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ドリーム小説
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*第5話*~ネットの恋! すれ違いの悲劇~ ①

『朝吹さんっ…………!!!!』

リュウの部屋のパソコンで見た、生中継の殺人ビデオで殺されたのは…朝吹さんだった。
朝吹さんの光のない目を見たとき、
朝吹さんを殺害したコレクターと、朝吹さんを守れなかった自分に腹が立った。
腹が立ったのと同時に自分は無力だというのを改めて感じさせられ、
不安と恐怖が1度に押し寄せてきたせいで声が出なく、息遣いだけが荒くなっていった。

「梓紗!!梓紗、落ちつけ、梓紗!!」
リュウが必死でアタシをなだめようとしてたのは分かる。
顔をぎゅーっとリュウの胸に押されていた。
遠矢さんだって、呼吸混乱状態になっている。
「遠矢さん…大丈夫?」
「あ、アタシ、あ…初めてで…何考えてるか分かんなくなって…」
『…はぁ………はぁ、はぁ…はぁ』
「とりあえず、女子寮に行くぞ。梓紗、立てるか?」
『う、……うん』
リュウはアタシを抱え込んで立ちあがってくれた。
『もう、大丈夫…だから。アタシは…見慣れた、なんて言ったら最悪だけど、
 今までに死体を見てきたわけだから、遠矢さんを心配してあげて…遠矢さん、大丈夫?』
「あ、はい!!……だ、大丈夫です!」
「…2人とも無理するなよ」

リュウの部屋から出て、アタシ達は女子寮へと走る。
途中で何回か朝吹さんの笑顔が頭をよぎった。
遠矢さんもそうなのか、少しだけ辛すぎる表情を浮かべていた。

女子寮に着くと、キュウ達やキンタ、富永クンも朝吹さんの部屋の前に集まっていた。
「リュウっ!!」
『メグ!!大丈夫?!』
「叫んじゃったけど…もう整理ついた」
『良かった…』
「とにかく入ってみよう」
「待て!」
キンタがキュウを止める。
「犯人がまだ潜んでるかもしれない…」
そう言ってキンタは勢いよくドアを開けて中に入る。
キンタとキュウとリュウの背中ではっきりとは見えなかったけど…
そこにいたのは…朝吹さんの無残な姿、ただそれだけだった。
それぞれが中に入っていき、順に朝吹さんの姿を見る。
アタシは少し瞳孔が開きそうになったけど、心を落ち着かせた。

キンタは朝吹さんの死亡確認に入っていた。
出てきた答えは…「……死んでる…」。
その一言にみんなの表情は一気に凍りついた。
「警察に知らせてきます!!」
遠矢さんはすぐに部屋を出て行った。
すると、メグはゆっくりと朝吹さんに近づいて行く。
ただただ朝吹さんを見つめ、何を言うこともなく見つめ。
心配になったキュウはメグへと近づく。
「…メグ」
「なんなのよ一体…何者なのよコレクターって…何のために朝吹さんまで…?」
『メグ…』
メグの今にも泣きそうな顔を見て、【朝吹さんの笑顔は戻ってこない】と実感した。
朝吹さんは……死んじゃったんだ。

その中でもリュウの表情は険しかった。
朝吹さんを見つめている時間に比例して、眉間にしわがよっていっている。
『リュウ…?』
リュウはゆっくり歩いていき、朝吹さんの顔の近くでしゃがみこんだ。
朝吹さんの目を閉じさせると、リュウは微笑んだような顔で
「ばいばい…」と小さな声で言った。
きっと朝吹さんと何かあったのだろう。
言い終わった後のリュウの顔はまたいつもの強張った顔だった。

「実は…朝吹さんからさっき電話をもらってたんだ」
「え?」
「亀田殺しの重大なヒントを見つけた、って…梓紗も聞いてたよな?」
『…うん』
みんなの顔が一変したのが分かる。
殺されたのは…きっとそのせいだ。
「今日の放課後、みんなでここに集まってたんだよね?」
「うん」
リュウがメグに確認をとる。
「なんでもいい、その時と比べて何か無くなった物とかないかな?」
メグが辺りを見回す。
アタシが見る限り、大きなものがなくなったりはしていないように思う。
でもメグが探せば、「そこの本棚!!本の並びが変わってる」…ほらね。
「すげぇ…何で覚えてんの?」
「私記憶力だけは異常にいいの」
冨永くんのありふれた質問に答え慣れたように冷静に言う。
キュウとリュウがその棚へと行き、参考書を全て取り出した。
中にあったのは…何本かのホラービデオだ。
「ホラービデオだ」
「変だな、6の番号のビデオだけない…」
キュウとリュウの推理が始まる。
時計を見れば、9時から10分を回っていた。
時計の隅にしゃがみこむキュウ。
「この時計…」
『何?』
「目覚ましの針が9時になってる。学校の授業は8時半から。
 9時じゃぁ、完全に遅刻だよ」

