみたいで、リュウにすぐ気付かれた。
「なーに、笑ってんの」
『別にっ、笑ってないよ』
「嘘つくなよ」
『なっ、なんでもないよっ』
「じゃぁー、後でしつこく聞くからっ」
リュウはちょっと笑ってまたスクリーンに顔を戻した。
しつこく聞くって…そんなコト言われても…。
「佐久間さん…」
キュウが話しかける。
「小椋さんにフラれたって本当ですか」
すると、前を向いていた佐久間さんがぐりんと顔をキュウに向け、
「はっきり言うね」
と少し動揺していた。
何回か小刻みに頷いたかと思うと、ダラッと座っていたイスを座りなおした。
「彼女ねぇー、【好きな人がいるのーっ】って。
まぁ俺みたいな変態最初から無理って分かってたけどねっ」
「なんかずいぶんサバサバしてますね」
メグが冷たい視線で佐久間さんに問いかけた。
「そう見えるでしょぉ?でもお腹ン中どろどろっ」
せ、切ない。
わざわざ聞いたメグって一体…?笑
「何か、みんな仲よさそうだね」
「今じゃロクに口も利かなくなってるもんな」
「どうして、みんなこんなバラバラになっちゃったんだろ」
「仕方ないよ、ウチの学校受験校だし。友達はみんな成績を争うライバルなんだから」
――友達はみんな成績を争うライバル…
アタシはその言葉に少し引っ掛かった。
仲間が口を利かなくなった理由に成績を挙げるなんて…ちょっと気になる。
キュウとリュウも同じなのか、少しヒクついていた。
「あの頃は楽しかったなぁ…
私達が作った映画を佐久間先輩のお父さんが経営してる小さな映画館で上映してもらったり…。
映画の美術をやってた冨永くんのお父さんに小道具を色々分けてもらったり…」
遠矢さんが懐かしむように淡々としゃべっていた。
「もうよそーぜ……そんなことより、事件のコト考えよう」
冨永くんは遠矢さんの話を遮り、事件に話をすりかえた。
すると佐久間さんはイスの背もたれに首を乗せて、後ろに顔を持ってきた。
「まぁ、彼らのおかげでアリバイ解けたしね」
アタシはそこで今まで以上にリュウの目つきが変わったのに気づいた。
「まさか、ビデオに映ってた時計が30分進めてあったなんてね」
「あと、アラームの針の時間が朝の9時じゃなくて、夜の9時だっていうのもっ!」
「目覚まし時計ってゆーくらいだから、朝だと思うよなぁ」
……何だ、この不自然な会話…。
どこかおかしいんじゃないのかな。
「そっかぁー、事件は8時半に起きてたのかぁ」
佐久間さんが大声を出して言った時、
リュウとキュウは目が合っていた、…きっと何か分かったんだ。
―――上映が終わった。
部屋を明るくし、イスを片付ける。
「なぁーんか、いまいち反応無かったな」
「結局空振りかぁ…」
『でもあの3人話してるとき、懐かしそうだったよね』
「んまっ、今日は新しく得た情報無しっ…と」
「そうでもないよっ!!!」
キュウが高らかに言い放った。
「……分かっちゃった」
「え?」
「え?」
『分かった、って…犯人?!』
「あのビデオを検証されるのは、やっぱり相当なプレッシャーだったみたいだ」
「リュウも分かったのか?」
「ねぇ、誰?犯人誰よ、教えてよ」
アタシは考えてた。
さっきの上映会で誰かボロが出た人がいるってコトだよね…。
3人の言った言葉を辿ると…
―――あ!!!そうか、だからあの時違和感を感じたんだ!!!