そうしてるうちに、遠矢さんが通報してくれた警察の人が来てくれた。
「全く狂ってやがるな、コレクターって野郎は!!」
「でもそれって本当に生中継だったのかなぁ?録画した映像を後で流したとも考えられるだろ?」
諸星警部と猫田さんだ。
「いえ、それはないと思います」
冨永くんが突然口を開いた。
「画面にこの部屋の目覚まし時計は大写しになりましたから」
「事件前後、不審な人物を見かけたという目撃情報はない、とするとー…犯人は!!」
「校内の人間である可能性が高いですね!!」
「よぉし、被害者に恨みを持つ人間がいないか、調べるぞ!!」
「はい!!」
そうして諸星警部と猫田さんは部屋を出た。
猫田さんに至っては、メグをチラ見しニヤけた顔で出て行った。
こっちは、そんな気分じゃないってのに…。

諸星警部、猫田さんが部屋を出て行ったあと
朝吹さんの部屋のビデオデッキが動き始めた。
みんな反射的にデッキ周りに集まる。
やっぱり探偵ってのはそーなっちゃうもんなんだねぇ。
「朝吹さん、何か録画してたのかな?」
アタシは気づいた。
『ねぇ、このデッキの時計のトコ見て?』
「だよね、時間表示が壊れてる」
キュウがアタシに付け加えた。
「ほら、数字が全部0のまま動かない」
キュウがそう言った後にデッキの動きは止まった。
「あ、止まった」
「彼女、何を録画してたんだろう…」
メグが徐に問うと、キュウの手が自然にリモコンへと伸びる。
そしてテレビの電源をつけて、ビデオを再生する。

そこに映ったのは、賑やかなバラエティー番組。
きっとお笑い番組なのだろう。
後半戦に突入と言っているところから見て、本来の放送時間の半分は過ぎているのではと推測される。
「バラエティー番組だ」
「しかも、途中から?」
「え?これ…今日の8時からやってたやつだ…」
キンタがぼそりと呟いた。
『なんで途中から?撮り忘れとか?』
キュウは腕時計と見てからテーブルの上のテレビ雑誌を手に取った。
今日のページを開くと、9時からの映画に赤丸がつけられていた。
と、なると、朝吹さんは9時からの映画を撮るのが目的だった?
するとキュウが何か気付いたみたい。
「そうか…そーいうコトだったのか」
『え?』


『…………え?!?!』
「佐久間さんが犯人?!」
突然の知らせにアタシ達は驚いた。
さすがに佐久間さんは人間の死や殺人とかに興味がありそうな人だけど。
実際に殺人を犯したりするような行き過ぎた人ではないと思うし…。
それに、信じたくない。
「ま、まさか、何を根拠に?」
「警察からの連絡だと、9時ころに佐久間さんが寮にいないことが確認されたとか…」
『嘘、それだけの理由で…?』
「それに佐久間は死や殺人に興味があるらしいし、
 被害者の朝吹麻耶に『コレクターの犯人は佐久間しかいない』と陰口を叩かれていたそうで、
 殺す動機もはっきりしているという…」
『本人はっ?なんて言ってるんですか?!』
「そりゃあもちろんやってないって言ってるよ。
 今もう、連行されそうな勢いだったから、早く行った方がいいよ」
『でも…佐久間さんが犯人じゃないっていう根拠がアタシ達にもない…』
「それなら…あるよ」
キュウがゆっくり口を開く。
さっきから朝吹さんの殺された殺人ビデオをずっと見ていたのには訳があったのだろう…。
キュウはきっと何かに気づいたんだ。

アタシ達は根拠を得たからにはと、全力で佐久間さんの元へと向かう。
このままだと本当に佐久間さんが署に連れて行かれちゃう…!!
「待って下さい!!!」
佐久間さんの元まで走るとキュウが焦って言う。
「佐久間さんは心理的に見て、犯人ではないと思います…!!!」
「心理…?」
「まずは、これを見てください!!」
キュウは手に持っているDVDを警察の前に出した。