それからアタシ達は移動して、朝吹さんが録画していたビデオの検証に入った。
さっきと同じように部屋を暗くして、イスを出す。
すると、キュウが早送りを押した。
それを黙って見るアタシ達。
そうだよ、あのことは、今初めて分かるコトなのに…あの人は知っていた。
「キュウ、ストップ!!」
リュウが言う。
止まった画面には朝吹さんが撮りたかったであろう映画のタイトルが映し出されている。
ビデオの撮り始めから、映画が始まるまでの時間を計ったのである。
アタシ達はキュウのいる上映室のような場所へ向かった。
そこに表示されていたのは…「ジャスト30分」…ほらね。
「決まりだな」
「うん」
『これは、今初めて分かったこと』
「梓紗も気づいた?」
『うん』
「え、もしかしてあの人が犯人…?」
「ああ」
「そうか…あとは亀田殺しのアリバイを崩すだけか…」
キュウは深く頷いた。
アタシ達は許可が下りるまで、校舎の中庭で少し雑談をすることに。
「みんなには借りができたな」
佐久間さんがアタシ達をカメラで収めながら、後ろ向きで歩いている。
「あ、僕達はただ、アリバイトリックを解いただけですから」
キュウもメグも映りたがりみたいで、カメラのレンズを覗き込んでいる。
アタシは専ら興味はないがカメラを向けられたので、微笑を浮かべてみる。
「あなたが事件にかかわってる可能性はまだ0じゃない」
「ホントは昨日の夜、どこにいたんだよ」
「…実はさ、ホラー映画のファンサイトで知り合った奴からメールが来て、
カルトビデオ譲ってくれるっていうから、近くの公園で待ち合わせしてたんだよ」
『それでビデオはもらえたんですか?』
「でもさぁ…そいつ、待ち合わせ時間になっても、来ないの!!!」
「すっぽかされた、ってこと?」
「うんっ!!」
佐久間さんは大きく首を縦に振り、強く肯定した。
ちょっと可愛いって思ってしまった…不覚だ。
「…お前そんな言い訳通用すると思ってんのかよ」
「通用しないと思ったから黙秘してたんだろ」
佐久間さんはキンタの問いかけに間一髪と答えた。
それはそうだ。
「第一俺がいくらヤバい人間だからって、映画研究部の可愛いーぃ後輩を殺すわけがないっ」
「映画研究部の後輩?」
「うん」
あ、まただ。
佐久間さんの「うん」って、ちょっと可愛い…。
そしたらリュウに何か感づかれたのか「どうしたの?」って怪しい笑顔で言われた。
「えっ、いや、別にぃ?」
「あの2人、同じ付属中学の出身で映画研究の仲間なんだ」
「本当ですか!?」
キュウがすかさず聞く。
「うん。亀田や朝吹だけじゃなく、冨永や遠矢、それから失踪した小椋絵美菜もみぃーんな仲間」
まさか…そんなの偶然?
これはちょっと関連性があると考えてもいいんじゃないかな?
それにしても、佐久間さんが後輩想いってトコも意外だったな。
ようやくビデオの許可が下りたので早速見ることにした。
テレビにセットしてビデオを再生すると、映ったのは今とはどこか違う佐久間さんと富永くん。
よーいスタート、という佐久間さんの声と同時に撮影が始まった。
男性用スーツを着ている朝吹さん、OLのようなスーツを着ている…小椋さん?
撮影は進んでいき、カメラやレフ板が2人が歩くスピードと同じに進む。
台詞を淡々と言う朝吹さん。
すると突然「あ、」と言って撮影が止まった。
きっと台詞を間違えたんだろう…そんな違和感はなかったんだけど。
その瞬間緊張感は消え去り、みんなの顔に笑顔が生まれた。
亀田くんは遠いアングルから撮っていたカメラにアップで映りこんできた。
「亀田くんも昔はみんなと仲良かったんだ」
「小椋絵美菜、亀田純也、朝吹麻耶…事件の被害者は皆、同じ映画研究部だったなんてなぁ…」
テレビでは佐久間さんがメガホンで亀田くんをポンポン叩いていた。
それで笑うみんな。本当に仲が良かったように思う。
「でも…これで容疑者が絞れてきたよ」
「え?」
『ほ、ほんと?』
「浅い人間関係で、計画的殺人が起こるのは、金銭がらみ以外で考えられない。
殺された朝吹さんが素直に部屋に招き入れたことから考えても、中学時代から親交があった
彼らが容疑者になる可能性が高い」
『え、てことは』
「まさか、この仲良さそうな中にコレクターがいるってゆーの?」
の瞬間、キンタの携帯が鳴りだした。
キンタは着信に出る…数馬のテレビ電話だ。
「おう、数馬」
「今、渋沢学院のサーバーを調べてるんだけど…ここ半年ぐらいのログが残ってた。
…で、殺された例の亀田純也って人の書き込みを追っかけてたんだけど、
なんかこの人、ヤバいことしててさ」
「ヤバいこと?」
「渋沢学院のサイトに映画愛好者の掲示板があるんだけど…
亀田って人…、1人で20人近いハンドルネームを使って、
1人の人間を袋叩きにしてたんだ」
「まぁ、ぢかよぉ…」
『ひっどいね』
「詳しいやり取りはメールに添付して送ったから」
アタシ達はすぐにパソコンを開き、渋沢学院のサイトの映画愛好者の掲示板を見た。
パッと見、普通の掲示板に見えるだろう書き込みには、相当なコトが書いてあった。
殺る、喧嘩、死ね、…そんな言葉が平然と並んでいる掲示板には寒気がした。
それに、これが全て亀田くん1人によってつくられたものだとすると…。
「これに書き込んでる人、全員亀田くんなの?」
「中傷されてるのが…このアニメっていうハンドルネームの人物だったらしいな」
リュウが次々と画面をスクロールさせていく。
次々と中傷が酷くなってきているような気がする…
「見ろよ、これ」
リュウが呟いた。
アタシ達は従ってリュウが刺すであろうものを見る。
『…えっ』
そこにはアニメさんの書き込んだもので、【自殺します】と書かれていた。
「嘘…たかがネットの中のいじめで、自殺なんて…」
「このアニメって名前…」
リュウが何かに気がついたみたい。
「アナグラムだっ」
「アナグラムって、文字を並べ替えるやつ?」
『嘘、アニメなんて並べ替えても…あっ、ローマ字っ』
「そう、こうしてアニメをローマ字変換にして逆から読むと…」
パソコンにはローマ字で打ち込まれたANIME。
そしてリュウが逆から打ったANIMEは……EMINAになった。
「えみな…」
『嘘っ、』
「小椋絵美菜っ!!」
「じゃぁ、亀田くんが20人近くのハンドルネームを使ってイジメていたのは、
失踪した小椋絵美菜さんだったの?!」
『嘘、何それ』
「どうやら、動機も見えてきたなぁ…」
キンタが怪しげに言う。
だって、亀田くんがこのハンドルネームがアナグラムだって知っていたら、
明らかに自分より成績の良かった小椋さんをいじめるだろう。
「ねぇ、リュウ、さっきビデオに映ってた人達を集めて上映会やってみない?」
『キュウ…??』
「おもしろそうだねぇ…」
キュウもリュウもいつになくノリ気だ。
リュウの顔がニヤけているのですぐ分かる。
上映会…?何か得ることができるだろうか。
その後、実際にみんなを呼び出し上映会をした。
真っ暗な部屋にスクリーンを下して大画面で見る。
「付属中学の映画研究部かぁ…懐かしいな」
「小椋さん…」
そう呟いた遠矢さんの声がすごく淋しく聞こえた。
「心が痛むねぇ~、この笑顔見るとキュンってなる、キュンって」
佐久間さんのキュンは尋常じゃないほど可愛かった。
もう語尾にハートは付きまくってる。
アタシはちょっと口が笑ってるみたいで、リュウにすぐ気付かれた。
「なーに、笑ってんの」
『別にっ、笑ってないよ』