アタシ達は上映のできる部屋を探して、DVDを再生した。
「ここをよく見てください」
それは朝吹さんの部屋にコレクターが入ったときの映像だ。
「被害者の朝吹さんが、犯人を招き入れるような動きをしているのが判りますか?」
「…確かに…そう見えるな…」
「朝吹さんがコレクターだと疑っていた佐久間さんをこんな風に
 簡単に自分の部屋に招き入れるでしょうか?…そんなコト、するはずがない。
 つまり、朝吹さんが犯人に対して取ったこの無防備な行動こそが…
 佐久間さんが犯人じゃないっていう、証明なんです」
な、……なるほど。
「…しかし、この男にはアリバイが…」
諸星警部は声を濁らせて反抗する。
「だから…そのアリバイ自体がトリックだったのよ」
『おおっ、そーか』
「梓紗、大丈夫?」
リュウが心配そうにアタシを覗き込んだ。
『大丈夫ですっ』
すると、佐久間さんは喜んで猫田さんの膝にあったビデオカメラを奪い取る。
「…ったくよぉ……」
「この続きを見てください」
キュウは一時停止していたビデオに再生をかける。
音と同時に朝吹さんが倒れる、そして時計が映る……見慣れたものだ。
「コレクターは被害者の部屋の中の目覚まし時計を、わざわざカメラを向けて映しこんでいます。
 …この映像はリアルタイムでネット掲示板で流れていたから、
 その時間にアリバイの無い者が犯人だと普通は考えます。
 でも、もし、この目覚まし時計の時刻そのものが犯人による細工だとしたら…どうしますか?」
「…えっ」
猫田さんは驚き過ぎて声が出ている。
「どぉーしますかぁ?!」
佐久間さんも猫田さんに嫌味っぽく問いただす。
「被害者にとって犯人は、招き入れるような親しい関係なんです。
 時計の針を進めることぐらい、いつでもできます。
 現に僕が午後8時過ぎに朝吹さんから電話を受けた時、彼女の部屋に何者かが訪ねて来たんです」
「それっ…本当か?!」
諸星警部がビックリするのに対し、佐久間さんはいつものようにカメラで警部を撮影していた。
「もしそれが犯人だとしたら…時計の針を進めるチャンスは、必ずあったはずです」
「しかしー…犯人が時計の針を進めたという証拠はないだろう…!!」
「証拠ならキュウが見つけたよ」
キンタが後ろから呟いた。
あ…もしかして、さっきの目覚まし時計の針?!

次の日、アタシ達はそれを説明するために、朝吹さんの部屋に1度戻った。
そしてさっき見つけた途中から録画されているビデオを見せた。
「この番組は昨日の夜8時に放送された、バラエティー番組です」
「被害者は殺される直前、この番組を録画してたのか…」
「そうです」
「でもこの番組、途中からしか録画されてないじゃないか」
「そりゃー当然だ。彼女が本当に録りたかったのは、この番組じゃなく…
 このあと9時から始まるホラー映画だったんだ」
キンタはテーブルへと近づき、証拠のテレビ雑誌を見せた。
やはりそこには9時からのホラー映画の欄に赤丸が記されてる。
「…これは」

「実はこのデッキ、タイマーが壊れてるんです。
 朝吹さんは…どうしても録画しておきたい番組があるときは、目覚ましをセットして、
 番組開始時間と合わせて録画していたに違いありません。
 つまり、そのアラームが指し示す【9時】直前という時間は朝の9時ではなく、夜の9時だったんです。
 朝吹さんは、犯人に殺される直前にセッティングしておいた、目覚ましのベル通りにしたがって、
 録画ボタンを押した…にも関わらず、録画されていたのは映画の前に放送されたバラエティー番組。
 しかも途中からです。つまり、犯人は…あらかじめ目覚まし時計の時間を進めておくことで、
 リアルタイム映像と見せかけて殺人シーンを録画し、アリバイをでっちあげた証拠です」

キュウの長い推理が終了した。
さすがにここまで細かく推理を説明されると警察もなす術がないだろう。
猫田さんはうろたえながら口を開いた。
「え、え?じゃあやっぱりあの映像は生中継じゃなかったんだ」
すると、猫田さんはすごくまずいという顔をしている。
ああ、佐久間さんのことか。
「…となるとぉー…夜の9時のアリバイは、意味をなさなくなるな」
「そういうことです」
諸星警部と猫田さんは気まずい顔で佐久間さんを見る。
佐久間さんは相当キレてるようで、2人に対し中指を立てていた。
「よしっ、もう一度アリバイを洗い直すぞ!!」
「はいぃ」
猫田さんの声が少し震えて聞こえてきたのは、気のせいだろうか?
部屋を立ち去ろうとした時、リュウが口を開いた。
「刑事さん」
「なんだ?」
「押収した朝吹さんのビデオテープ、僕達にも見せてもらえませんか?」
「どうしてそんなこと?」
佐久間さんはまだ怒っているのか、猫田さんの肩にあごをのせ、睨みつけている。
「数時の打たれたビデオの中で6番のビデオだけ抜けおちていたんです。
 そのビデオを犯人が持ち去った可能性があります」
「本当か?」
「その前後の映像を見ることで、何か手掛かりがつかめるかもしれません…。
 ……お願いします」
リュウが頭を下げた。
アタシは少し驚いたけど、すぐに頭を下げた。
『お、お願いします…』
「私からも…お願いします!!」
「お願いします!」
「…捜査本部に連絡して、見られるように手配しておく。しかし、今日1日だけだぞ」

「「「『ありがとうございます』」」」

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