「嘘つくなよ」
『なっ、なんでもないよっ』
「じゃぁー、後でしつこく聞くからっ」
リュウはちょっと笑ってまたスクリーンに顔を戻した。
しつこく聞くって…そんなコト言われても…。
「佐久間さん…」
キュウが話しかける。
「小椋さんにフラれたって本当ですか」
すると、前を向いていた佐久間さんがぐりんと顔をキュウに向け、
「はっきり言うね」
と少し動揺していた。
何回か小刻みに頷いたかと思うと、ダラッと座っていたイスを座りなおした。
「彼女ねぇー、【好きな人がいるのーっ】って。
まぁ俺みたいな変態最初から無理って分かってたけどねっ」
「なんかずいぶんサバサバしてますね」
メグが冷たい視線で佐久間さんに問いかけた。
「そう見えるでしょぉ?でもお腹ン中どろどろっ」
せ、切ない。
わざわざ聞いたメグって一体…?笑
「何か、みんな仲よさそうだね」
「今じゃロクに口も利かなくなってるもんな」
「どうして、みんなこんなバラバラになっちゃったんだろ」
「仕方ないよ、ウチの学校受験校だし。友達はみんな成績を争うライバルなんだから」
――友達はみんな成績を争うライバル…
アタシはその言葉に少し引っ掛かった。
仲間が口を利かなくなった理由に成績を挙げるなんて…ちょっと気になる。
キュウとリュウも同じなのか、少しヒクついていた。
「あの頃は楽しかったなぁ…
私達が作った映画を佐久間先輩のお父さんが経営してる小さな映画館で上映してもらったり…。
映画の美術をやってた冨永くんのお父さんに小道具を色々分けてもらったり…」
遠矢さんが懐かしむように淡々としゃべっていた。
「もうよそーぜ……そんなことより、事件のコト考えよう」
冨永くんは遠矢さんの話を遮り、事件に話をすりかえた。
すると佐久間さんはイスの背もたれに首を乗せて、後ろに顔を持ってきた。
「まぁ、彼らのおかげでアリバイ解けたしね」
アタシはそこで今まで以上にリュウの目つきが変わったのに気づいた。
「まさか、ビデオに映ってた時計が30分進めてあったなんてね」
「あと、アラームの針の時間が朝の9時じゃなくて、夜の9時だっていうのもっ!」
「目覚まし時計ってゆーくらいだから、朝だと思うよなぁ」
……何だ、この不自然な会話…。
どこかおかしいんじゃないのかな。
「そっかぁー、事件は8時半に起きてたのかぁ」
佐久間さんが大声を出して言った時、
リュウとキュウは目が合っていた、…きっと何か分かったんだ。
―――上映が終わった。
部屋を明るくし、イスを片付ける。
「なぁーんか、いまいち反応無かったな」
「結局空振りかぁ…」
『でもあの3人話してるとき、懐かしそうだったよね』
「んまっ、今日は新しく得た情報無しっ…と」
「そうでもないよっ!!!」
キュウが高らかに言い放った。
「……分かっちゃった」
「え?」
「え?」
『分かった、って…犯人?!』
「あのビデオを検証されるのは、やっぱり相当なプレッシャーだったみたいだ」
「リュウも分かったのか?」
「ねぇ、誰?犯人誰よ、教えてよ」
アタシは考えてた。
さっきの上映会で誰かボロが出た人がいるってコトだよね…。
3人の言った言葉を辿ると…
―――あ!!!そうか、だからあの時違和感を感じたんだ!!!
それからアタシ達は移動して、朝吹さんが録画していたビデオの検証に入った。
さっきと同じように部屋を暗くして、イスを出す。
すると、キュウが早送りを押した。
それを黙って見るアタシ達。
そうだよ、あのことは、今初めて分かるコトなのに…あの人は知っていた。
「キュウ、ストップ!!」
リュウが言う。
止まった画面には朝吹さんが撮りたかったであろう映画のタイトルが映し出されている。
ビデオの撮り始めから、映画が始まるまでの時間を計ったのである。
アタシ達はキュウのいる上映室のような場所へ向かった。
そこに表示されていたのは…「ジャスト30分」…ほらね。
「決まりだな」
「うん」
『これは、今初めて分かったこと』
「梓紗も気づいた?」
『うん』
「え、もしかしてあの人が犯人…?」
「ああ」
「そうか…あとは亀田殺しのアリバイを崩すだけか…」
キュウは深く頷いた。
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